【冷凍パン特集①】焼成後冷凍パン伸長 用途に合わせ発酵種使い分け/山崎製パン

山崎製パン 焼成後冷凍「プチリュスティック(プレーン)」
〈焼成済み市場の拡大が継続、パン生地の巻き返し注目〉
冷凍パン市場の大部分を占めている、パン生地の需要が伸び悩む一方で、人手不足の深刻化を背景に、焼成済み冷凍パンの需要が伸びている。16年の焼成済み市場は前年比2桁弱の伸び、17年も引き続き拡大している模様だ。喫茶チェーンやホテル・レストランのほか、リテールベーカリーでも職人不足から、一部商品を焼成済みに置き換える動きが進んでいる。バルなど洋風居酒屋で食材として使用するパンとしても手間のかからない焼成済みが適している。一方で生産・物流効率は生地の方が圧倒的に有利。巻き返しの一手も注目されるところだ。

〈ベーカリー向け冷凍生地の品質見直しに取り組む/山崎製パン〉
山崎製パンの冷凍パン生地事業の今期の動きは、堅調に推移している。構成比の大きいベーカリー向けの冷凍生地の販売は微増にとどまったが、規模はまだ小さいながらも宅配事業向けなど新たな販売先が広かった。これにより、以前は外販向けが3割だったが、現在は自社業態向けと外販向けが総体的に伸びる形で、外販向けが4割を占めるようになった。

伸び率が大きいのは、焼成後冷凍パン。解凍するだけで良いという点にカフェやレストラン、宅配事業を中心に関心を集めている。また、同社の焼成済みは、用途に応じて発酵種を使い分けるなど品質面のこだわりを強みとする。「以前は1種類の発酵種のみを使っていたが、今は目的に応じていくつかの発酵種を合わせ、比率や作り方も変えている。昔は、冷凍生地は風味がないなどと言われていたが、ずいぶん変わったと評価されている」。

約500個のラインナップの中でも、ピザ・タルトは前年比40%増と伸長している。ピザは一昨年、神戸の冷凍生地工場に専用ラインを設置。「3年程前からピザを本格的にやり始め、これを切り口に新しい販売先が広がっている。しかし伸びはいつまでも続かない。新しい切り口を考えないといけない」とする。ヒット商品の「塩バターパン」は、ピーク時と比較すると落ち着きを見せているが、定番化を果たした。

今年から、主力品の品質強化を図っている。「現在は焼成済冷凍パンや、ピザ、タルトの伸びが大きいが、その一方で、幹が太いベーカリー向けの冷凍生地の動きが鈍化している。このため、冷凍生地で美味しさを第一に見直しを図っている。来年から数字に反映されていくだろう」とする。具体的には、焼成済冷凍で培ったノウハウを冷凍生地にも応用する。「焼成済冷凍は、じっくり時間をかけて発酵させ、用途に応じて発酵種の比率、作り方を変えることで自然な美味しさが楽しめる。一方冷凍生地は、時間をかけると生地がダメージを受けてしまったり、冷凍条件では酵母の耐久性が落ちてしまったりと、様々なハードルがある。しかし、焼成済の技術を応用することで、じっくり発酵させた自然な味わいが出せる冷凍生地を作りたい」。

今後の施策としては「まずは焼成後をしっかり伸ばしていく。その後、焼成済の技術を冷凍生地に応用し、ベーカリーなど構成比の大きい部分の勢いを伸ばしていきたい」としている。

〈冷食日報2017年12月19日付より〉

 

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