〈物語コーポレーション 焼肉事業部長・山口学氏に聞く〉
2007年の1号店オープンから224店(19年7月末現在)まで店舗網を広げ、飛躍的な成長を遂げたテーブルオーダーバイキング業態の「焼肉きんぐ」。既存店売上高も連続拡大中と焼肉市場全体の好調をけん引する。

「開発・人財力を強みに今後も継続成長を続けていく。現状は(「牛角」に次ぐ)2位だが、この3年以内に焼肉業界で売上トップを狙う」と意気込むのは、同業態の開発を手掛ける物語コーポレーション(愛知県豊橋市)焼肉事業部長の山口学氏だ。急成長を支える同業態の取り組みを聞いた。
物語コーポレーション 焼肉事業部長・山口学氏

物語コーポレーション 焼肉事業部長・山口学氏

〈「待たせない」ことを重要視〉
――「焼肉きんぐ」の業態概要を

 
1995年から運営する郊外型焼肉店「焼肉一番カルビ」からの業態転換で2007年3月、石川県内に1号店をオープンしたのが「焼肉きんぐ」だ。当時はファミリー層をターゲットとしたリーズナブルな郊外型の焼肉店が増えてきており、競争激化が進んでいたため、起死回生の一手として、単品注文もできるが、食べ放題に特化した焼肉業態「焼肉きんぐ」を開発した。
 
テーブルオーダーバイキングを含め焼肉の食べ放題業態は当時から複数あったが、他社との差別化ポイントとして何よりも重要視したのが、「(注文から提供まで)お待たせしない」こと。
 
時間制限のある食べ放題は、時間こそが価値で、制限時間100分の限られた時間の中、注文数は通常の焼肉店の1.5倍にも及ぶため、注文に当たっては早々にタッチパネルを導入、適切な人員配置により、どこよりも早い提供スピードを自負している。平均客単価は3000円。焼肉メニューは、主に米国産牛肉を使用。カットやスライスなど提供する肉の加工は提携の食肉加工場で実施しており、省力化と品質の安定につなげている。2007年の初出店から毎年20店舗程度出店し、224店舗(直営134店舗、フランチャイズ90店舗)まで拡大した。
 
――メニューや店舗戦略を
 
食べ放題は、「きんぐコース」(税抜き2980円。以下、全て税抜き)、「58品コース」(2680円)、「プレミアムコース」(3980円)の3コース。一番人気は「きんぐコース」で、来店客の7割が注文する。同コースには2年前、目玉となる「きんぐカルビ」など4品を“4大名物”として導入した。「焼肉きんぐ」でしか味わえない、豪快な熟成厚切り肉が支持を集め、競合他社の出店攻勢から一時落ち込んでいた既存店売上高の拡大につながっている。

一番人気「きんぐコース」の目玉メニュー、熟成厚切り肉「きんぐカルビ」

一番人気「きんぐコース」の目玉メニュー、熟成厚切り肉「きんぐカルビ」

さらなる来店頻度の拡大を図るため、今年3月にはメニューの大幅な改定を実施した。4大名物は、ホルモンに替え「ドラゴンハラミ一本焼」を導入し、カルビ、ロース、ハラミの焼肉の王道とも言える3部位を揃えた。鶏もも肉などを使った旨辛焼肉、チーズ焼肉も投入し、トレンドを意識したメニューを充実させた。また初の国産牛を「プレミアムコース」に導入。当店の主要客層は3世代での来店を含めたファミリー層でシニアを中心に、「国産牛を食べたい」という声も多かったため提供を開始した。
 
利用客の反応も上々で改定以降、同コースの注文比率は3%程度伸びており、今後さらなる伸長が見込まれる。メニュー改定は1年に1回は実施する考えで、期間限定メニューではエッジの効いた商品を用意するなど飽きさせない工夫を図っていきたい。
 
〈“おせっかい”を中心に接客強化、「焼肉ポリス」の焼き方指導で満足度向上〉
食べ放題業態においては、ともするとぞんざいになりがちな接客を、“おせっかい”を中心に強化しようと2016年に「焼肉ポリス」というポジションを導入した。焼肉ポリスが返しの回数・時間など焼き方指導で各テーブルを回っており、満足度の向上につなげている。
 
一方、店舗戦略としては、店舗改装や新店オープンに際し約3年前から、テーブル数を適正化する“減卓”を進めている。減卓に取り組む以前は、厨房の生産能力を超える多くの来店客で込み合い、注文から提供までお待たせしてしまうことが多々あった。ピーク時の集客とオペレーションの最適化を図ることを目指し、実施したのが減卓で、適切な提供時間の確保と人員の配置を実現した。
 
――今後の展望について

 
「焼肉きんぐ」はこの10年強で、1店舗当たりの平均年商が2億円近い一大業態へと成長することができた。土日はランチもあるが、ディナーだけの営業でここまでの売り上げを誇る外食業態は他にないだろう。業態の開発力はもちろん、他社が採用難に喘ぐ中、アルバイトの採用においては応募から面接日までの日数削減に全社を挙げて取り組むなど細かな工夫で、安定した人材確保へとつなげ、独自のスキームで人材育成に取り組んできたことも好業績を維持できている要因だ。
 
食材や資材の高騰で原価率は上昇、人件費も高騰する中、メニューでの他社との差別化には限界があると見ており、今後の成長に向け鍵となるのが接客サービスを行う人材だと考えている。接客を通した人と人とのつながりがさらなる来店頻度の拡大につながると見ており、焼肉ポリスの取り組みをさらに充実させていく。一方、課題は知名度で、未出店地域では「焼肉きんぐ」を知らない人もまだまだ多い。MTV主催の音楽イベントに協賛するなど若年層を狙った販促を強化し、知名度をアップさせ、毎年20店舗程度の新規出店につなげていきたい。選ばれる焼肉チェーンとして確固たる地位を築き、この3年以内に焼肉業界で売上高トップを狙う考えだ。