菊水酒造「菊水ふなぐち」発売50周年、「みんなのお酒」として寄り添い続けた歴史を紐解く【クローズアップ】

菊水酒造「菊水ふなぐち」
菊水酒造「菊水ふなぐち」

菊水酒造は10月から「ふなぐち菊水一番しぼり」の商品名を「菊水ふなぐち」に変更し、新たなパッケージデザインで出荷している。

2022年11月に発売50周年を迎えるにあたってのリニューアルで、「黄色い缶」「金色の菊水」として親しまれている印象をデザインに継承しつつ、発売当初を彷彿とさせる白色を基調とすることで、フレッシュでフルーティーな味わいのイメージをまっすぐに表現した。

菊水酒造のマーケティング担当者によると「蔵見学でしぼりたての生原酒を飲んだお客様から商品化のリクエストがあり、1972年11月に日本初のアルミ缶入り生原酒として“ふなぐち菊水一番しぼり”を発売することとなった」と説明するが、当時生原酒は今のように一般的に流通しているものではなく、蔵見学での試飲などのみで、市販はされていないお酒だった。

というのも、当時は生酒にはつきものだった“火落ち菌”混入の問題などもあったため「業界内では生酒の商品化はタブー視されていた」という。「その問題を解決するために、フィルターを使用して対応することになるのだが、これまで醸造現場で用いられていたフィルターでは火落ち菌とともにお酒の旨味も一緒に取り去ってしまう。そこで様々なものを試した結果、医療用の特殊なフィルターを採用することで、火落ち菌は濾過しつつも、旨みもしっかりと残ったお酒を創りだすことができた」という。

もう一つ「紫外線による劣化」という課題も抱えていたが、紫外線を完全にシャットアウトできる缶容器を採用することで問題をクリアし、常温流通可能な生原酒「ふなぐち菊水一番しぼり」が出来上がった。

〈発売当初は大苦戦、レジャー客をターゲットに据え、口コミで評判広がる〉

「画期的な新商品」とはいえ、発売当初は目新しい商品ゆえにあまり手に取ってもらえなかったそうで、「初年度の販売は大苦戦したと聞いている。“なんとかしなくては”とセールス会議を開き、これまでの酒販店経由の販売に加えて、レジャー客をターゲットに据えて活動を行うこととした」という。

当時はスキーブーム真っ只中で、大挙してゲレンデに押し寄せていた若年層を中心に試飲提供を繰り返した。「一度飲んでもらえれば味わいには自信があった。試飲を繰り返していく中で知名度も向上し、加えて口コミで評判が広がり今につながっている。ふりかえれば同商品にとっての一番の転機はそれだったと思う」。

近況については「生原酒といえば同商品というポジションは揺るがない自信はあるが、やはり清酒市場全体の動向同様に微減傾向が続いている。“巣ごもり需要”の増加で家庭内での消費は増加しており、コロナ禍が言い訳になるとも考えていない。この状況を打破するために今回のパッケージリニューアルに踏み切ったほか、マーケティングもさらに強化し、魅力を強く発信していきたい。ほかにも2022年春夏にもポイントキャンペーンを実施したが、我々が予想していた5倍以上の応募数があった。好評につき、10月27日から第2弾をスタートしている」。

改めて「菊水ふなぐち」の魅力を聞いてみたところ「生酒特有のフレッシュさに加え、原酒特有の濃厚でパンチがある味わいなので、同じく濃い味付けのものと一緒に食べてもらえればよりおいしくたのしめる。味わいはより分かりやすく視覚的に表示するため分析機器を使用し、科学的根拠に基づいてチャートを表示しているので、初心者の方にもわかりやすく味わいを表示している」とのこと。

近年ではスパークリングの「菊水ふなぐち」も発売した。既存のスパークリング日本酒はアルコール分10度前後のものが多いが、「菊水ふなぐちスパークリング」は「菊水ふなぐち」同様に19度で。「爽快感とともに飲みごたえも楽しめる。初心者にもぜひ試してほしい」。また、アメリカへの輸出も開始しており、現地でも高い評価を得ているという。

次の節目に向けては「お客様の声が起点となって生まれた商品。ライフスタイルは今後も変化し続けると思うが、それでもお客様のそばにいる商品でありつづけたい」と話した。

〈酒類飲料日報2022年11月11日付〉

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