MISOVATIONと明治が共同開発、子ども向け完全栄養食「えいようぐるり」
■少子化進む幼児食市場に伸長する完全栄養食市場を掛け合わせる
フードテック技術を活かした高機能味噌汁の企画・開発・販売などを手掛けるスタートアップ企業、MISOVATION(東京都中央区)はこのほど、大手メーカーである明治との共同開発により、業界初となる「子ども向けの主食の完全栄養食」をコンセプトとした冷凍食品「えいようぐるり」を発売した(クラウドファンディング「Makuake」での先行予約販売)。4月20日、東京・新大久保にある食の共創スペース「K,D,C,,,」が、同社主催のフードチャレンジ優勝経験者の最新の取り組みを紹介する場として試食&トークショーを開催し、MISOVATIONの斉藤悠斗代表取締役と明治の松浦枝里子イノベーション事業戦略部事業開発グループ長が「えいようぐるり」の開発ストーリーなどについて話した。

MISOVATIONは、国内の味噌蔵と連携し、味噌×イノベーションを合わせた商品開発を行い、D2Cでサブスクリプション会員に届ける事業などを手掛け、「完全栄養食MISOVATION」などのプロダクトを展開している。斉藤氏は東京農業大学で分子栄養学を研究後、大手食品メーカーのカゴメ、リクルートキャリアを経て2021年に同社を創業した。
一方、明治はスタートアップとの協業・支援などにより、その企業の価値向上と自社のイノベーションの創出を目指したアクセラレータープログラムを展開しており、松浦氏はイノベーション事業戦略部でオープンイノベーション(社内外の技術やアイデアを融合させ、革新的な製品・サービスや新規事業を創出するアプローチ)を担当している。
「えいようぐるり」は、3~5歳の幼児期に必要な30種類以上の栄養素を素材由来で設計したロール状(巻き寿司状)の冷凍食品。開発ポイントとして▽食事を作る時間や正しい知識がなくても親が安心して提供できる子ども向けに設計された栄養食▽子どもに必要な栄養バランスを備え、不足が気になるカルシウム・鉄分・たんぱく質・食物繊維などをカバーする――が挙げられるという。合成栄養強化剤に頼らず、素材そのものの力で栄養を届けることにこだわり、フレンチの名店「OGINO」元オーナーシェフ・荻野伸也氏の監修のもと、子どもに食べさせたいだけでなく、大人が食べてもおいしいと感じられる味を徹底的に追求。レンジで忙しい中でも簡単に調理できる。ラインアップは「オムライス」と「さばみそマヨ」の2種を発売した。子どもが大好きな洋食と、子どもに魚を食べさせたい母親が多いことから魚メニューを設定したという。

斉藤氏は「完全栄養食市場はスタートアップのみならず大手メーカーも参入して急成長している一方、幼児食市場は子ども1人当たりにかける食費が上がっているため微増だが、出生数が急速に減少する中で衰退も見込まれる市場かなと思う。その市場に成長市場の完全栄養食を掛け合わせることでイノベーションができるのではないかというのが今回の開発の起点になった」と話す。
開発にあたっては全国の3歳以上の子どもを持つ母親1,559人を対象に、日々の食卓や食事についてアンケートを実施。多くの母親が子どもの好き嫌いや食べムラに悩み、また約半数が子どもの1日の食事で「栄養バランスがしっかりとれている」と自信を持っておらず、不安や妥協を抱えていることが分かったという。
一方、大人・シニア向けには手軽に必要な栄養を満たせるさまざまな選択肢があるが、子ども向けに最適化された「主食」となる栄養食は少ないのが現状であり、お菓子やサプリメントではなく、自然な食事の形で安心して出せる食事として子どもも好きな「おにぎり(ごはん巻き)」を選択したという。
栄養面では、大人以上に栄養密度が必要な4つの栄養素▽たんぱく質▽食物繊維▽カルシウム▽鉄分――について1日の3分の1量を満たせるようにしたほか、30種類以上の栄養素を摂れるように設計した。
そして大きな特徴の1つが、素材由来の栄養設計をしていることで、たとえばカルシウムであれば3~5歳の子どもが1日の必要量を摂取するためには200mlの牛乳3杯が必要だが、同品では魚、海藻、ゴマといった素材を使うことで素材由来の栄養価を高め、添加物等は使っていないという。これは、明治が持つ幅広い世代への栄養設計・栄養評価の知見に、MISOVATIONが持つナチュラルな完全栄養食の開発技術を掛け合わせて実現したものだという。斉藤氏は「当社は味噌汁の会社と思われているが、それはアウトプットの1つであり、味噌汁でなぜ完全栄養食を実現しているかというと、味噌の製造技術を応用した醗酵による食品の高栄養化と、豆・野菜・海藻・酵母・米糠など高栄養な自然原料の配合という、ナチュラル栄養化技術を持っているからだ」と話す。
製造は「キンパ」を作っている工場に委託し、職人が具材をたっぷり巻き込み、一つひとつ手作業で丁寧に仕上げている。斉藤氏は「一番伝えたいのは、お母さんが手作りしているような安心感を加工食品で実現するプロセスを組んでいる点だ」と話す。

■大企業とスタートアップがコラボ、先行販売は好調に終了
そして同品は大企業×スタートアップの協業により開発されたという大きな特徴を持つ。
明治でオープンイノベーションを担当する松浦氏は「私たちの事業計画の中で最適化食・パーソナライズが1つのテーマとして挙げられていた中で、MISOVATION様と出会った。最初から子ども向けの完全栄養食を作ろうとしていたわけではなく、テーマに沿って新しい何かを生み出せそうな企業と出会うことがスタートだった。足りないパーツを埋めていくような形ではなく、広いテーマの中で何かできそうなことはないかと話すことから始めた」と話す。
一方、MISOVATIONの斉藤氏は「我々は素材由来の栄養素を大事にしている会社で、完全栄養食では5位だが、その5社の中で唯一の特徴だ。我々しかできないバリューの出し方がある中で、明治様のテーマと我々が持つナチュラルな栄養技術のコラボで面白い化学反応が出せると純粋に思った」という。
そして開発には合計1年半がかかったが、その半分以上は、MISOVATIONの技術と明治のやりたいことを掛け合わせて、誰に何を提供するかという議論に費やし、作るものが決まってからは半年強ほどで先行販売に至ったという。
なお、「えいようぐるり」はMakuakeでの先行販売が4月29日で終了。目標金額の8倍以上となる171万4,920円のサポートを集めた。
〈冷食日報2026年5月8日付〉







