子どもの出生数が減少する中、ベビーフード市場は安定した需要をつかみ、増加傾向で推移している。背景にあるのは、子ども1人当たりの使用頻度・使用量の増加だ。

共働き世帯の増加で、利便性や簡便性に優れた市販品を、赤ちゃんのための便利なツールとして、積極的に活用したいと考える親が増えている。ベビーフ―ドを食べる子どもが年々減少しているにも関わらず、市場は微増で拡大を続けており、なかでも勢いよく善戦しているのが、高月齢(生後9ヵ月頃から)や1歳以降を対象とした幼児食だ。離乳完了期がかつてより緩やかになったことで、商品数・販売実績ともに拡大し、成長性のある分野として、各社の商品投入も相次いでいる。

ベビーフードを製造する主要メーカー6社(アサヒグループ食品、キユーピー、ピジョン、森永乳業、雪印ビーンスターク、アイクレオ)が加盟する日本ベビーフード協議会の発表によると、17年のベビー加工食品生産統計(出荷ベース)は、金額ベースで前年比2.7%増の408億円、重量ベースで2.4%減の3.6万tとなった。金額は増加したものの重量が減少した要因は夏場、雨天が多く気温が上がらなかったため、重量ベースでボリュームの大きい飲料が落ち込んだことが響いた。またおやつは、菓子メーカーなど協議会に加盟するメーカー以外の商品が増えていると見られ、重量・金額ともに減少につながった。

一方、金額ベースでボリュームの大きいフードは、重量・金額とも2ケタ近い伸びで着地し、主食からおかず、素材、デザート、詰め合わせと全カテゴリーが伸長した。 今年に入ってからも各社の販売実績は好調だ。業界トップのアサヒグループ食品はフード、飲料、おやつと全カテゴリーが伸長している。猛暑で飲料が大きく伸びたことから取り扱うピジョンや雪印ビーンスタークの2企業も伸長した。また1歳以降を対象とした幼児食カテゴリーも伸びており、森永乳業、アイクレオといった企業も2ケタ伸長で推移している。唯一、前年を割れる実績で推移するキユーピーも利便性から100gがレトルトパウチやカップ容器に移行した瓶詰を除き、おおむね堅調に推移中だ。
17年ベビーフード生産統計

ベビーフ―ドの生産金額の拡大は近年顕著に進んでおり、13年以降、毎年拡大を続けている。出生数が漸減傾向にある中、相反する伸長率で拡大を続けており、その背景にあるのが子ども1人当たりの使用頻度・使用量の増加だ。働く女性の増加で共働き世帯が増える中、利便性や簡便性に優れた市販品を、赤ちゃんを育てる上での便利なツールとして、積極的に活用したいと考える親が増えている。また子育て環境や考え方の変化から赤ちゃんを連れて外出する親も増えていると見られ外出需要をつかむ、1食で完結できる主食タイプやご飯メニューとおかずの詰合は、引き続き安定した需要が見込めるカテゴリーだ。家庭で調理の難しい魚やレバー、野菜を積極的に使ったアイテムも需要をつかんでいる。
 
〈働く女性の早期復職が市場拡大を後押し、男性の育休取得も影響〉
近年の市場拡大には、働く母親の1年未満での早期復職が拡大していることも要因にあるとメーカー各社は分析する。「ボリュームとして一番大きいのは依然として、1年間の育児休業の取得だが、半年程度で復職する母親が年々、増加傾向にあるようだ。男性の育児休業の取得が増えていることも母親の早期復職を後押ししている」(アサヒグループ食品担当者)。こうした傾向は数字にも表れており、育児用ミルクも製造する雪印ビーンスタークが昨年実施したアンケート調査では、約4割の母親が「子どもが6カ月になるまでに復職した」と回答しており、復職してから家事で一番大変なことに6割が「食事」を挙げ、ベビーフ―ドの市場拡大を裏付ける結果となった。

ベビーフード生産金額と出生数の推移

拡大傾向で推移する市場の中でも勢いよく善戦しているのが、高月齢向けのアイテムや1歳以降を対象とした幼児食だ。07年に改定された「授乳・離乳の支援ガイド」以降、離乳完了期がかつてより緩やかになったことで、商品数・販売実績ともに拡大し、伸びしろの大きい分野として、各社の商品投入も相次いでいる。厚労省が10年に1度実施している「乳幼児栄養調査」でも15年の調査結果では10年前と比較し、離乳食完了月齢のトップが「12カ月」から「1歳1カ月から1歳3カ月」へと変化しており、商品構成比でも高月齢・1歳以降の比率が今後も高まる様相だ。各社の今期新商品では、高月齢以降を狙った容量アップや商品拡充が進んだ。
 
〈1歳以降の商品に“シリアル”登場〉
幼児食を投入する各社商品はいずれも好調に推移しており、飲料カテゴリーで引き続き需要をつかんでいるのが、15年に上市した森永乳業のストロー付きパウチ入りゼリー飲料「フルーツでおいしいやさいジュレ」だ。「野菜」「幼児食」「外出時」の3つトレンドを組み込み、新需要を創出したことがヒットにつながっており18年上期販売実績は前年同期比で2ケタ増、新商品の水分補給目的の「うるジュレ」もプラスオンとなった。こうした背景も受け、新たな需要創出を狙い、アサヒグループ食品が今春投入したのが、1歳からの幼児食向けでは業界初となる「はじめてのシリアル」だ。忙しい朝に最適なアイテムとして需要をつかみ想定を上回って推移している。

各社のベビーフードは好調に推移

各社のベビーフードは好調に推移

厚労省が6月に発表した17年に生まれた子どもの数(出生数)は前年よりも3万人余り少ない94万6060人となり、過去最少を更新し、2年連続で100万人を割り込んだ。出産適齢期の女性人口も減少しており、出生数の拡大は今後も見込めない。
 
こうした中、今後も安定した市場確保に向け、各社はホームページやSNSなどを活用し拡販に取り組む。初めての離乳食に戸惑う母親は多く、またインターネットやSNSの普及で情報過多に悩む母親も多いため、店頭で商品紹介や利用方法を案内する栄養士活動の実施やリーフレットの配布などを行い、初期ニーズを確実につかみ伸長する高月齢、幼児食へとつなげていくという。ニーズに沿った商品改廃を進めることも、限られたパイの奪い合いに不可欠となる。
 
〈食品産業新聞 2018年11月1日付より〉