フジ産業、セントラルキッチン操業1年で日産4,500食に、人手不足やコロナ下の緊急事態対応にも有効

フジ産業・久田社長
給食事業者のフジ産業は、高齢者施設向け完全調理済み食材「クックパック」の販売を強化している。新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の影響で安全・安心に配慮された食品の需要が高まっている。

セントラルキッチンで調理された冷凍の調理済み食材は、調理時に菌を死滅させ、調理後は人を介さないため安全性が高い。厳しい人手不足とコロナ禍により、福祉施設や医療施設におけるセントラルキッチンシステムの導入に拍車がかかる可能性がある。フジ産業の久田和紀社長に話を伺った。

――「クックパック」の取扱いの経緯は

業界は慢性的に人手不足である。働き方改革をいくら進めても、事業所では常に欠員が続いており、何かあれば本社社員が事業所のヘルプに入っている。このように常に欠員と戦っているようでは、成長はできない。

介護福祉の事業所では365日休みがなく、朝・昼・夕・おやつを提供する。特に朝食はなかなかパート従業員も集まらない。朝7時に食事を出そうと思ったら、4時か5時に出勤しなくてはいけないからだ。そのような場所で働く人は少ない。

施設によっては、働いている方が利用者よりも年上のところもある。それではいずれ事故が起こるだろうし、長続きしないので、セントラルキッチン方式や完全調理済み食材の導入を進めなくてはいけないと考えた。これは業界の共通意見ではないだろうか。

かねて完全調理済み食材の導入を検討していたが、ただ完全調理済み食材を仕入れて導入するのでは意味がない。提供の仕組みを模索する中でフーヅリンクさんと出会い、2019年3月に包括的な提携を開始した。

――「クックパック」の魅力は

メニューがきちんと作られており、種類も豊富。1食から、あるいは1品から発注できて、温めればおいしい食事が出せて簡便性が高い。それにAIHOのリヒートクッカーを組み合わせると、前日の夕方にセットすれば朝には温まっていて、朝早く来ないでもおいしい食事が提供できる。また昼も夕も、空いている時間にセットすれば業務が平準化できる。

※AIHO=愛知県にある業務用厨房機器メーカー

現地調理によるパートの奪い合いは生産性が低く効率が悪い。「クックパック」はそのような現状を解決する、この人手不足の時代を救うソリューションだ。フーヅリンクさんが開発した仕組みに我々、給食会社が持つ知見を組み合わせて、付加価値を付けた物販の提案や受託含めた提案など、お客様のソリューションになる提案を行いたい。

――コロナ禍でより安全・安心が注目されている

給食会社として、常日頃から安全・安心な食事の提供に細心の注意を払っており、コロナ禍で重要視されている手洗いや検温だが、我々はこれまでも習慣としてずっとやってきていた。

「クックパック」では食材を袋に入れた状態で真空調理を行う。菌を死滅させた上で食材が人の手を介さないで提供されるので、現場調理よりも安全性が高い。

コロナ感染で、陽性者が出ると全員入れ替えて作業する事態もありうる。「クックパック」を各拠点に備蓄していれば、そこから持ってきて温めるだけだ。

安全・安心な商品設計も、緊急事態での対応も、世の中のニーズに合っていると考える。

――福祉、医療施設のお客に伝えたいことは

まず食べて欲しい。当社の現場経験豊富な調理師が丹精込めて作っており、改善点はあるが、おいしいと評判をいただいている。特に直営で食事を提供している施設では、給食会社同様、人手不足だと思う。

クックパックを活用すれば、調理技術が要らず、献立も豊富で、食数を選んでもらうだけ。管理栄養士の業務軽減も図られ、施設側の省力化・省人化にもつながる。

【フジ産業会社概要】
フジ産業は東京都港区に本社を構える給食会社で1968年に設立。受託先は社員食堂、学校・保育園、福祉・医療施設、寮・保育所と多岐にわたる。2014年3月に豊田通商グループに加わった。18年6月に久田氏が社長に就任、翌年3月にフーヅリンクと業務提携し「クックパック」の展開を開始した。製造拠点の三島R&Dセンターは同年9月リニューアルオープン後1年で製造食数が日産4,500食まで拡大。導入施設は、特別養護老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者施設・介護付き老人ホーム・介護老人保健施設・グループホーム・デイサービス・病院など40件以上。

〈冷食日報2020年9月2日付〉