ヤマザキ 袋物惣菜「もう一品」好調、グループ売上高300億円超を計画/山崎朝彦社長インタビュー

ヤマザキ・山崎社長
袋物惣菜(チルド包装惣菜)のNB「もう一品」シリーズで知られるヤマザキは、総合惣菜メーカーとして着々と業容を固め、前期の売上高もグループで前年比5%増284億円に達した。近年はフローズンやフローズンチルド商品も手掛けるなど、新たなカテゴリーにも積極的に取り組んでいる。足元ではコロナ禍の影響もある中、同社の現在地と今後について山崎朝彦社長に聞いた。

――20年2月期の業績と袋物惣菜の足元の状況

ヤマザキグループ合計の売上高は前年比5%増の284億円と増収だった。うち袋物惣菜(煮豆除く)の売上高は1億円増104億円となった。

今期(21年2月期)は、グループ売上高300億円超、袋物惣菜(チルド包装惣菜)9億円増113億円と高い目標を掲げ、それに向けた施策を実施している。エリア戦略では、比較的配荷率が低い西日本で配荷を拡大するため、重点的に販促を実施するとともに、関西でTVCMも放映開始した。

また、従来配送センターは厚木(神奈川県)に集約していたが、今年1月、西日本をカバーする大阪にも配置し、2拠点体制とした。これにより西日本へもより鮮度の高い商品を届けられるようになった。

さらにNB「もう一品」の「北海道男爵のポテトサラダ」は3月に中味をブラッシュアップするとともに、大容量タイプ「ファミリー」シリーズで20%増量品を投入し販促を強化、認知度向上を図った。

そうした施策を打つ中でコロナ禍がありこの3~5月、NB「もう一品」ブランドの売上は前年比120%を超える伸長となった。内訳は、主力の「いろどり」シリーズは惣菜が113%、サラダが108%で計111%、大容量タイプの「ファミリー」シリーズが増量品投入効果もあり146%、こだわり商品の「粋な献立」シリーズは商品によっては伸びたが棚の定番集中もあって3%増、主菜にもなる「リッチ」シリーズが「黒毛牛(アンガス種)の肉じゃが」「だしが自慢の筑前煮」など好調で14%増、「おかずの極み」シリーズは19%増となった。メニューとしては「ひじき煮」「さといも煮」「竹の子土佐煮」といった和惣菜と、「ポテトサラダ」「マカロニサラダ」といった定番メニューが好調だった。

もともと高い計画数に向けて施策を打っていたので、コロナ禍の影響のみで伸びたとは考えていないが、外出自粛初期から出荷は尻上がりで伸びた。巣ごもり消費により新規顧客が増加し、食べてみておいしいとリピーター獲得に繋がっている。

7月に再度「ファミリー」シリーズのポテトサラダの増量販促の実施とともに、9月の棚替え時期に、「いろどり」シリーズの「九州産さつまいも炊き」、「粋な献立」シリーズの「かぼちゃの煮物」「九州産さつまいもとレーズンのサラダ」の3品でパッケージに“旬発見”のワンポイントを入れ、売場で旬の素材を使っていることを訴求する。

当社でも袋物惣菜の売場を広げる活動をいろいろと行っているが、競合他社と売場を取り合うのではなく、全体の市場拡大に繋がってきている。

一方で業務用のデリカ、惣菜店、外食向けも拡大を計画していたが、こちらは苦戦している。その分を家庭用で取り返している状況だ。

いわゆる袋物惣菜のほかには、煮豆が非常に好調だ。理由ははっきりと分からないが、我々からすればおいしい煮豆製造に立ち返ったことが要因として挙げられる。従来は煮崩れしないようあえて少し硬めに炊き上げていた。しかし今年から、本来のやわらかく煮て美味しさを引き出す製法に変え、その製法の意図をきちんとお客様に伝えるよう工夫した。コロナ禍の影響もあるだろうが、そのことが伸長に繋がっているのではないかと考える。

〈業務用では高品質の冷凍ホワイトソースに着手フロチルグラタンでは配送スキーム構築進める〉
――業務用の取り組み

業務用はコロナ禍の影響を大きく受け厳しい市況ではあるが、それでも当社は少しずつ数字を伸ばしており、引き続き強化したいチャネルだ。個人的には、業務用でも大容量のバルク商品ばかりではなく、ラストワンマイル、デリバリー等に向け、当社NB品の袋物惣菜のような、小分けの商品も可能性があるのではないかと思っている。

もう1つ、業務用では冷凍のホワイトソースにも着手している。業務用市場ではハイレトルトの缶詰品質が主流だが、当社の調理の強みを活かし、ホット充填して冷凍したもので品質が高い。

人手不足の中、スチコンで解凍しチーズや具材をトッピングすれば簡単に外食品質のグラタン・ドリアを作ることができる。他社がやっていなくて、しかも調理性という価値を持つというマーケットは面白く、外食の回復も見据え虎視眈々と注力したい。

――フローズンチルド、フローズンの事業について

基本的にフローズンは大手CVS向けのグラタン、野菜惣菜を中心に取り組んでいる。NB商品では、フローズンチルドのグラタン類にこのところ地道に取り組んでいたものの、物流や営業のスキームを作れておらず単発の商売になっていた。

現在、一部地域をモデルエリアとして、卸様と組んで作ったものを預け、小売業に販売していくスキームを構築してきている。これをベースに、各エリアに配送網を広げていきたいと考えており、作ったものを流せるスキームができれば「NB」という考え方もできるようになるだろう。

また、冷凍野菜類ではたとえば、レンジ調理で袋の中で蒸される塩味付けしたそら豆のような商品に取り組んでいる。中国の提携先で日本の品種を改良した特殊な種を使い、青々しく香りも良くて競争力がある。あらゆるチャネルで売れるとは思うが、NBとして売ろうと思うと、デリバリーに難しさを感じている。

フローズンは売場が限られている中で、少しずつ売っていくようなカテゴリーの育成には向いていないと思う。そういう意味でも、現時点では強みを持つチルドをベースに、フローズンチルドの配送スキームを作り上げることを優先している。

――生産性向上・省力化の取り組みは

細かいところでは日々積み重ねている。日配惣菜では、稼働を昼間にシフトすることで省力化・生産性向上を図っている。袋物惣菜では、研究段階ではあるが、包装後の工程を自動化するよう、機械メーカー様と共同で取組みを進めているところだ。

――今後の課題は

袋物惣菜の伸びしろはまだまだあると考えており、それをどう活かすかだ。売場の陳列を増やせば伸びるが、どう増やすか確固たる手法を持っていない。今回のコロナ禍では期せずして伸びたが、その手法を確立したい。

一方で、今言ったことと矛盾するが、袋物惣菜の市場は天井に向かっており、ここまで0が100になったが、これが1000になるわけではない。そう考えると新しい商品を開発していかねばならない。おいしいというだけではなかなか消費者の手には届かず、前述のフローズン等もう少し力を入れ、商売・物流といったビジネススキームを組み立てていく必要がある。

川上では、よりおいしいものを安定的に作る力を充実させること、川下では販売チャネルのさらなる拡大や、フローズンも含め、よりカテゴリーを充実させることが課題となってくる。

具体的に、チャネル拡大の面では9月から、新たな取り組みとして新商品「ねばねば真昆布」を鮮魚売場向けに発売し、従来の日配売場からの拡大を図る。同品はグループ会社、北海シーウィード(北海道福島町)の昆布のねばねばを活かすため、殺菌を施さないフローズンチルド商品として発売する。

〈冷食日報2020年9月9日付〉