キリンホールディングスとファンケルは、2019年8月に資本業務提携を発表し、翌年から徐々に飲料や食、スキンケアなどの商品を発売している。いずれも健康を軸にしたものであることが特徴だ。そして、共同開発した清涼飲料やノンアルコール飲料では、両社のブランドを前面に打ち出している。

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現在、キリンビバレッジは、清涼飲料の「キリン×ファンケル デイリーアミノウォーター」(555mlPET、2021年4月発売)、キリンビールは、機能性表示食品のノンアルコールチューハイ「キリン×ファンケル 氷零 カロリミット」(350ml缶、2020年10月発売)を展開している。

飲料や医薬品などを扱う“食と医のキリン”と、化粧品やサプリメントを展開する“美と健康のファンケル”。異なるカテゴリーで活動する両社がどのように商品開発に取り組んでいるのか。また、実際に活動する中で見えてきた両社の相乗効果とはなにか。ファンケルとのコラボブランドを担当しているキリンビバレッジ社マーケティング部の二宮倫子さんに話をきいた。
キリンビバレッジ社マーケティング部 二宮さん

キリンビバレッジ社マーケティング部 二宮さん

 
――異業種のキリンとファンケルは共同で商品開発をされています。実際に取り組まれてどのような印象ですか。
 
もともとキリンは、企業理念として“よろこびがつなぐ世界へ”を掲げているように、企業活動として新たな価値を生み、たくさんの人々の日々の暮らしを豊かにするという姿勢で活動してきた。一方、ファンケル社は、創業理念に“世の中の「不の解消」”を掲げており、一人ひとりの「不」にしっかり向き合うことを主眼に置かれ活動している。その点が私たちと少し違うところだったので、インスピレーションを受けました。また、ファンケル社は機動力が高く、コロナ禍でもライブ配信やイベントを自前で企画され、すぐに取り組まれるなどスピードが早いです。しかしながら、両社の企業風土はよく似ていると思います。特に、お客様の課題を解決していきたいという思いが強いことは同じですね。
 
――2020年4月に発売した「キリン×ファンケル デイリーアミノウォーター」は、一般的なスポーツドリンクと比較して女性ユーザーが多いと聞きました。開発背景は。
 
キリンビバレッジの「キリン×ファンケル」ブランドの取り組みとしては、現代人の「不」を、飲み物でおいしく解消するということをパーパス(存在価値)に取り組んでいます。サプリメントで「不」は解消できますが、喜びやおいしいものを作ることは、清涼飲料の得意領域なので、両社のブランド力や技術を掛け合わせることで、健康とおいしさのハイブリッドな商品を提供することを目指しました。
 
「デイリーアミノウォーター」は、生活者の体調管理意識が高まる中、重要なエネルギーであるアミノ酸を日常的に摂っていただきたいという思いで開発しました。世の中のいわゆるアミノ酸飲料は、アスリートやスポーツシーンに向けたものが多い状況です。しかし、「デイリーアミノウォーター」は、ファンケルで大切にしている体内効率設計に基づいた処方でアミノ酸に適した成分を組み合わせるとともに、日常的に飲みやすい甘すぎない味わいも意識し、すっきりごくごく飲めるように仕上げました。
 
販売面では、キリンの自動販売機や量販店などに投入し、習慣的に手に取ってもらえる環境を作りました。特徴は健康意識の高い女性のお客様が多いことと、飲用後の満足感が高いことからリピート率が高いことです。これまで飲料の商品を販売する際には、発売日に一気に露出を増やすことを重視する傾向にありましたが、この商品は何度もリピートしていただけるような息の長い商品になればと思って取り組んでいます。
 
――他にもキリンとファンケルの提携による相乗効果はありますか。
 
研究面でもシナジー効果がありますね。キリングループはいま、ヘルスサイエンス領域に重点的に取り組んでおり、長年の研究から発酵・バイオテクノロジーに強みがあります。しかし、商品化に結びついていないものも多いのが現状です。それが、共同研究をする中でファンケル社から価値を再発見してもらったものもありました。
 
たとえば、ファンケル社とキリンの発酵技術による共同研究から開発された美容成分「白麹ステロール」を配合した化粧品「ビューティブーケ」です。「白麹ステロール」はキリンの研究所で、もともと研究していた原料でしたが、キリンでは美容関連の受け皿がないため、商品化が難しい状況でした。それがファンケル社との共同研究でスキンケア化粧品に入れることができました。その素材に携わっていた担当者は、実際に商品化を実現できたことでとても喜んでいます。ファンケル社との提携があったからこその商品です。
 
〈ファンケルとの活動はキリンのヘルスサイエンスの柱に、「不」をおいしく解消〉
ファンケルは、健康への取り組みとしてサプリメント事業に長年取り組んでいるが、サプリメントを日常的に摂取しているのは日本人の3割に満たない。その意味では、キリンとの相乗効果により、ファンケルの知見や技術を活かした商品を幅広い人々に届けられることは大きい。
 
ユーザー層も比較的男性ユーザーの多いキリンと、女性ユーザーの多いファンケルという特徴があり、補完し合える関係といえる。キリンとしても、飲料や食をおいしく作れる技術や、長年の研究からさまざまな原料を活用できる場があることは利点だ。
 
キリングループは、ヘルスサイエンスを成長のドライバーにしていく方針を打ち出している。キリンは、どうしてもビールのイメージが強いが、発酵・バイオテクノロジー(生命工学)技術を中心に、「医と食をつなぐ事業」を育成し、健康課題の解決に貢献していく企業だと認識してもらえるような活動を強化していく考えだ。
 
二宮さんは、今後の目標について次のように語る。「ファンケル社と共同で取り組む活動は、キリンのヘルスサイエンスを支える柱のひとつになるでしょう。そのためにもキリン単独ではアプローチできなかった特定のお客様の深いニーズに向けても、ファンケル社と手を組んで“不”をおいしく解消できる商品を作っていきたいと思います」。