〈令和4年11月の需給展望 鶏肉〉国産生鮮モモは700円の大台を突破、ムネは加工需要が継続

〈モモ相場は右肩上がりの見通し、800円付近まで上昇の可能性も〉

10月の鶏肉需給は、気温低下に伴う鍋物需要に加え、消費者の節約志向の高まりから食肉の中でも価格優位性のある国産鶏肉は安定した量販店需要に支えられた。

荷動きの中心がモモに移り変わるなか、生産動向や輸入品のコスト高の影響も相まって、モモ正肉相場は月中旬に早くも700円(日経加重)の大台に達し、異例の高値相場となった。その後もジリ高で推移し、10月最終日(31日)には710円まで上昇している。

ムネは堅調な量販店需要に加え、加工筋からの引合いも継続し、ムネ正肉相場は月中旬に380円を超えた。一方、凍結品は需要期の年末に向けて在庫確保が進んでおらず、ひっ迫感がさらに強まっている。相場が高値推移するなか、凍結回しができず「注文があっても対応できない」(関東の卸筋)状況だ。

10月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが698円(前月668円)、ムネが377円(364円)となり、正肉合計で1,075円(1,032円)と千円を上回る相場展開が続く。前年同月比では、モモが95円高、ムネが49円高とともに大幅に上昇し、正肉合計では144円高となった。

〈供給見通し〉

日本食鳥協会がまとめているブロイラー生産・処理動向調査によると、11月の生体処理羽数は前年同月比0.2%増と前年をわずかに上回ると予想する半面、処理重量は同1.6%減少すると予想している。北海道・東北地区は羽数1.4%増、重量0.1%減、南九州地区は羽数が前年並み、重量2.4%減と予想し、いずれも重量は前年を割る見込みだ。10月時点で既に北海道、岡山県で高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が発生しており、このうち、北海道は肉用鶏農家での発生となった。冬から来春にかけて、いつどこで発生してもおかしくなく、予断を許さない状況にある。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によると、11月の国内生産量は前年同月比2.2%減の14.3万tと予測している。9~11月はいずれの月も前年割れとなることで、3カ月平均では2.1%減の14万tとなる見通しだ。一方で、11月の輸入量は14.8%減の4.9万tと予測。例年であれば需要期に向けて輸入量が増加傾向となるものの、ことしは米国産が鳥インフルエンザの影響で不安定な輸入状況が続くことに加え、為替変動や国内の在庫状況などを考えると最低限の調達にとどまるものとみられる。

〈需要見通し〉

量販店での販売は本格的にモモ、手羽元が中心となり、朝晩の冷え込みが厳しくなるにつれ、鍋商材など国産生鮮モモは強含みの展開が見込まれる。ムネも凍結品を中心に加工需要に支えられ堅調に推移することが見込まれる。ただ今後、国産相場が上がり過ぎた場合、輸入品に需要がシフトするケースも考えられるが、そうはいっても輸入品もコスト高で推移しているため、どこまでシフトの動きが進むかは不透明感が強い。国産凍結物がタイトにあるなか、年末に向けてより一層、玉不足が強まる可能性もある。

〈価格見通し〉

いまの需給環境を勘案すると、基本的に相場の下げ要因はなく、モモ正肉相場はここから年末の需要期に向けて右肩上がりの展開が予想される。どこまで上昇するのか読み難いなかで、業界では「現実的に800円を超えることは考え難い」との向きがある半面、既に鳥インフルエンザの発生がみられるなか、今後、供給面に影響を及ぼすことになれば「年末に向けて800円付近まで上昇する可能性は十分にある」との声も聞かれる。

ムネは安定した需要を背景に高止まりで推移することが予想されるが、いまが天井とみる向きが多く、上がっても小幅な上昇にとどまりそうだ。このため、11月は日経加重平均でモモが750円前後、ムネが385円前後、農水省市況ではモモが760円前後、ムネ390円前後と見込まれる。

〈畜産日報2022年11月7日付〉

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