20代、30代の男女がようやく日本酒の魅力を理解することが多くなってきた。グルメや料理雑誌では毎月のように純米吟醸酒が特集される。そのムーブメントの裏側で間違いなくフロントランナーと断言できるのが、生駒龍史氏だ。

Clearが販売する日本酒は、720ml瓶で2万5000円(税抜)という破格の値段だが、これが高級料理店やブランドサイトで飛ぶように売れているのだ。「飲む量が半分になっても、2倍の値段でも認められる価値を出すことができれば市場規模は大きくなる。そういうファンを増やすべきだ」と生駒氏は主張する。

生駒氏のミッションは明確だ。「日本酒の可能性に挑戦し、未知の市場を切り拓く」。日本酒で誰も取り組んでこなかった「ラグジュアリーマーケット」を創造し、日本酒産業全体の規模を押し上げる。

「年々縮小する市場規模では、いかんともしがたい。世界中で飲まれているワインは、圧倒的な市場規模がある。つまり品種・タイプといった横軸だけではなく、低価格から高価格までといった縦軸もある。だから、ワインの最大の魅力である“多様性"を訴えることができる。枠が小さい中で、多様性といっても全く説得力を持たない。規模を広げることで、多様性も活きてくる。」(生駒氏)。

2018年7月に、酒類小売免許を持つ川勇商店を買収し、日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」をスタートした。ブランドパーパスに「心を満たし、人生を彩る。」を掲げた日本酒ブランドで、世界中のラグジュアリーシーンを開拓すべく展開中だ。「100%、身体と心を満たし、ひいては社会全体を満たしていくという意味を込めた」そうだ。

「これまで“ラグジュアリー"を掲げた日本酒ブランドはなかった。海外でこれほど日本酒が注目され、飲まれ始めているのに、日本の業界だけが、実はそのポテンシャルを活かしきれず相変わらずの安い価格を付けている。エルメスやドン・ペリニヨンのような存在の日本酒があってもいい」と主張する。

2021年2月時点で5商品を展開している。精米歩合18%でエレガントに美しく伸びる余韻の「百光/BYAKKO」(720ml、2万5000円税抜)、日本酒の常識を覆す濃密な味わいのデザート酒の「天彩/AMAIRO」(500ml、1万4000円同)などだ。

「百光」は今年500本を限定販売したが、約2万1000人の応募があった。実に40人に1人しか当たらない確率だ。転売を避け、本当に欲しい方に届けるために、抽選制にしているという。

生駒氏の自信は、確かな経験の蓄積に裏打ちされている。酒販店の大学の同級生から日本酒を勧められ、その美味しさに目覚めてから、日本酒の事業歴はすでに10年以上になる。その間、全国の酒蔵を訪ね歩き、3000銘柄以上のテイスティングをこなすことで、日本酒の味の幅を身体で理解した。

また、蔵元の特徴を理解し、悩みを聞き続けてきた。その経験がベースになっているからこそ、「SAKE HUNDREDに参画したい、世界で認められる日本酒を造りたい」という蔵元が続出する信頼を勝ち得たのだ。

昨年12月からは、ドバイ・シンガポール・海外輸出をスタートした。コロナがなければもっと早く展開していたという。本年は日本酒最大の輸出国である米国市場でニューヨーク・サンフランシスコといった主要都市に、また同2位で日本酒消費が急成長している中国市場にも参入する。

2020年の年商21億円は4年後に100億円(国内70億円、海外30億円)、2040年には2000億円という事業計画を立てている。「絶対に日本酒を世界に羽ばたかせる」と、その目は覚悟と確信に満ちている。


〈Clear・生駒龍史氏プロフィール〉
(いこま・りゅうじ)1986年2月生まれ、東京都出身。2013年2月に株式会社Clearを設立。日本酒のサブスクリプションコマース事業、2014年には日本酒メディア「SAKETIMES」をローンチ。2018年7月に日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」をスタート。これまでベンチャーキャピタルなどから3.5億円の資金調達を実施、上場を視野に入れる。2019年から国税庁主催「日本酒のグローバルなブランド戦略に関する検討会」委員を務める。

〈酒類飲料日報2021年2月18日付〉