日本コカ・コーラ『檸檬堂』、食事との相性に加えて“情緒性”訴求/名郷根宗ブランドマネージャーインタビュー

【キャプション】 コカ・コーラシステム「檸檬堂 すっきりレモン」
【キャプション】 コカ・コーラシステム「檸檬堂 すっきりレモン」

コカ・コーラシステムの「檸檬堂」は、2018年5月に九州限定商品として発売し、2019年10月には全国で発売した。

多くのユーザーの支持を獲得し、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアなど幅広く販売されている。2023年4月には新ラインナップ「すっきりレモン」を発売し、綾瀬はるかさんが出演するTVCMも話題となっている。

今回は日本コカ・コーラで「檸檬堂」のマーケティングを担当するマーケティング本部アルコールカテゴリーの名郷根宗ブランドマネージャーに話を聞いた。

日本コカ・コーラ マーケティング本部アルコールカテゴリー・名郷根宗ブランドマネージャー
日本コカ・コーラ マーケティング本部アルコールカテゴリー・名郷根宗ブランドマネージャー

――昨今のRTD市場をどう見るか

(※RTD=Ready To Drink、チューハイ・サワー等のふたを開けてすぐ飲める低アルコール飲料)

ここのところ成長し続けてきたが、前年越えが長年続いてきた市場がマイナスになったのは大きなターニングポイントだと思う。

ここ最近のレモンサワーブームでは、各社からさまざまな商品が出てきたが、ただ「おいしい」「新しい」といった物性的な価値ではお客様は魅力を感じず、ついてこなくなっている。

ただ、足元の状況を見ていると、いい調子で伸びている。缶チューハイにしてもハイボールにしても、無糖の製品が特に好調だ。

また、レモンサワーを見ても2022年にはマイナスとなったが、現在マイナストレンドは縮小し購入金額は再び上向きとなっており、いわば「熟成期」で、定着のフェーズに入ってきたと見られる。

そういった環境下では、「だれと」「いつ」「どう」飲むかという楽しみ方の提案や、情緒的価値を訴えていく必要が出てくると考えている。

市場を取り巻く環境では、新型コロナウイルスの感染症法上の扱いが2類から5類に変更となったことから外食への回帰が進んでいるほか、当社が実施した調査によればお客様の中には家飲みに対して飽きとマンネリが出てきている。さらに、物価高が続き晩酌を控えるお客様も多くなっている。缶製品にとっては向かい風が吹いているが、その点を見ながらどうやってRTDの新しい価値を再定義し、提案できるかどうかが今後重要になって来るのではないだろうか。

――「檸檬堂」の施策は

市場の状況を考えたときに、レモンサワーの「定着」と「浸透」をさせていくことがキーポイントとなっていくと思う。市場はマイナストレンドだが、定着を推進し、買上げ点数を着実に伸ばすことで再成長の基盤ができていく。2023年内はその点に注力し、やりきりたい。

その中で「製品そのもの」だけでない提案も必要があると考えており、3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で行った「侍ジャパン応援レモンサワー」がその考えに基づいた取り組みの1つとなる。

お客様の中では「野球観戦=ビール」という考えをお持ちの方が多いと思うが、「ビールだけではなく、レモンサワーでもいいのでは?」と提案し、飲む機会の増加を狙った。今回の取り組みでは特に500mlの「ホームランサイズ」が「縁起が良い」と注目され、お客様の中では4本飲んで「満塁ホームラン」と発信される方もあらわれるなど話題となった。3月の段階で野球とレモンサワーをつなぎ、楽しみ方を広げられたのは成果と考えている。WBCに引き続き、プロ野球のペナントレースなどでも提案できるのではないかと考えている。

4月には「すっきりレモン」を発売。丸ごとすりおろしたレモンとお酒をあらかじめ馴染ませた「前割りレモン製法」はそのままに、ほろにがい国産のレモンピールエキスで仕立てた、すっきりとした味わいが特徴だ。試行錯誤を繰り返した上でたどり着いた味わいの商品で、お客様からの反応もよくリピート率もこれまでの製品で最も高い。「一番好き」「飲み続けたい」という意見も聞いている。

最近ではビールのかわりにレモンサワーを食事中に飲むお客様も増加しており、そういった方にも支持してもらえる味わいを目指した。

からあげなど定番の揚げ物に加えて、マグロやカツオなど、赤身の刺し身ともマッチするという評価も頂いている。

また、コミュニケーションもガラッと変えた。これまでは「居酒屋“檸檬堂”」の店主に扮した阿部寛さんが「おいしさ」や「製品・製法へのこだわり」といった物性的価値を訴求してきたが、4月からのコミュニケーションでは綾瀬はるかさんを起用し、食事とともに楽しめる商品であることをアピールした上で、「幸せな晩酌」「満たされる晩酌」という情緒的価値を訴える形とした。

ここ3、4年はコロナ禍や物価高の影響で家飲みの形が変わってきた。2019年より前では手っ取り早く気持ちをスイッチできる「ストロング系」が支持されたが、コロナ禍を経て“自分をいたわりたい”“満足感を得たい”“より良い時間を過ごしたい”というニーズが非常に多くなった。そこに対して“一日頑張った”“良い一日になった”と肯定してくれる存在が求められている。「檸檬堂」はまさにその存在であり、加えて味わいの評価も高い。しっかりと価値を広げるために提案していく。

夏に向けては「揚げ物とレモンサワー」という王道の組み合わせを提案。「夏こそ、檸檬堂と“フライ”デー」をテーマに、食事の準備の必要のないお惣菜、とりわけレモンサワーとの相性が良い「フライ」と、濃いレモンの味わいが楽しめる「檸檬堂」の組み合わせで、手軽で満足度の高い晩酌の楽しみ方を提案する。

綾瀬はるかさん起用で「夏こそ、檸檬堂と“フライ”デー」訴求
綾瀬はるかさん起用で「夏こそ、檸檬堂と“フライ”デー」訴求

――海外展開は

現在中国、フィリピン、メキシコ、ブラジル、インドの5カ国で展開しており、どの国でも評価はいい。カクテルではなく、日本独自の「レモンサワー」として人気を博しており、特にフィリピンでの人気が高い。

――改めて消費者や業界関係者に訴えたいことは

お客様に対しては、いまお酒の選択肢はさまざまあるが、レモンサワーが「楽しい」「面白い」と思ってもらえる提案を仕掛けていきたい。また、どうすればレモンサワーが面白いと思ってもらえるかというのを、InstagramやTwitterといったSNSを通じ、お客様から直接声を聞きながらできればと考えている。

業界関係者に対しては、レモンサワーは間違いなくRTDの成長ドライバーを担っており、レモンサワーがどうなるかによって今後のRTD市場全体の動向にも関わっていると思う。さらなる定着や再成長を目指したい。レモンサワーはビールほど「このブランドでなければだめ」という認識が濃くない。市場を盛り上げていくために共にできることがあれば取り組んでいきたい。

〈酒類飲料日報2023年7月19日付〉

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創刊:
昭和42年(1967年)8月
発行:
昭和42年(1967年)8月
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A4判 7~11ページ
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