凍結機「アートロックフリーザー」拡大、導入社数は500社を突破海外展開に意欲/デイブレイク

デイブレイクの瞬間凍結機「アートロックフリーザー」
デイブレイクの瞬間凍結機「アートロックフリーザー」

特殊冷凍の市場はコロナ禍以降も拡大を続けている。社会的な需要の高まりもあり、デイブレイクの瞬間凍結機「アートロックフリーザー」の導入は順調に広がっているという。今後は国内市場に加えて、海外での展開も進めるという。市況や今後の施策などを取締役COOの下村諒氏に聞いた。

デイブレイク 下村COO
デイブレイク 下村COO

〈瞬間凍結の市場は拡大デイブレイク売上も大幅増〉

――冷凍技術の活用が広がる中、様々な商品も登場し市場は多様化している。どう感じているか。

食品を急速に冷やす、というのは100年前からあって、アルコール凍結は1980年代から存在しています。日本のこれまでの冷凍は品質が高くないと言われていて、冷凍イコール美味しくないでした。ただ、徐々に技術力は高まり、世界的にも珍しい技術にまで成長しています。実際、海外の方に話を聞くと、料理や生魚を食べられるほどの冷凍はないと言っていました。私の憶測ですが、他国では生魚を食べる文化がほとんどなく、冷凍でそれができるようそれぞれが技術を高めたからだと私は感じています。

急速に広がったのはコロナ禍に入ってからで、これまでは市場は微々たるものでしたが、22年度時点では約150億円になったというデータもあります。当社の売上も19年比で10倍になっています。21年に発売した瞬間凍結機特殊冷凍機「アートロックフリーザー」の導入社数は約2年で500社を超えました。

これまでの冷風による凍結は、食材の品質を劣化させる、というイメージでしたが、今ではそんなこともありません。冷風凍結とアルコール凍結には、それぞれにメリットとデメリットがあります。アルコールは、厚みのある食材などに適していますが、コストが高いなどのデメリットも抱えています。冷風もこれまでは食材を凍らせるまでに時間がかかり、水分を飛ばしてしまうため、アルコール凍結よりも劣る技術だと言われていました。最近は技術の進歩でそういうことは減り、凍結スピードもアルコール凍結とそん色なく、コストなどの観点からも活用が広がっています。

また、素早く凍らせることが必ずしも良い訳ではないことが最近の研究で分かってきています。しもやけや色の劣化などを起こしてしまうこともあるため、凍結温度の低さや速さだけで機械を選ぶのはお勧めできないです。

――「アートロックフリーザー」の特長と、伸長した理由は。

特別な原理による冷気で食材にダメージを与えずに、冷却効率を高めた機構を搭載しているほか、庫内温度や環境、冷凍時間などの冷凍工程を全自動でサポートする機能、故障に繋がる運転や品質を低下させる使い方を未然に防ぐ機能などを搭載し、支持を得られています。これまでは飲食店で多く活用されていましたが、近年では小売店でも導入され、今年からはダイエーさんとの取り組みを始めました。約130品目の惣菜や精肉などの食材を冷凍し、店頭価格とほぼ同じ値段で販売しています。売上も好調と聞いています。

他の小売さんからもお話は頂いており、これまでにない流通の形を支持していただけたのではないでしょうか。

〈冷凍に関する課題解決が支持海外展開も〉

――注力している提案は。

強みの一つである、トータルソリューションを軸に提案を進めています。冷凍は、ただ早く凍らせれば良い訳ではありません。食材によって相性の良い凍結方法は異なります。それを間違えると見た目も悪くなり、味の劣化につながってしまうこともあります。実際、他の凍結機を導入した企業の方から相談を受けることがあり、調べてみると食品と冷凍方法のミスマッチがあり、味を再現できていないということもありました。

当社ではそれぞれの抱える悩みを解決すべく、これまで蓄積してきた冷凍に関する知見やレシピを活かして、最適な凍結機や冷凍方法などを提案しています。それにより販売を大きく伸ばせたと感じています。

――どのような話があるのか。

冷凍で良い商品を出すために、専用のレシピを作り出して商品を開発される方もいます。普通の凍らせ方だと水分が抜けてぱさぱさになっていたところ、低温調理に切り替えるなどして、レンジで温めたときにジューシーになるよう、工夫をされていました。その際、我々もいろんな知見を提供し、商品開発の一助になるような取り組みも行っています。

また、冷凍するだけでなく、食品の流通や保存、解凍のいずれも、良い商品のためには重要です。これまでにやってきたことが役立ち始め、すべてを網羅したバリューチェーン。さまざまな業種で人手不足は深厚な状況です。今までのやり方がいつまでできるかもわからない。そうなると、冷凍を活用した取り組みは今後もいろいろなところで広がるのではと思います。

近々では、「物流2024年問題」も、冷凍の需要を押し上げています。ある生産者の方から、輸送距離の制限や、配送頻度の減少などで、今後は都市部に商品を卸せなくなるという話があります。そこで、冷凍品で保存期間を増やしてロスを減らそうという取り組みも見られます。また、食品工場でも、リプレイスの需要なども高まっています。

――今後の取り組みは。

グローバルで展開したい。国内で終わるつもりはなく、日本の良い料理や食材をもっと知ってもらいたいと思っています。農林水産省でも日本の食文化の輸出を進めているので、冷凍技術を活用した展開がしたいですね。

また、この瞬間凍結技術は世界的にも珍しいらしいので、各国にある固有の食材などを流通させることができればと考えています。消費期限が1日しかない食材でも、冷凍技術を使えば引き延ばすことができる。食の選択肢を広げることにつなげられればと思う。あとは、食材の流通事業をより進化させる。「アートロック」ブランドの認知を高めて、食材と機械の両面でアプローチできればと思います。

〈冷食日報2023年11月9日付〉

媒体情報

冷食日報

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近年の冷凍食品をめぐる情勢は、共働き世帯の増加や家族構成の変化、また飲食店や量販店の惣菜売場の多様化によって需要が増加しています。一方で、家庭用冷凍食品の大幅値引セールの常態化はもとより、原料の安定的調達や商品の安全管理、環境問題への対応など課題は少なくありません。冷食日報ではこうした業界をめぐるメーカー、卸、そして量販店、外食・中食といった冷凍食品ユーザーの毎日の動きを分かりやすくお伝えします。

創刊:
昭和47年(1972年)5月
発行:
昭和47年(1972年)5月
体裁:
A4判 7~11ページ
主な読者:
冷凍食品メーカー、量販店、卸、外食・中食、輸入商社、物流会社、業界団体など
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