ニッスイ業務用冷凍食品、「E調理」がけん引し堅調に推移/慢性的な人手不足に対応したアイテムが需要をつかむ

「至福のひとさら 白身魚のカツ」
「至福のひとさら 白身魚のカツ」

ニッスイの業務用冷凍食品事業は、人手不足に対応したアイテムが外食・中食業態の需要をつかみ、簡便調理が可能な「E調理」シリーズを筆頭に堅調に推移している。引き続き、事業者が求める高付加価値型商品の拡充に注力することで、さらなる需要獲得へとつなげていく。業務用食品部の金澤建支部長に前期業績動向と、今期の重点施策などを聞いた。

――前期を振り返って

2025年度業務用調理冷食の売上高は、前期比2.5%増の570億円で着地した。増加の最大要因は、原材料費や物流費の上昇などコストアップを踏まえ実施した価格改定で、値上げ効果が増収に結び付いた。数量ベースでは1.0%増で着地。簡便調理の「E調理」シリーズや日持ちに配慮した商品設計の「Long Deli(ロングデリ)」シリーズなど、人手不足への対応と、機能を持たせた商材の拡大に取り組んだことが奏功し、前年以上を確保した。一方、農産冷食の売上高(約半数が業務用)は、0.5%減の118億円、数量では1.0%減だった。業務用冷凍食品トータルでは、金額は前年を上回ったが、数量は前年並みとなった。

ルート別(外食・中食・給食)の販売概況を振り返ると、外食は、コロナ禍からの回復以降、伸長傾向が継続しており、高止まりで推移した。また中食も、簡便・即食ニーズを背景に安定成長を継続。一方、給食については、コスト上昇が続く中、人手不足が外食、中食以上に深刻化している。

――主要商品の動向について

前期に引き合いが高まったのはコロッケ、中華、鶏肉加工品、米飯類のオムライスなど。中華では、シューマイが金額で2ケタ増となった。用途に合わせて使い分けできる大中小揃う豊富なラインナップが、弁当や給食、デリカの事業者の支持を集めた。また鶏肉加工品では、焼き鳥が金額・数量ともに2ケタ伸長を遂げた。精肉価格の高騰影響に加え、専門店品質を掲げ、肉のおいしさ、立体感のある形状、味付けの工夫などに注力してきたことが好調につながった。

「E調理」シリーズは、24年度比4倍と大幅に伸長した。同シリーズは、Economy(節約)・Easy(簡便)・Efficiency(効率的)の3つの「E」を実現する商品として開発。電子レンジやオーブン、湯せん、自然解凍と多様な調理方法に対応可能なため、外食や中食、給食や高齢者施設などの業態の慢性的な人手不足に対応できるシリーズとして、24年の発売以来、好調に推移している。25品で展開している。

素材と製法にこだわったアイテムが揃う水産加工品も、価格訴求品とは一線を画す、品位を高めたラインナップが支持され、好調に推移した。

農産品のうち主力の枝豆は、苦戦が続いた。3年ほど前に天候不順で主要産地のタイ、台湾で収量が大きく下がり、売り場喪失を余儀なくされたが、そこから回復に至っていない状況だ。

業務用食品部の金澤建支部長
業務用食品部の金澤建支部長

――足元の業務用市場全体の動向は

マーケットが一番大きい外食は、引き続き堅調に推移している。但し、人件費や原材料費の上昇傾向は継続しており、当社のユーザーは相当厳しい環境下で、事業に取り組まれている。給食も限られた人員数で運営することが前提となっており、省人化につながる商品へのニーズは、より一層高まるだろう。中食は、節約志向が続く中、付加価値品への需要も高まっており、両方のニーズに対応することが必要だ。

春先からの状況をみると、量販店食品惣菜売り場では、中東情勢の悪化を背景としたナフサショックによる包材不足から、揚げ物や焼き鳥などのばら売りを強化している。また価格高騰が続いた米価が下降しており、今後、米飯を中心とするメニュー強化が進むだろう。

――今期の重点施策と動向について

▽人手不足への対応▽付加価値品の提案▽水産素材の価値向上――この3点を大きなテーマに取り組んでいく。外食は高付加価値品や素材の良さを生かしたメニュー構成への貢献を目指す。給食は、引き続き省人化への対応を強化する。

人手不足への対応では、「E調理」の売れ筋上位に「自然解凍」できる商品がランクインするなど、調理現場では、人員削減を要因に自然解凍への要望が高まっている。こうした背景を受け、昨年12月に惣菜売り場・外食向けに投入した「ひとくちチキン」が好調に推移中だ。皮付きの鶏もも肉を食べやすいサイズにカットしたフライ製品で、食感を活かすため、漬け込みと味付けは最小限に抑え、立体感のある形状に仕上げた。スチームで中心温度まで加熱しており、自然解凍するだけで調理が可能。今春も自然解凍品の「オクラのおひたし」を追加しており、ニーズに応じた商品拡充を進めていく方針だ。

同じく今春の新商品では、水産素材の価値向上を目的に、「もう一つ上の満足を」を商品テーマとして外食向けに発売した「至福のひとさら 白身魚のカツ」が堅調に推移。旨味の強いホキを使用した、手作りに負けない本格的な味わいが支持されている。量販店の惣菜売り場に加え、水産売り場にも提案する新シリーズの「SEA AURA(シーオーラ)」は、配荷が徐々に広がりつつある。拡大する業務用カニ風味かまぼこ市場を見据えた新たな商品群だ。そのほか、精肉原料の高騰が追い風となり、「ジャン棒チキンカツ」が堅調に推移するなど、今春の新商品は評価が高く、好調な商品が多い。

水産売り場にも提案する新シリーズの「SEA AURA(シーオーラ)」
水産売り場にも提案する新シリーズの「SEA AURA(シーオーラ)」

昨年3月に続き、この4月も、コスト上昇を吸収するため価格改定を実施した。幸いにして取引先からは理解を得られており、商品の機能向上など、付加価値を高める取り組みを進めることで、価格上昇分をカバーしていく。

――今後の方向性について

省人化や高付加化価値化が商品開発の軸になると見ている。全ての業態で人手不足が大きなテーマとなっており、調理現場におけるオペレーションの簡素化、負荷軽減につながる商品の開発をより一層強化していく。中食に目を向けると、量販店の惣菜売り場は、店内加工からプロセスセンター(PC)での加工へとアウトパック化が進む見込みだ。アウトパックの商材として活用してもらうためには、ある程度の保存性と、大容量ロットでの納品などPCでの利用に適した荷姿にする必要があり、そうしたアウトパック化に対応した商品開発も進めていきたい。

好調に推移する「E調理」については、さらなる利便性の向上に取り組み、ユーザーのニーズを捉えた仕様へと変更を図るなど、積極的なリニューアルを随時行っていく方針だ。手作り感のある味わいの実現や、品位の向上にも合わせて取り組む。

高品質な商品を求めるインバウンドなどを対象に、外食向けには、前述の「至福のひとさら」など得意とする水産原料を用いた本物志向のフライ製品を強化していく。

生産面では、円安傾向を受け、春巻き、焼売、クリームコロッケなどの商品群で、国内製造を強化する方針だ。12月には、最新技術を導入した「スマートファクトリー」を掲げる北九州工場が竣工する。主力は家庭用だが、業務用の「おさかなソー」などの商品の製造も予定している。

懸念事項には、ナフサ問題が挙がる。9月にも一部商品で価格改定を予定しており、販売数量の落ち込みを防ぐために、付加価値を付ける取り組みを強化していく。コモディティ商品だけでは収益の確保は難しい。市場環境は大きく変化しているが、ユーザーの課題に寄り添いながら、ニッスイならではの価値を提供していきたい。

〈冷食日報2026年7月2日付〉

媒体情報

冷食日報

冷凍食品に関するあらゆる情報を網羅した日刊の専門紙

冷食日報

近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
主な読者:
冷凍食品メーカー、量販店、卸、外食・中食、輸入商社、物流会社、業界団体など
発送:
東京、大阪の主要部は直配(当日朝配達)、その他地域は第3種郵便による配送 *希望によりFAX配信も行います(実費加算)
購読料:
3ヵ月=本体価格21,384円(税込)6ヵ月=本体価格42,293円(税込)1年=本体価格83,160円(税込)