食環境の整備と栄養教育の両輪でチームと選手をサポート/LEOC公認スポーツ栄養士・石田美奈津さんインタビュー

公認スポーツ栄養士の資格取得を機にプロチームの栄養サポート担当となった石田さん
(株)LEOC は、プロサッカー選手三浦和良選手が所属するJ リーグ横浜FC への食事提供でも有名な給食企業である。日頃から、どのような食事提供と栄養指導を通じて、アスリートをサポートしているのか。スポーツ栄養事業企画部の公認スポーツ栄養士、石田美奈津さんに話を聞いた。
 
〈「食環境の整備」と「栄養教育」〉
――現在の仕事内容について教えてください。

プロチームにて栄養サポート業務を行っています。業務は主に2つあります。1つ目は「食環境の整備」です。試合にベストコンディションで望めるよう、宿泊先や球場での食事内容を事前にチェックし、ホテルやケータリング業者の担当者と打ち合わせを行っています。チームスケジュールだけでなく、季節や選手の好みなども考慮し、メニュー提案も含めた調整を行っています。また、キャンプや遠征に帯同し、トレーニング目的を達成できるよう、提供されている食事の内容や、選手の喫食状況を確認しています。

2つめは、「栄養教育」です。栄養講習会の実施、掲示物・配布資料などでの情報提供を定期的に行っています。また、個別栄養相談という形の栄養教育も行っています。栄養教育は、チームスタッフと連携して行うのはもちろんですが、寮で生活している選手への指導は、寮での食事提供を担当している管理栄養士との協力も欠かせません。このチームの場合は、選手寮の食事提供も当社で行っているので、そのあたりは非常にスムーズに出来ています。
 
〈チームで取り組む栄養補給計画〉
――選手寮の食事提供には関わっていますか?

日々の食事の献立作成は、寮担当の管理栄養士に任せています。ただ、アスリートへの食事提供は、年齢、性別、競技種目、ポジションに加え、練習期、試合期、オフ期などトレーニング計画への考慮が必要なので、栄養補給計画の立案時には、チームスタッフと三者で話し合いをします。食事内容は「主食・主菜・副菜・乳製品・果物を揃えること」が基本ですが、現在サポートしているスポーツチームでは、試合前は糖質とたんぱく質を中心とした食事に、試合後はビタミン・ミネラル類がしっかり補えるような食事にしています。寮での食事提供にかかる管理栄養士の作業は少なくないので、私が、選手から直接得た情報やチームスタッフからの情報を共有するようにして、献立に反映してもらうようにしています。

選手への個別サポートとして栄養教育に取り組む

選手への個別サポートとして栄養教育に取り組む

〈チームと選手それぞれに栄養教育、家族にも〉
――栄養教育について、もう少し詳しく教えてください。

 
チーム全体への栄養教育は、「水分補給」「試合期の食事」「疲労回復」など、チームの課題に沿ったテーマで講習会を実施したり、講習会で得た知識を使えるようにするための情報を提供、例えば、料理や食材の栄養学的特徴を掲示したり、食べて欲しい食材を使った料理レシピを配布するなどしています。また、これは選手本人だけでなく、食事作りを担当されているご家族や保護者に向けても行います。もちろん弊社の調理スタッフにも同じことを理解してもらう必要があるので、実施した講習会の内容、配布した資料などは共有しています。
 
選手個人へのサポートは、身体づくりの目標を決め、期間を決め、コンディショニングコーチなどチームで選手の情報を共有しながら進めています。食事の環境を整え、現場に応じた食事提供を行うことは必要ですが、最終的な栄養サポートのゴールは、選手が状況に応じて「いつ、何を、どのぐらい食べればよいのか」選択できるようになることだと考えています。
 
〈給食雑誌 月刊メニューアイディア 増刊号2019『アスリートとスポーツ愛好家のためのレシピ』より〉