〈ビール類、1~9月で唯1社プラス、予算達成へ向けラストスパート〉

――ビール類市場の環境変化をどうみますか。

夏の最盛期の天候不順と、ここにきての大型台風の連続上陸、これはいかんともしがたい。6月の取引基準の見直しとダブルパンチで想定以上に響いた。一番打撃になったのはビール類だが、RTD もそうだ。価格コンシャスの領域が一割近く価格が上がると影響が大きい。

その後の市場は、高価格帯から低価格帯にシフトしたというよりも、低価格ゾーン全体がそのまま沈んだ。GMS、SM では、特売・販促の取り組みが減り、チラシ掲載回数は2割ほど少なくなっている。その結果、買上げの頻度と点数がダウンし、総数が減っている。

一方で、ホームセンターやドラッグストアでは、相対的に値上げの幅が小さかったことから、明らかに消費がシフトしている。こういった価格差にお客様は敏感に反応した。もちろん、その分を加えても、明らかに総数は減っている。他方で、ケース買いから6缶パックあるいはバラといった具合に、購入が小ロット化している。1回当たりの購入総数が減っており、これは一周するまでは数字の減としてでてくるだろう。つまり、現在、買い場がシフトし、購入ユニットが小ロット化するという大きな変化を迎えている。

――ビール類以外はいかがですか。

酒類の過半を占めるビール類がそういう状況であり、他の種類も厳しいところが出ている。RTD はこれまでの伸びが鈍化し始めており、2ケタ近い伸びから1ケタ台半ばといったところになってきた。

一方で、ウイスキー類はハイボール人気で、むしろ好調をキープしている。ハイボール缶は128%だ。「角ハイボール缶」が、6月の酒税法改正以降も好調を持続している理由だが、まずは、もともと特売比率が低く、ある程度の売価で販売されていたので、今回の上げ幅も高くなかった。つぎに、ハイボールという飲み物が、食事と一緒に楽しむお酒として、まだまだ広がりがあるということ。飲食店で飲んでおいしく、その体験から食卓での定番化が進んでいる。限られた層が飲む量を増やしているとは考えにくく、これだけ伸びているのは飲用シーンがヨコに広がっているということだ。

そして最終的には味わいだと思う。ハイボールを家庭でおいしくつくるのは意外に簡単ではない。外食でのおいしさを家庭で気軽に再現できるのが「角ハイボール缶」だ。

――ビール類主力商品はいかがですか。

1~9月で「ザ・プレミアム・モルツ」は102%と、市場のマイナスを大きく上回っている。3月にリバイタライズして、お客様のトライアル、またリマインドを獲得できている。樽生・缶ともほぼ同じ伸びだ。「同 〈香るエール〉」も業務用を中心に広がっている。飲食店での取り組みとしては、単に生ビールとしてではなく“「ザ・プレミアム・モルツ」を飲んだ"というブランド認知の向上を図っており、それが家庭用の缶につながる活動を重視している。ただし、6月の酒税法改正の影響は、このプライスラインでも大きく影響したことは否めない事実だ。伸び率で言えば若干物足りない。

「金麦」は前年並み。後述する「頂〈いただき〉」とのカニバリも若干あるが「金麦 〈糖質75%オフ〉」はロング缶も好調で大きく伸ばしている。「金麦」はいたずらに派生商品を極力出さずに、本体の定番化が大きな方針だ。

次に、当社が7月に発売した新ジャンル「頂」は、好調だ。これは各流通が販促行動をぐっと絞ってくるタイミングに唯一、新製品という形で上市し、7%という高いアルコール度が好評となった。この分野での当社の技術的完成度は高い。味わい的にも満足できるものだ。ただし、現在の市場では、新製品が一巡して定着することは容易なことではない。この年末年始もきちっと間口を拡大してブランドを強化していく。

酒類のなかでも効率的に酔えるアルコール度の高いものは売れている。お酒の消費は全体的に沈んでいるとはいえ、お客様は経済合理性をしっかり考えて購入しているということだ。ハイボール缶も9%のものが売れている。高アルコールのニーズがあることは間違いない。

――ビールのリターナブル容器の値上げは。

物流環境などから、業務用リターナブル容器の採算が苦しいのはどの社も同じだろう。当然、検討はしなければならないと認識している。

――その他のカテゴリーは。

RTD 計は111%。内訳は「-196℃」などが108%、ハイボール缶が128%。

ウイスキー計は瓶だけで105%。缶を入れた換算で「角瓶」107%、「トリス」119%、「ジムビーム」115%。グレーンウイスキーの「知多」も飲食店を中心に定着してきた。特に出汁などの和食文化と合うことから、和食割烹などでの採用が広がっている。

「メーカーズマーク」も今年緒につけたので、来年攻勢をかける。「ジムビーム」と併せてバーボンの領域拡大を図っていく。ハイボール缶が好調なのは、やはりオリジンとしてのウイスキーのイメージが確立しているからこそ。

ただし、若い方にはハイボール缶からウイスキーへ、という流れがあるのも事実で、瓶と缶、どっちかということではなく、両サイドからマーケティングをさらに強化していきたい。

ワインはサントリーワインインターナショナル社単体で、国産112%・輸入98%の計106%。特に国産がいい。市場は、低価格の方で量的拡大があるのは事実で、「デリカメゾン」「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」が高い伸びを示している。

――年末に向けての方針は。

年末だからと言って、「ザ・プレミアム・モルツ」やあるいはスパークリングワインと、特定の商品にのみ集中してやっていると、足をすくわれる可能性がある。ここは景気動向も鑑みつつ、「ハイボール缶」や「金麦」にもしっかりと注力する。

年末年始の食卓のトレンドも、かつてのご馳走やおせち料理といったものだけではない。均質化がすすむなかで、お酒だけ特別なものに変わるのかというとそうではない。

最後に、ビール類は1~9月で唯一社、前年比プラスだ。着実に予算を必達する考えだ。

【プロフィール】まつおか・いちえ=1960年4月1日生、岡山県出身、83年早稲田大学政治経済学部卒、同年サントリー入社、98年首都圏営業本部企画課長、2003年ワイン&スピリッツカンパニー営業部部長、05年ビール事業部プレミアム戦略部長、10年サントリービール執行役員ビール事業部副事業部長、14年サントリービア&スピリッツ首都圏営業本部副本部長、15年サントリー酒類執行役員中国・四国支社長、17年4月サントリー酒類常務執行役員営業推進本部長。

〈酒類飲料日報2017年11月9日付より〉

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