日本初“糖質ゼロ”のビール、キリン「一番搾り 糖質ゼロ」発売へ、潜在的な健康志向獲得へ

キリンビール「一番搾り 糖質ゼロ」
〈ブランドの第2の柱に育成、来年はブランド販売量の3分の1目指す〉
キリンビールは、「一番搾り」ブランドから「一番搾り 糖質ゼロ」を10月6日に発売する。国内で初めて、ビールカテゴリーで糖質ゼロを実現した。350ml缶・500ml缶、アルコール4%。2020年販売目標は約120万ケースで、ブランド計では新商品を含めて前年比約1割増の1,670万ケース、10~12月は約4割増を見込む。

布施孝之社長は「先行商談では反応が良く“こういうのを待っていた”とのお声も頂き、初動は計画を上回る手応えだ。コロナ状況下だが、こんなときこそ、自宅でキリンブランドを楽しんで頂きたい。改めて社会的使命を再認識している。その中心が一番搾りであり、今回の糖質ゼロだ。来年以降も投資を継続して、ブランドの第2の柱にしていく。来年はブランド販売量の3分の1を獲得したい」と語った。

ターゲットは、機能系ユーザーに留まることなく、ビールユーザー全般。「潜在的に糖質カットのニーズは高い」とみる。「味には自信があるので、いかに手にとって体験してもらうかが勝負」として、TVCMやデジタルから店頭までのコミュニケーションを徹底化する。小売店は新ジャンルの販売が増えているが、懸念である単価アップへの課題解決にもつなげる。また、過去に糖質オフの「ラガーブルーラベル」もあったが、コロナ下での現段階の糖質オフ・ゼロのニーズは新たな段階にあるとの認識を示した。業務用は現時点では未定。

8月27日に新商品発表会を開催し、布施社長、山形光晴常務執行役員マーケティング部長、キリンホールディングス未来飲料研究所・廣政あい子氏が登壇した。

布施孝之社長と山形光晴常務執行役員マーケティング部長/キリンビール新商品発表会

布施孝之社長と山形光晴常務執行役員マーケティング部長/キリンビール新商品発表会

布施社長はまず、この3年間を振り返って「キリンビールが描く未来は“おいしさ”で“よろこび”を広げ、ビール類市場を魅力的なものにすること。その中軸ブランドがフラッグシップの“一番搾り”だ。17年から変革して、“絞りの効いたマーケティング”を実践してきた。
▽それまで分散投資してきたブランドの絞り込み
▽お客様基軸での判断
▽ブランド育成の強化
――の3点だ。その結果、一番搾りは、2017年から缶容器が3年連続で前年を超え、1~7月はコロナ禍でも、ビール缶市場を96%とみるなか、98%と上回っている。社内で私と山形を中心に、3年間、繰り返し浸透し続けてきた成果が出ており、社員が“これが正しい戦略なんだ”と確信している」と述べた。
 
今後予想される環境変化を「コロナが起こす変化に、酒税改正が起こす変化が加わる。特に注目される点が前者が健康志向、後者がビールの再成長ということだ。これらを逆にチャンスとして捉えていく」とした。
 
〈「新・糖質カット製法」を開発〉
山形部長は開発の背景として「一番搾りのマーケティングは、“おいしさを直感的に伝えるコミュニケーション”“おいしさを軸にトライアルを促す店頭”を徹底している。ビールに対するお客様の期待はまず“おいしさ”だが、ビール飲用量が減る理由は、健康に関する項目が多くを占める。外出自粛中に体重が増えることの不安は51%が“増えた”と回答している。ビール類市場で糖質オフ・ゼロの市場構成比はゼロが64%、オフが36%となっており、ビールで糖質ゼロはポテンシャルがある。健康を意識するビール類購入者(約3,500万人)と、糖質オフ・ゼロ系ビール類購入者(約1,400万人)との差は約2,100万人ある」と述べた。
 
廣政氏は商品設計について「ビールは麦芽使用比率が高く、糖質ゼロにすることは難しい。糖質はおいしさとアルコールをつくり出す重要要素でもある。開発期間は5年にわたり、試験醸造は普通は数十回のところ、350回以上に及んだ。“おいしいビールで糖質ゼロ”を実現した、キリン独自の2つの製法は、ひとつは新・糖質カット製法、次に一番搾り製法だ。新・糖質カット製法とは、
▽糖質低減に適した麦芽を選定
▽仕込み工程で、麦芽由来のでんぷんを効率よく最大限分解
▽通常ビールに比べ、元気な酵母を使用し糖質(でんぷん)を食べきる
―――という製法だ。一番搾り製法は、すでに明らかだが麦汁ろ過工程で、最初に流れ出る一番搾り麦汁を使う製法で、雑味のない澄んだ旨味を引き出す」と紹介した。
 
〈酒類飲料日報2020年8月28日付〉