【令和5年5月の需給展望 牛肉】GW出費の反動で一部銘柄牛以外は軟調に推移、消費の冷込みで小売需要厳しく、スソ物中心の展開

2023年のゴールデンウィークは、外食需要、とくに地方のホテル関係の需要は好調だったものの、小売関係は都心部の店舗を中心に振るわなかったようだ。

一方、当初予想通り、問屋筋には連休前ギリギリに発注が入ったが、一部の高級銘柄を除けば枝肉相場の押上げ効果は弱く、和牛去勢A4の場合、月間平均では2,338円(東京市場)となり、2020年を除いて、過去5年では、最安値の水準で推移し、消費環境の弱さを示す結果となった。

5月は、連休後に消費が落ち込む時期となり、休み明けの補充手当てが一巡すると枝肉相場は弱気に転じ、6~7月の梅雨期の相場低迷期へとつながっていく流れと予想される。インバウンド需要で一部銘柄牛は堅調な引合いが継続するものの、今後の消費環境からすれば「補充手当ての動きもそう長続きはしない」(関東の卸筋)との見方が多い。

そのため、和牛5等級は“加重平均”として高値を維持するとみられるが、交雑を含めて相場安の状況は継続しそうだ。飼料価格などの生産コスト高にある肥育農家にとっても先行き経営不安が強まることが懸念される。

〈供給見通し〉

農畜産業振興機構の需給予測(4月26日発表)によると、5月の全国出荷頭数は8万7,700頭(2022年同月比4.2%増)と予想している。このうち、和牛が3万8,400頭(2022年同月比2.9%増)、交雑種が2万1,700頭(10.3%増)、乳用種2万6,300頭(2.2%増)で、それぞれ前月からは5,900頭、2,400頭、1,800頭減少する見通し。

また家畜改良センターの個体識別情報から予測すると、ホルスタイン種雄は1万2千頭前後(2022年同月比2%増)とみられる。5月の輸入量は4万1,500t(9.3%減)で、チルドが1万7千t(17.0%減)、フローズンが2万4,500t(3.0%減)と予想されており、輸入量は絞られてくるとみられる。

〈需要見通し〉

4月の末端消費はテーブルミート中心に全体として振るわなかったものの、連休期間中は天候に恵まれ、焼材中心に動いたようだ。ただ、バラのパーツ単体としては価格に見合うほどの動きはなかったとの声も聞かれる。

また、カタロースの動きは不振だが、バラより脂のアタリが良いため、一部では焼肉スペックを提案する動きもあったようだ。今後は、連休の出費の反動だけでなく、折からの食品価格の値上げや自動車税の納付など、消費者の節約志向は例年以上に強まりそうだ。

5月1週目(1~2日)の上場頭数が少なかったため、連休明けの補充手当てはソコソコ強かったものの、末端消費は焼材やモモの切落とし用、煮込み用のスネ中心の展開となりそうだ。高級部位は、インバウンドなど特定のマーケット以外は需要が低迷する可能性があり、在庫をどう消化するかが課題となってきそうだ。

畜種別では、一部の産地・銘柄牛は堅調を維持するものの、それ以外は低迷し、和牛から交雑へのシフトも進みそうだ。出荷頭数がタイトなホルスは、需給バランスの大きな崩れはないものとみられるが、「母の日」のロース需要が過ぎれば、こちらもスソ物中心の動きになると予想される。

〈価格見通し〉

前述の通り、5月は上げ材料が乏しく、全体的に前月から一段下げの展開とみられる。和牛は、消費の冷え込みで4等級物の下げが大きそうだ。交雑種は、出荷頭数が昨年度対比で1割増となるものの、現状の末端消費の動向からみて和牛よりは下げ幅が小さいとみられる。5月は弱気の展開、6月以降は梅雨の不需要期となるため夏場需要の手当て買いが強まる7月中旬頃までは低迷相場が続きそうだ。

このため、和牛去勢A5等級で2,550円前後、A4で2,200円前後、A3で2,050円前後と予想。交雑去勢B3は1,450円前後、B2で1,300~1,350円。ホルス去勢B2(搬入)は960円前後と予想される。

〈畜産日報2023年5月11日付〉

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