サントリーワインインターナショナル「“ものづくり”ベースに、新提案で“日本ならではのワイン文化創造”」/吉雄敬子社長インタビュー

サントリーワインインターナショナル・吉雄敬子社長
サントリーワインインターナショナルは1月21日、今年の事業方針を発表した。ワインにおける新たなニーズをとらえ、缶ワインによる新たな需要創造や日本ワインの刷新で、「日本ならではのワイン文化を創る活動」を強化する。今月、就任から2年目を迎えた吉雄敬子社長に話を聞いた。 

――就任からの1年を振り返って、できたこと、できなかったことは? 

「ものづくり」をベースに、造り手と連携した事業の推進に取り組んできた。 

たとえば国産カジュアルワインについても、企画・開発者の熱い思いや優れた技術があることを正しく理解していただくことで、「国産ワインの地位向上」を目指したい。糖質オフなどの機能性商品や、リサイクルできるペット容器など、国産カジュアルならではの価値もある。 

とはいえ、ワインの世界は深くて広く、毎月ワイナリーに通っていても、中長期的に見なくてはわからないことも多い。「シャトー ラグランジュ」をはじめ、海外に所有するワイナリーとのシナジーを活かした「ものづくり」の連携を進めているが、コロナ禍で思うように動けなかったのが心残りだ。 

――今年の事業方針に「日本ならではのワイン文化を創る活動を強化したい」とありました。 

海外の真似をするのではなく、日本の生活スタイルや、日本の食事にフィットするワイン文化を創るということ。当社の祖業でもある日本ワインの価値も含め、「日本ならではのワイン文化を創ること」を方針として社内で共有し、商品化や事業を進めたい。 

ウイスキーでは、日本のお客様に親しんでいただくために水割りやハイボールの提案を進め、日本ならではのウイスキー文化を作り上げた実績がある。当社のワイン事業の原点も、日本人の味覚にあわせて開発した「赤玉」だ。 

今回、「缶ワイン」や「ワインソーダ」を提案するのも、ビールやRTDで缶のお酒を飲み慣れていらっしゃる方々に、ワインの魅力を伝えたいから。今後も日本人の味覚や食文化にあうワインを提案することで、本格的なワインへの道を創り、ワインファンを増やしたい。 

〈日本ワインへも投資、プレミアムワインの価値やサステイナブル伝える〉
――家庭内ワイン消費の今後の見通しは? 

巣ごもり需要の中でワイン消費が増えたのは、ワインに興味がある方、飲んでみたい方がたくさんいらっしゃるということ。まだまだ伸ばす余地はあるが、今後、ワイン消費を増やしていけるかどうかはメーカーの提案次第。ここを緩めると、ほかの酒類に流出してしまう。新しいこと、面白いことが起きているカテゴリーだと思っていただけるよう、提案を続けていく。 

――「ワインサワー」で「入口づくり」の手応えを感じたと思うが、カジュアルワインからプレミアムワインへの道筋を作る取り組みは? 

プレミアムワインを贈答品として買う方は、まだ多い。まずは日常の食卓でワインを楽しんでいただけるユーザーを増やすこと。一度に飲むワインの量は「グラス2杯まで」という方が6割いらっしゃることも踏まえ、今年は小容量や缶ワインの拡充に力を入れる。 

好調だった「ワインサワー」を、「ワインソーダ」へ刷新したのも、よりワインを感じていただける味わいを楽しんでいただきたいからだ。 

ウイスキーがハイボール缶の発売で家庭に定着したように、缶でワインになじんでいただけたら、その延長線上でプレミアムワインも飲んでもらえるのではないか。 

もちろんプレミアムワインから、わかりやすいストーリーを伝えることも必要だ。造り手の顔や声、ぶどう畑など、より親しみやすい形でプレミアムワインの価値を伝えたい。 

そこで今年は、登美の丘ワイナリーを起点とする活動を強化する。品質向上に向けての投資はもちろん、ワイナリーのビジターセンターやECサイトを刷新して接点を拡大・深化。サステイナブルやSDGsへの意識が高まる中、ぶどう畑での当社の取り組みを通して、リアリティあるサステイナブルを肌で感じていただきたい。

〈酒類飲料日報2022年1月26日付〉