スーパーで強まる惣菜販売 冷凍食品にも波及、各社PBに注力

CM効果もあり利用が広がるイオン「まいにち夜市」
共働き世帯や1人暮らし世帯の増加などを背景に、冷凍食品の需要が増加傾向にある。大手スーパー各社でも販売に力を入れており、最近では惣菜と一緒に冷凍食品が売れるなど顧客単価のアップにもなっているという。ドラッグストアやネット通販などの異業種でも冷凍食品や生鮮食品などの販売を強めているが、冷凍食品の購入先としてスーパーは依然支持が厚い。最近では各社プライベートブランド(PB)商品に注力しつつある。

〈惣菜が伸ばす客足〉
帰路につく人の姿が徐々に増える午後6時。駅からのアクセスも良いスーパーの「イオンスタイル東神奈川」(横浜市神奈川区)では、帰宅途中のビジネスマンが店内へと吸い込まれてゆく。入口を抜けてすぐにある青果コーナーの人を見ると人はまばらだが、少し奥まった場所にあるデリカコーナーに移ると、多くの人がひしめき合っている。商品は唐揚げやトンカツ、手巻き寿司、中にはいも餅など幅広い惣菜が並び、パックに詰められた商品を手に取る人や、トングを片手に揚げ物をトレーに詰める姿があった。

同時に、買い物客のショッピングカートを見ると、惣菜とともに多くの冷凍食品が詰められている。冷凍食品の売場スペースも広く、PB専用の棚も設けられていた。売場を見渡すと、仕事帰りと思しき人たちがパスタや炒飯などを買い込んでいた。

イオンでは毎日午後6時から午後8時まで「まいにち夜市」と銘打ち、夜間の惣菜販売に力を入れている。値ごろ感のある価格で、食卓にプラス1品に最適な商品を豊富に取りそろえて、帰宅前の人たちに提案している。コアターゲットは働く女性。テレビコマーシャルや会員向けのクーポンを配信するなどし、着実に売り上げを伸ばしている。イオンの広報担当者は「アプリの会員数はまだ少ないが、クーポンを配信することで顧客単価が約2倍になった。客足も伸びつつある」と話す。

期間内なら何度でも使える「まいにち夜市」のアプリ会員限定クーポン

期間内なら何度でも使える「まいにち夜市」のアプリ会員限定クーポン

まいにち夜市の効果は冷凍食品にも波及し、売上が伸長。まいにち夜市のCMでも冷食の提案を行っている。冷凍パスタや餃子などの定番の商品に加え、今年は野菜の価格高騰の影響で、「PB商品のミックス野菜など冷凍野菜も好調だった」(広報担当者)という。

スーパーでは、惣菜販売でさまざまな施策を打ち出して来店客の確保に努めている。中でもできたての惣菜や、魚を対面でさばいて販売するなど、ライブ感にこだわった施策もある。生鮮品の売上が前年並みか下回る水準となる中、顧客単価や客足の回復に貢献しているという。セブン&アイホールディングス(セブンHD)でも食品に注力した新型店をオープンさせるなどし、収益の改善につなげている。店舗の構造改革に注力しており、2017年度からは食品強化モデル店を出店するなどして食品販売の強化を図っている。ライフコーポレーション(ライフ)でも食品販売に注力した店舗で支持獲得を目指しているほか、中国地方での支持が厚いイズミでも、季節感を打ち出した商品陳列などの取り組みに力を注いでいる。

〈中食需要とともに広がる冷食〉
中食需要が高まる中、冷凍食品も消費者の支持を集めている。ライフでも売上が伸長し、全店の売上が前年比6.7%の増加、平和堂では同4.1%増加するなど、販売が拡大している。北海道を中心に事業を展開するアークスでも冷凍食品に力を入れており、最近では改装や新規出店の際に販売スペースを広げるなどの取り組みを進めている。

売上増加の背景にはライフスタイルの変化がある。アークスの担当者によると「もともと冷凍食品は簡便性の高さから支持されていた。最近は働く人がとりあえず買って、後で食べるといった使い方も目立つ」とのことだ。市場調査などを手掛けるソフトブレーン・フィールド(木名瀬博社長、東京都港区)が冷食を食べている20~60代男女2,686人にアンケート調査を行ったところ、57.7%の人が冷凍食品を食べるタイミングを「夕食」と答えた。冷食を利用する理由については、多くの人が「調理の手軽さ」(44.6%)や「もう一品追加したい時」(34.8%)と答えた。購入場所としては、「スーパー」が89.2%と圧倒的に多く、「ドラッグストア」(12.8%)、「生協などの宅配」(8.7%)と続いた。

冷食の購入先は圧倒的にスーパーが多く、ネット販売は今のところ少ない。(ソフトブレーン・フィールド社調べ「冷凍食品の購入場所」)

冷食の購入先は圧倒的にスーパーが多く、ネット販売は今のところ少ない。(ソフトブレーン・フィールド社調べ「冷凍食品の購入場所」)

最近では、PB製品も支持されている。セブンHDでは、コンビニを含めたPBの冷凍食品の売上が10年前と比べて5倍以上となっている。平和堂でもPB製品の売上が伸長しており「価格でのメリットと、品質を両立させやすい。その点が支持されているのでは」(平和堂担当者)と話す。

また、ナショナルブランド以上にPBの提案を強める傾向もある。「自社にしかない商品かつ質と値段を両立させやすい」(業界関係者)ため、各社は自社の魅力を引き出した商品提案を行っている。セブンHD はイトーヨーカドーで新ブランド「EASE UP(イーズアップ)」を9月から本格的にスタート。「簡単・便利」をコンセプトに、本格的な主菜をレンジや湯せんなどの簡単調理で用意できるようにした。イオングループのユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスは昨年10月にPB「eatime(イータイム)を立ち上げた。その他のメーカーでも新商品投入に注力している。スーパー各社が惣菜販売に取り組む中で、新PBの立ち上げなどの広がりを見せる冷凍食品。今後の展開に注目が集まる。

選ぶ楽しさや簡単調理が特長、イトーヨーカドーの新ブランド「EASE UP(イーズアップ)」

選ぶ楽しさや簡単調理が特長、イトーヨーカドーの新ブランド「EASE UP(イーズアップ)」

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〈冷食日報 2018年10月25日付より〉