3世代が集まる焼肉ダイニング「ワンカルビ」、“業績不振による閉店ゼロ”の秘訣は“原点回帰”と“食べ放題”/ワン・ダイニング

焼肉ダイニング「ワンカルビ」外観
〈2006年のオープン以来、業績不振による閉店はゼロ〉
“2時間の幸せを”をテーマに焼肉テーブルオーダーバイキング「ワンカルビ」を運営するのは、ワン・ダイニング(大阪市西区)だ。2006年の大阪での1号店オープン以来、同業態は業績不振で閉店した店舗は1店舗もなく、既存店売上高も100%を達成し続けている。

髙橋淳社長は、「成功の秘訣はチルド肉を店内で手切りする『原点回帰』と、接客を重視した『食べ放題』の2つの独自価値だ」と強調する。50歳代以上に割安感のある価格に設定したことも功を奏しており、3世代が支持する焼肉食べ放題として確固たる地位を確立している。

ワン・ダイニング 代表取締役社長 髙橋淳氏

ワン・ダイニング 代表取締役社長 髙橋淳氏

〈ワン・ダイニング 髙橋淳社長に聞く〉
――「ワンカルビ」の創業経緯と店舗概要を

 
精肉の小売業であるダイリキとして創業した当社は、小売だけでなくもう一つの事業の柱を確立することによって安定的な成長を目指そうと1993年に焼肉店で飲食事業に進出した。2008年に会社を分割し、1&Dホールディングスのもと、小売事業のダイリキと飲食事業のワン・ダイニングの2社を経営している。
 
2001年、2003年にBSEが発生し、その当時あった焼肉店32店舗のうち3分の2が赤字店舗となった。立て直しを図るため様々な業態改革を行ったが、なかなかうまくいかず、最終手段として着手したのが、『原点回帰』と『食べ放題』だった。
 
原点回帰とは、チルド肉の店内での手切りだ。客単価2500円の居酒屋感覚と急速出店を実現するために、それまで肉の加工は提携先にアウトソーシングしていたが、ダイリキで培ってきた店内カットの技術を焼肉店にも導入することが当社の独自価値につながると考え、店内加工に向け人材育成を強化した。
 
また「これで失敗したら店舗を閉めよう」と、飲食店を運営していく上で最終兵器とも言える食べ放題にも着手した。単に安さを売りにするのではなく、注文した商品をテーブルまで届けるお客様との接点が生まれる接客を強化したテーブルオーダーバイキングとして開発し、独自価値につなげた。
 
原点回帰と食べ放題が功を奏し、「ワンカルビ」はオープン以来、業績不振による閉店は1店舗もない。関西、九州と出店し、昨年4月には関東に初進出した。店舗数は124店舗で全て直営店舗だ。

「ワンカルビ」ではチルド肉を店内手切りで提供

「ワンカルビ」ではチルド肉を店内手切りで提供

〈子どもと50歳以上に割安価格 客層の2割がシニア、3世代での来店も〉
――業態の特長を

 
営業はディナー(17時から)のみで、95品税抜き3580円(以下、全て税別価格)と48品3080円の2コースがある。各コースとも年齢別価格を設けており、売れ筋の3580円コースは50歳代3220円、60歳代2860円、70歳以上2500円、小学生1790円、4~6歳500円、3歳以下は無料。
 
子ども料金を低く設定しているチェーンは他でも見られるが、50歳代以上に割安感のある価格を設定しているのは当社のみだろう。シニア世代にとって入店しやすい価格設定が支持され、子ども夫婦に孫と3世代で来店するファミリー層も多く、全席が6人掛のテーブル席だ。シニアは全体の2割を占める。
 
主に米国産を使用する牛肉はもちろん、サイドメニューについても専門店を研究するなど提供する全てのメニューを徹底してこだわっている。グランドメニューは年2回、国産野菜を使用したサラダや旬の果物を使ったデザートは3カ月ごとに改定しており、満足から感動へとつながるメニュー構成で、来店頻度の拡大を図っている。
 
人材戦略については採用・育成・定着の3本柱を中心に推進している。社員教育については、11階層に分け、年間プログラムを決め研修を実施。店舗で働く社員を対象に年1回、肉の部位ごとに技術検定を実施し、階級を給与に反映しており、技術力の向上にも努めている。
 
またインナー採用を積極化させており、社員の6割がアルバイト出身者だ。少子高齢化で人手不足が長期的課題としてある中、当業態へのロイヤリティが高いアルバイトを社員として採用できていることは、今後の成長に向け大きな原動力となるはずだ。
 
――1店舗ごとに良い店を確実に作っていく
 
2008年の会社分割以降、「ワンカルビ」の好業績がけん引し当社の売上高は、約3倍となった。急速出店は今後も考えておらず、1店舗ごとに良い店舗を作り、確実な出店につなげていきたい。関東を中心に知名度には課題が残るが、オープンした店舗を中心に認知度向上に努め、年間7店舗前後の新規出店を進めていく。