2017年12月10日付の読売新聞で山口県の旭酒造が同社の日本酒「獺祭」について、同社の社長である桜井一宏氏の名前で「お願いです。高く買わないでください」という文面を大きく打ち出した全面広告を掲載し話題を呼んだ。ちなみに当社が採用しているPOS データによれば、11月の「清酒」カテゴリー内で同社の「獺祭50」(720ml/1,539円)の順位は49位、平均価格は2,655円と、定価よりも平均1,116円高価に販売されているというデータがある。

日本酒のそういった「プレミア価格」がつくような商品は概してデリケートなものが多く、儲けだけを考えた業者が何も考えずに流通させてしまえば間違いなく品質は劣化する。「要冷蔵」の商品にもかかわらず、最も人通りの多い、蛍光灯に煌々と照らされた常温の売場に陳列される事も多い。ここ2~3年の間でそのように販売されている「獺祭」が増えたように思える。(どのようなルートかはわからないが)特に某大手量販店への供給が盛んになってからはその傾向は顕著だ。

日本酒をよく知る消費者はそういったところで買うことが少ないと思われるが、日本酒に対して知識が少ない、又はまっさらな人たちが日本酒に興味を持ち、挑戦するつもりで買ったものの「テレビでも雑誌でも報じられている有名な銘柄で、あんなに高いお金を出したのに」と、購入した日本酒に対して「期待外れ」という印象を抱いてしまい、結果として日本酒から離れて行ってしまうことも想像に難くない。また、知識がある人からすれば「あんな乱雑な管理を行う売場に陳列される商品になってしまったのか」と思われることもあるだろう。そのため、こだわりがある酒造メーカーは販売を開始する前に酒販店の代表者と面談をし、設備を確認してから商品の供給を始める。何かしらブランドを棄損することがあれば一発で取引停止を通告するメーカーもある。

今回の広告を振り返ると「高い値付けをされた商品を買わないでほしい」というよりも、その文言の下に正規販売店を列挙したように「自社の管理外で販売されている商品を買わないでほしい」というのが本音だろう。しかしながらこの「正規販売店」のいずれかの店舗が「非正規の販売店」に横流しを行っていることは間違いない。さすれば自社で供給網の管理体制を整備・強化し、転売しないような信頼できる販売先を取捨選択することがブランド維持・成長の最も近道ではないか。

現状は売れに売れており、2ケタ成長が普通のメーカーだ。しかしながら会社というのは「持続する」ということが課題の1つである。そのため、自社のブランドを販売しつつ「育てる」ことが大切なこととなってくるが現状を鑑みるとブランドを育てるというよりも、築いてきたブランドを切り崩し、「消費する」と言った方が適切な状況なのではなかろうか。そうすればいずれは下降曲線を辿ってしまうというのは歴史が証明してきたこと。もっと広い目で見れば同社が成長に大きく貢献した「純米大吟醸」という価値の地盤沈下にも繋がりかねない。広告を出して消費者に呼びかけるのも大切かもしれないが、更に大切なことがあるのではないかと思わされてしまった、そんな一枚の広告であった。

〈酒類飲料日報 2018年1月16日付より〉