〈新春インタビュー2018〉ハウス食品グループ本社代表取締役社長・浦上博史氏 「食で健康」クオリティ企業への変革

2015年4月からの第5次中期計画が3年目となり最終年度を迎えている。“「食で健康」クオリティ企業への変革”をテーマに掲げ、川上から川下まで、バリューチェーンの補完を推し進めてきた。国内主力の香辛・調味加工食品事業と健康食品事業では、ブランド力の強化と収益性の向上、成長事業の海外では、中国中心に事業規模を拡大している。新年を迎え、ハウス食品グループ本社の浦上博史社長に話を聞いた。

〈国内=ブランド力強化と収益性向上 海外=中国中心に事業規模を拡大〉
――昨年を振り返って

昨年は政治的には大変な年だったが、経営環境としては比較的安定していた。為替は110円から115円と想定していたよりも円高基調で推移し、原材料価格も安定していた。ドメスティックな食品メーカーとしては恵まれた1年だったと言えるだろう。

当社の5つの事業(香辛・調味加工食品、健康食品、外食、海外、その他食品関連事業)は、セグメント別に明暗が分かれたが、全体では大禍ない成績となった。期初目標の営業利益135億円を上半期の終わりには150億円へ引き上げることができた。これは2015年4月からの第5次中期計画でも目標としていた数字であり、残りの期間も目標達成に向けて取り組んでいく。

昨年の状況をセグメント別にみると、国内のコア事業で収益の柱になっている香辛・調味加工食品事業が好調に推移した。マーケティングコストのコントロールが効き、製品面ではレトルトカレーの4個パック品「プロクオリティ」に面の広がりが出て、好調に推移した。

第5次中計に入る直前にカレー製品を10%ほど値上げした。比較的早い段階で新たな価格が浸透したルウ製品に比べるとレトルト製品は苦戦した。

ルウの主力「バーモントカレー」は中価格帯だが、レトルトの主力「咖喱屋カレー」は低価格帯で、当社が考えていた以上にお客様の低価格志向が強く、従来の売上規模を維持することができなかった。こうした背景から16年に「プロ クオリティ」を投入したが、「咖喱屋カレー」とカニバリせずによく売れている。おそらく食べるシーンが違うからだろう。「咖喱屋カレー」は昼食時、「プロクオリティ」は夕食時に利用されることが多いようだ。「プロ クオリティ」は具材を煮溶かしたカレーソースなので、カツやコロッケなどスーパーで買える惣菜にあわせて食べる人もいる。4袋入りで、家族需要にも対応している。

――課題となるのは

国内では「ウコンの力」を中心とした健康食品事業だ。ハウス食品は、ウコン飲料のマーケットを1から創り上げてきた。近年は酒を飲む人が全体的にライト層へ移行し、「ウコンの力」を飲む必要性を感じない程度にしか酒を飲まなくなっている。そのなかでコアユーザーは酒をよく飲む人にフォーカスされるが、この層は食品メーカーの製品よりも医薬系の競合品へ流れる傾向が強い。

ライバルの得意な土壌ではなく、我々のような食品メーカーは“食品の土壌”で戦わなくてはならないと考えている。

〈“受け”から“攻め”のR&Dへ〉
――イノベーションについて

国内の香辛・調味加工食品事業よりも海外事業のほうが証券アナリストや株主の方からは注目されている。だが海外事業のほか、明日につながる事業や新製品の開発にも取り組んでいかねばならない。これを“「食で健康」クオリティ企業への変革”というテーマで表現している。

当社はこれまで、マーケティング企業としてお客様のニーズに合う製品を開発して接点を広げ、企業として成長してきた。しかし、経済成長時にはフィットする戦略だが成熟市場では難しい。マーケティングの1本足打法からマーケティングとイノベーションの両軸で攻めなければ生き残っていくことはできない。オポチュニティ企業からクオリティ企業への変革だ。大切なことは自分たちで価値を作り、そのために必要なR&Dを強化していくこと。アイデアを受けて製品化する“受け”から“攻め”のR&Dへ変えていく。

これに加えて、バリューチェーンの補完を進めていく。カレーの技術しかなかった当社が、カテゴリーの異なるラーメンやスナック菓子を開発するために多大な開発資源を投下してきた。その一方でバリューチェーンの取り組みが手薄になっていた。

イノベーションを考えるとき、当社には縦軸の厚みが必要だと言う課題意識を持っていた。メーカーのハウス食品から見て川下にあたる壱番屋は、顧客が中食から外食へ流れるなかで押さえておかなければならないと思った。

一方、ギャバン社はスパイスを扱う点では共通しているが、ハウス食品はBtoC中心、ギャバン社はBtoB専業ですみ分けができている。この2つの案件は、バリューチェーンを強めていくうえで大きな意味を持つ。

〈グループ企業とシナジー出す〉
――第6次中計について

第6次中計では、グループに迎え入れた壱番屋、ギャバン社、マロニー社とのシナジーを出していきたい。現状の足し算の状態からどのように掛け算にしていくかが大きなテーマとなる。レストランの壱番屋は出資比率を51%にとどめて経営の独立性を保っている一方、スパイスの調達面で期待ができるギャバン社は100%子会社にした。つまりこの2社であってもシナジーの出し方は違ってくる。

少子高齢化や世帯構造の変化、生産年齢人口の減少といった環境予見の変化にも対応していかなければならない。働き方改革と言われているが、日本に本籍を置く企業としては、これをしなければ生き残っていけないと考える。

――サステナビリティにもつながります

地球規模で見ればCO2問題を含め一企業として取り組まなくてはならない社会的な問題がある。当社は創業100周年を迎えた13年に持株会社制へ移行し、新たなグループ理念として「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします」を掲げた。この理念の背景には3つの責任があり、まずはお客様に対して、次に社員とその家族に対して、そして社会に対して責任を果たせる善良な企業市民となるため、中計を具体的な取り組みとしていきたい。

――新規事業について

何か新たな事業を模索する際、事業会社のハウス食品やハウスウェルネスフーズが取り組もうとしても既存ビジネスの型にはまりがちで、その枠から外れたものをやろうという発想にならない。したがって16年4月にグループ本社内に研究や開発など、さまざまな部署からメンバーを集め、新規事業開発部を設立した。

新規事業開発部では、シニア向け外食事業のためのレストラン運営や、涙の出ないタマネギ「スマイルボール」事業に取り組んでいる。「スマイルボール」は15年から商業栽培を始めて試験販売し、16年の供給量は約10t、17年は約100t、19年には供給量約1000tを計画している。

――売上高3000億円が見えてきました

売り上げは、あくまでも結果としてとらえている。クオリティ企業として成長していくには、利益率が重要だ。したがって営業利益率は、香辛・調味加工食品で10%、健康食品15%、海外15%、外食10%、その他5%を目指し、ROEは早期に5%以上をクリアしていきたい。

〈食品産業新聞 2018年1月1日付より〉