回転寿司チェーン「くら寿司」では7月16日から、低利用魚を寿司ネタとして販売する取り組みの一環として、「琉球スギ」(2貫税込220円)を販売している。販売期間は7月25日まで。

この耳馴染みのない「スギ」という魚は、スズキ目スギ科に属し、別名「クロカンパチ」や「リュウキュウカンパチ」と呼ばれ、刺身などで食されている。群れで生活しないことから天然物でまとまって水揚げされることはなく、流通経路に乗ることはほとんどない。近年、沖縄や海外で養殖されるようになってきたものの、産地で消費される程度で知名度はかなり低いのが現状だ。スギは、1kg成育させるために必要な餌の量がマグロと比べて5分の1程度に抑えられることから生産効率が高く、持続可能な水産に役立つという。試食したところ、クセがなくて食べやすい上に脂のノリもよく、ブリやカンパチに近いと感じた。

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くら寿司「琉球スギ」の生魚

くら寿司「琉球スギ」の生魚

 
くら寿司はこれまでにも、さまざまな理由から食べる機会の少ない「低利用魚」といわれる魚を商品化してきた。2020年11月には、駆除対象魚の「ニザダイ」を商品化。ニザダイは海藻を主食とし、漁獲減少の原因となるだけでなく、海藻が体内で発酵することによって身に特有のニオイがあることから、“海の厄介者”とされてきた。商品化のハードルとなったニオイを軽減するため、通常捨ててしまうキャベツの外葉を約1週間に渡って与えるといった工夫を施した。
 
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くら寿司が2020年11月に販売した「ニザダイ」育成の様子、臭みを消すためにキャベツを与えた

くら寿司が2020年11月に販売した「ニザダイ」育成の様子、臭みを消すためにキャベツを与えた

 
こういった低利用魚の商品化には、特殊な飼育方法や加工が必要になる場合が多いことや、レギュラー商品とは異なりスケールメリットを得にくいことから、仕入れコストは低くないように思える。そういった中で、なぜくら寿司は低利用魚の活用を注力するのか。
 
くら寿司の広報に話を伺うと、「魚食文化の魅力発信」や「漁業創生への強い思い」などがあるようだ。
 
〈魚食文化の魅力を発信〉
くら寿司は企業理念で、添加物を含まない素材そのものだった戦前の食生活を取り戻そうということを掲げている。食の欧米化によって魚食離れが進むなか、知られていない日本各地の美味しい魚を提供することで、日本の魚の魅力を発信していきたいという。
 
〈ビントロに続くようなネタに〉
今でこそ定番の寿司ネタの中には、回転寿司が発祥となったものもある。例えば「ビントロ」は、マグロの価格高騰などを背景に、代わりになるようなネタとして回転寿司業界がビンナガマグロの脂の乗った部分を使って開発したもの。同様に「サーモン」も回転寿司が最初に開発したことをきっかけに普及した。
 
くら寿司広報は「“次のビントロ”ではないですけれど・・・」と話す。もともと低利用魚だったものが認知・評価されれば、今後定番として普及するケースも出てきそうだ。
 
〈持続可能な漁業の発展へ〉
くら寿司は漁業創生のため、海洋資源の保護や漁業活性化に向けたさまざまな取り組みを実施している。2015年から定置網でとれた魚をすべて買い取る「一船買い」を行っている。通常だと市場に卸すことができずに廃棄となってしまう魚や幼魚も含めて買い取ることで、漁師の収入安定にもつながっている。
 
定置網でとれた魚を全てを買い取るということだが、さすがに活用できなかった魚もいるのではと思い尋ねたところ、そういったケースは今まで無く、全てを活用してきたという。
 
取れた魚はまず寿司ネタにする。寿司ネタにはできない中落ちなどを海鮮丼やコロッケにして活用する。それでも残る40%のアラや骨は砕いて魚粉にし、その魚粉で育った魚を「循環フィッシュ」として販売する。幼魚が取れた場合は、寿司ネタにできる大きさまで育成するなど、余すことなくフル活用している。
 
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今回の「琉球スギ」は少ない餌で養殖できることから、海にも優しく持続可能な水産にもつながるという。くら寿司の注文タッチパネルで、聞いたことのないネタを見つけた際には、試してみてはいかがだろうか。新たな発見があるかもしれない。