〈冷食流通インタビュー・大手卸〉三菱食品・横浜金沢低温DCを稼働、首都圏のフローズン物流基盤強化

「からだシフト」の糖質コントロールシリーズから、初の冷凍食品8品を発売(写真は「3種の海苔巻きおにぎり」)
〈三菱食品取締役常務執行役員低温事業本部長兼デリカ・フードサービス管掌・小野瀬卓氏〉
――足元の業績と市場概況について

第3四半期までの低温食品事業の業績は、コンビニエンスストア(CVS)、ドラッグストア(DgS)などとの取引が堅調に推移したことや、市販用・業務用冷食が好調で売上高は5.0%増8,085億3,800万円と好調だった。しかしながら物流コスト増の影響が大きく営業利益は9.7%減75億4,600万円と増収減益である。

業務用市場は企業によって差があるものの、では働き方改革で帰宅時間が早まるなどの影響もあり、特に居酒屋業態が苦戦気味だ。また、量販店様向け市販用冷食の売上が前期までの伸長に比べると11月ごろから失速し、微増で推移している。

一方、収益面で言えば、低温食品は物流費の負担が重く、特に冷凍に比べて日配は配送頻度が多いために厳しい状況だ。取引先様とは配送ルート・頻度など物流与件を見直し、効率化努力を行っているが、どうしても物流費アップの吸収が後追いとなってしまう。

尚、メーカー様各社が製品値上げを発表しているが、人件費・物流費・原材料費等の上昇を考えると、正当な裏付けのある値上げは業界全体のために必要であり、中長期的な視点に立ち、製配販3層が一致団結して実現に努めるべきだと思う。

――低温食品事業での最近の取り組みについて

DgSやCVSでフローズンの販売が伸びている。CVSは意欲的なPB商品を次々と投入し、売場を積極的に拡大していて、フローズンの売場として今後、一層存在感が高まるだろう。今後の需要拡大を見越して、昨年秋、横浜市金沢区にフローズン専用の横浜金沢低温DCを自社物件として稼働させた。首都圏のフローズン物流基盤強化には引き続き取り組む。

デリカは店舗バックヤードの人手不足がますます深刻なため、店舗での調理作業をセントラルキッチン(CK)加工に切り替える流れが顕著だ。それに伴い、我々は原材料に近い商材を得意先様に提案・提供することが重要になってきた。更にメーカー様から原料納入の要望を戴く事が多いため、今年4月の新体制では、原材料の取扱を強化拡充する事を狙い、原材料を専門的に扱ってきた複数の部署を一つに集約し、「原料資材グループ」を発足する。

フードサービスでは昨年4月、リクエ事業を当社100%子会社の都貿易に統合移管し、「株式会社クロコ」と商号を変え、業務用酒類・食材の専門販社を設立した。只、リクエ専用物流センターにはキャパシティの問題があったため、新規得意先の開拓を控え目にせざるを得なかったが、昨年9月に千葉・舞浜に第二物流センターを稼働させ、今後この事業を更に拡大する体制が整った。リクエは現在、首都圏に特化した事業だが、システム面で独自の優れた機能を数多く開発しており、今後は他主要エリアに於いて、地場の業務用卸様にリクエの機能を活用戴く形で業務提携を進める。

――商品開発事業の取り組みについて

低温に限らず全社的な取組みとして、商品開発事業を強化している。低温でも昨年10月にチルドデザートの「&“me time”(アンドミータイム)」、12月にデリカ・冷食両売場に対応する「FROZEN DINING」」と新ブランド商品を投入し、想定以上に順調に推移している。また、輸入品ではフランス産の高品質な冷凍タルト・ケーキ「pomone(ポモーン)」を同じく昨年から提案・販売中で、確かな手応えを感じている処だ。今年2月25日には、これまで常温で展開してきた健康ブランド「からだシフト」の糖質コントロールシリーズから、初の冷凍食品8品を発売する。更に九州や北海道などの地域性豊かな優れた逸品を冷凍食品化し、発売する予定である。

当社が先鞭となり、従来市場に無かった商品を冷凍食品売場に投入し、その商品が市場に定着・浸透する様であれば、大手メーカー様に本格的に手掛けて戴く事により、一層の市場拡大となれば嬉しい限りだ。

三菱食品・小野瀬低温事業本部長

三菱食品・小野瀬低温事業本部長

〈冷食日報 2019年2月18日付〉