ニチレイが海外展開を加速、新しいビジネスモデル構築へ 「冷食に新しい価値を吹き込む」

ニチレイ大櫛社長(左)、ニチレイフーズ竹永社長(右)
ニチレイ大櫛顕也社長とニチレイフーズ竹永雅彦社長の、4月2日に開かれた記者会見の主な質疑応答は次の通り。

――2年前ニチレイフーズ社長に就任した時に掲げた、利益率10%の将来目標について

大櫛社長:日本の食品企業の収益率は低く、社会に貢献していくために、10%を狙わなければ事業構造は変わらないと考えて目標に掲げた。現状、冷凍食品市場は堅調に推移しているが、想定以上にいろいろなリスクが拡大している。人手不足、原材料確保も気候変動による障害が出ている。今は「点」で対処しているところだが、毎回足を引っ張られる状況がある。会社として仕組みを作ることで対処できるかと思う。

竹永社長:10%は目指したい。ただ足元は原材料高騰など様々なマイナスがあり、生産性向上や販売量の増加などで打ち消しながら成長しなければならない。新しい価値を冷凍食品に吹き込んで、色々なお客様を取り込んでいきたい。0.1%ずつの努力となるが利益率は上げたい。

――今年度からの中計での事業展開は

大櫛社長:海外展開を加速したいというのが一つ。低温物流は欧州、アジアでも展開しているが、加工食品をはじめ国内がメーンとなっている。地域は広げていきたい。国内は収益基盤を固めていき、トップラインは海外に求めたい。収益構造の違う新しい事業を見つけていかなければならない。それを担うチームを組織編成した。新しビジネスモデルを見つけていきたい。先ごろインドへの投資を行った。私たちが持っていないビジネスモデルにトライしたいと考えたからだ。“アジャイル”というべきか、相当スピード上げて、リスクにかかわらず将来性があるものにはトライして検証していきたい。

竹永社長:力強いカテゴリー推進と新規需要創造の2本柱は継続して強くしたい。力強いカテゴリーの部分では家庭用では「特から」「本格炒め炒飯」、業務用ではハンバーグ、春巻はまだまだ伸びる。手を緩めず開発・生産とすべての機能を注ぎ、ナンバー1カテゴリーとしてさらに引き上げたい。

新規需要創造では新たな素材系商品を広げようとしている。いろいろな工夫が必要だが、今まで冷食を買わなかったお客様も取り込める可能性がある。

――海外展開の方向性について

大櫛社長:海外事業は当初計画より若干遅れているが、冷凍食品と物流事業で進めたい。低温物流は欧州を中心にアセアン、中国で展開している。(アジアでも)生活スタイルが変わってきているので低温物流には期待ができる。ニチレイロジグループが日本で培ったノウハウを生かしながら事業拡大できる。

食品では日本食を海外マーケットに売るスタイルで過去に取り組んだが、食文化という保守的な面とそぐわない。「現地で作って、現地で売る」という中に、私たちの知見や技術を組み込みたいというスタンスだ。

アメリカは成熟市場だが、特にアジアンフーズは冷食のカテゴリーで一番伸びている。まだまだ成長余地があると見込んで、今回アメリカで投資を決めた。アメリカ関連会社のイノバジアン・クイジーン社も米飯とチキンが柱だが、アジアンフードはアペタイザーとヌードルが大きな市場だ。カテゴリー拡充を進めていく。

中国マーケットも変わってきている。商品価格は日本に引けを取らず、日本より高い商品も出回っている。必ずしも生産拠点を保有する必要はない。他人資本を使いながらスピード感のある展開をしたい。
 
――新しい事業モデルの創出について

大櫛社長:社外に出てビジネスの種を見つけてくる専門チームと、自社内にあるシーズをベースにしたプロジェクトの仕組みがある。後者は従来からあったが、各事業会社のチームを編成し直し、ホールディングス主体に運営する。
 
――グループ総合力発揮の具体策について

 
大櫛社長
:グループ人材は基本的に各社に固定している。分社化で自立を進めた弊害として人事の硬直化、横のつながりが希薄化した面があった。ここ数年、試していることだが、低温物流とフレッシュとフーズの間で相互人材交流をしていきたい。設備も各社が投資して保有しているが、それをヨコに有効活用したい。人材交流を始めたことで初めて、現場からそういう話が出てきた。技術や研究分野も同様だ。

顧客も事業会社間で重複している部分がある。ニチレイとして一本化した方が、お客様にもわかりやすいし、色々な提案ができる。そうした取り組みも始めているところだ。

〈冷食日報 2019年4月4日付〉