オーストラリアMLA「オーストラリアワインのマーケティングの経験生かす、日本との信頼関係を強固に」/駐日代表トラヴィス・ブラウン氏インタビュー

MLA豪州食肉家畜生産者事業団、駐日代表トラヴィス・ブラウン氏
MLA豪州食肉家畜生産者事業団、駐日代表トラヴィス・ブラウン氏

MLA豪州食肉家畜生産者事業団の駐日代表に、8月1日付でトラヴィス・ブラウン氏が新たに就任した。

ブラウン氏は豪州ワイン業界で日本を含むアジア市場でのオーストラリアワインのマーケティングに長く携わってきた。これまでの経験を踏まえ、これから日本市場でのオージー・ビーフ、オージー・ラムのマーケティングの手腕に期待がかかる。ブラウン新代表に就任にあたっての意気込みと今後の方針を聞いた。

――これまで長年、豪州のワイン業界に勤められていたと伺っています

約17年間、豪州大手ワインメーカーのトレジャリー・ワイン・エステーツ社(以下、トレジャリー社)に勤めており、日本での5年間(2016年5月~2019年9月)の駐在を含め、香港、シンガポール、バンコクへ赴任し、ゼネラルマネージャーとして、アジア市場でのオーストラリアワインのマーケティングに従事してきた。私自身、食肉業界は初めてだが、オーストラリアワインとオージー・ビーフ、ラムはともに豪州を代表する国際的なブランドであり、2度目となる日本での仕事を非常に楽しみにしている。

――今後の日本市場でのビジネスプランは

豪州と日本は40年以上、ビーフとラムの貿易関係の歴史がある。これからも我々は、日本の顧客と安全性、持続可能性、安定供給に関する強固な協力関係を維持していきたいと考えている。そして、日本の消費者との信頼を築けるよう活動を継続していく。

それを実現するため、今後、12カ月間のマーケティング計画を組んで集中して取り組んでいく。とくにテレビやSNSでの広告、新たなプログラムである「オージー・ビーフ・マイト」(オージー・ビーフPR大使)、そして「ラムバサダー」を含めた「AUSSIE MEATACADEMY」企画をその計画のなかに組み込んでいく。また、小売向けの試食販売のサンプリングやエンドユーザーを対象にした現地視察などのプログラムを通じて、関係を深めていく。

――ワイン業界でのマーケティングの経験から、日本市場をどのように見ていますか

豪州は40年以上にわたって日本市場への長期的な投資を行い、信頼と品質に基づき、いまオージー・ビーフ、ラムのブランドは日本で非常に強固な地位が確立され、高い評価を得ている。こうした環境のもとで、駐日代表に就任するということは私自身、非常に幸運といえる。
 
日本国内の肉牛・羊肉の産業規模を考慮すると、日本市場のマーケティング・プログラムを開発する際には、非常に全体的な視点を持つ必要がある。消費者視点で日本全国のさまざまな層にオージー・ビーフ、ラムを購入し、楽しんでもらう機会を提案する必要があると考えている。また、業界や消費者に対する正しい情報もさらに提供していくことも重要だ。とくに付加価値を提供していくためにも、さまざまなニーズを注意深くキャッチしていく必要がある。

以前、トレジャリー社のゼネラルマネージャーとして日本に駐在した時には、日本市場を直接肌で感じることができたため、非常に素晴らしい経験だった。日本は地域でそれぞれの文化があり、多様性もあると理解している。さまざまな人たちとの関係を尊重して、彼らのビジネスをサポートし、常に付加価値を求めていきたいと考えている。

日本に赴任していた時期は新型コロナ禍以前だったため、コロナ禍を経て業界のパートナーや市場構造、経済環境がどのように変化しているのかを見極めながら、新しい環境に戦略を適応させていく。コロナ禍を機に人々の生活様式には多くの変化があり、例えば、出勤と在宅勤務のハイブリッドワークの定着は、外食産業に影響を及ぼす半面、(テイクアウト、デリバリーなど)新しい機会も創出された。また、羊肉市場も着実に拡大しており、オージー・ラムは大きな可能性を秘めている分野のひとつと期待している。

一部の層は羊肉料理に魅力を感じていないかもしれないが、サンプリングや啓蒙活動を通じて、人々の意識を変えることができると信じている。すでに、我々はラムバサダー・プログラムを通じて、鉄分やタンパク質など羊肉の栄養価の高さ

を訴求しており、日本の消費者の羊肉に対する考え方、楽しみ方が徐々に変わってきているのもひとつの素晴らしい事例と捉えている。このほか、簡便性・即食性の高いデリカ分野にも、多くの消費者が利便性を感じているため、我々、MLAとしても今後さらに注視していくべき分野と捉えている。

――ブラウン代表ご自身が考えるオージー・ビーフ、ラムの強みは

ひとえに品質の多様性、コストパフォーマンスが強みであると考える。オージー・ビーフの場合、ステーキ・アイテムはジューシーな品質で世界的にも非常に優れている半面、ハンバーガー用のパティなども非常に長い歴史がある。
 
オージー・ビーフは、高級レストランからファミリーレストランまでさまざまなニーズに対応することができる多様性があり、日本はもちろん、世界中の人々の日常生活で非常に重要な役割を果たしている。料理の面でもシチューやスープ、バーベキュー、しゃぶしゃぶなど、あらゆるシーンに対応可能な部位を提供することができる。

我々が誇りにしている点は、豪州の輸出能力と、長期にわたる国際市場とのパートナーシップにある。豪州の畜産業界は、国際市場にオージー・ビーフをPRするだけではなく、世界で最も安全で信頼性の高いサプライチェーンを構築するために、多大な投資と時間をかけて、信頼とブランド力を築いてきた。
 
さらに、次世代のために持続可能なビジネスを確実に創出するため、2030年までに温室効果ガス純排出量ゼロを目指す「CN30イニシアティブ」を世界に表明している。この方針を伝えることにより、世界の消費者や貿易パートナーがオージー・ビーフとラムを第一の選択肢にするひとつの判断材料となり得る。

――マーケティングについて1ワインメーカーの商品と、オージー・ビーフ、ラムというブランド全体ではアプローチが異なると思われますが

トレジャリー社も豪州最大手のメーカーであり、専門店向けのハイエンドからスーパーやコンビニエンスストアなどで販売されるような一般的なものまで非常に多くのワイン・ブランドを展開しており、その点についてMLAと似ており、我々の素晴らしいオージー・ビーフ、ラムを日本市場に浸透させていくことに大きな差異はないと感じている。

むしろ、食肉とワインで共通しているのが、日本という成熟したマーケットにどのように啓蒙していくかが課題といえる。前職でもステークホルダーを豪州へ視察に招待することでオーストラリアワインへの理解を深めてもらう活動に力を注いできたが、これと同様の取組みを日本の食肉業界の関係者に提案していきたい。

また、豪州大使館や豪州貿易投資促進庁らとホテルでオーストラリアフェアなどを企画した経験があり、今後も継続していくほか、豪州やニュージーランドの商工会議所など豪州に関わる多くの方々との関係を築いてきたこともあり、そのネットワークも活用していきたい。

〈畜産日報2023年9月8日付〉

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昭和35年(1960年)3月
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