【ちよだ鮨】冷凍寿司の展開強化へ、業務用市場を開拓 海外輸出に向けた新工場の設置も

ちよだ鮨 にぎり盛合せ12貫
ちよだ鮨 にぎり盛合せ12貫

ちよだ鮨は、新たに展開を開始した冷凍寿司の提案を強めている。冷凍寿司としては珍しく、冷蔵での解凍に対応しており、小売店やホテル、人手不足の飲食店などから注目されているという。今年11月には東武ストアの一部店舗でテスト販売を開始しており、2026年の初旬には海外での販売や、冷凍寿司を製造する工場の設置なども計画している。

〈冷蔵解凍に対応 飲食店やホテルからも注目〉

寿司の市場は拡大傾向にある。国内だけでなく海外からの引き合いも増えつつある一方、職人不足などで需要に応えきれていないという。

冷凍寿司はそれを解決する手段として注目されているが、解凍方法の煩雑さや、解凍を間違えると品質が大幅に落ちることも少なくないため、扱いが難しい。また炊いた白米を冷凍すると、解凍時に米から水分が抜けてロウのように硬くボソボソした食感になる白蝋化(はくろうか)という現象が起こりやすい。白米のデンプンが冷凍によって再結晶化し、水分が離れてしまうことが原因で、急速冷凍を行ったとしても、誤った解凍によって白蝋化が起こり、シャリの食感が失われてしまう。

ちよだ鮨で開発した商品は、「冷蔵庫内で解凍できる冷凍寿司」だ。ネタとシャリのバランスを調整するなど、冷蔵庫内で解凍しても白蝋化が起こらないようにした。元々培ってきた寿司の知見なども生かし、開発には約1年の時間がかかったという。

冷凍寿司を使うことのメリットの1つは、フードロスが発生しにくい点だ。冷蔵の商品よりも長期間の保存ができるほか、必要な量だけを解凍して提供することも可能なため、食材の廃棄を減らせるなど提供する側にとっても利点は大きい。また、寿司を作れる人がいない場合でも、冷凍寿司の活用で提供できるようになる。同社は、コロナ禍以降の新たなビジネスとして冷凍寿司に着目し、当初は市販向けに展開を計画していたという。

しかし、商品本部商品開発部で冷凍すし推進担当リーダーを務める辻谷武士氏によると「スーパーなどの冷凍食品売り場は確かに広がっているが、冷凍寿司の需要を検討したところ、少し厳しい可能性があった」という。

解凍の難しさに加え、市販の場合はスーパーで販売されているチルドの寿司との差別化が難しいとの考えから、市販ではなく業務用での展開に切り替えたようだ。

辻谷氏は「人手不足で寿司を提供したくてもできないという話も合った。業務用市場向けの提案ならば可能性は大きいと感じた」と話す。現在、飲食店やホテル、介護施設など、幅広い業態で人手不足は慢性化している。寿司を握れる人材も不足している。冷凍寿司は、誰でも簡単に本格的な寿司を提供できるようになるため、市場からの引き合いは多いのではと推察したようだ。

2025年4月に販売を開始し、現状としては「実験的なところもあり、まだ規模はそれほど大きくはないが、購入した企業からはしっかりと支持されている」(辻谷氏)ようだ。

〈東武ストアでのテスト販売開始 26年には海外展開も計画〉

今年11月には、スーパーの東武ストア3店舗で、冷凍寿司の実験販売を開始した。動向を見て今後の展開を検討する。

「スーパーでも寿司を提供するために人手がいる。冷凍寿司の活用で負担軽減につながるのでは」(辻谷氏)。

また、ちよだ鮨の店舗がない地域での販売や、ホテルや施設給食など業務用向けの販売にも期待を寄せている。

冷凍寿司を製造する工場の建設も進めている。来年春頃の稼働を予定しており、冷凍寿司の提案をより加速させる構えだ。アメリカ市場に向けた輸出も計画しており、それに向けた認証の取得を進めているという。さらに、冷凍寿司以外の展開として、和惣菜など新たな商品の展開も視野に入れている。

今後について、辻谷氏は「品質の追及は今後も続ける。冷凍すしならば店舗のないエリアにも商品を提供できるようになるため、様々な可能性を感じている」と語った。

〈冷食日報2025年12月17日付〉

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