「持続的な変革」「飽くなき挑戦」をモットーに/日本ハム・畑佳秀代表取締役社長インタビュー(上)

〈中期経営計画2020をしっかりやり遂げる、未来につなげる仕組み作りに〉
日本ハムの代表取締役社長に今年1月29日付で畑佳秀代表取締役副社長が就任した。本紙はこのほど、畑社長にインタビューを行い、自身がまとめた「ニッポンハムグループ中期経営計画2020」のポイント、低収益性からの脱却やヒット商品の創出への取組み、TPP11や日EU・EPAへの対応など加工事業を中心に課題と方針を聞いた。今回から3回に分けて紹介する。

――少し時間が経ちましたが就任の抱負は

「持続的な変革」を遂げていくとともに「飽くなき挑戦」をモットーにやっていきたい。ニッポンハムグループを振り返ると、創業は1942年、そこからの四半世紀(25年間)の間に、前身の徳島ハムが鳥清ハムと合併し、日本ハム(株)が誕生した。その後、1967年に東京・大阪証券取引所一部上場を行った。まさに創世記だった。次の25年は、多角化して事業領域を広げていきながら、事業規模を拡大してきた時期。1968年にブロイラーのファーム事業を始め、1972年には加工食品事業を立ち上げた。当時は焼肉のたれなどを生産した。1981年には水産事業へと事業領域を拡大してきた。また1983年には創業者大社義規氏が「総合食品企業を目指す」ことを宣言した。

その後は、充実の時代であり、1993年に「21世紀ビジョン」を発表した。21世紀の初め(2000年)に、売上高1兆5,000億円との目標を掲げた。当時の7,500億円の売上高を倍増するとの目標だった。その中で、中華名菜、アンティエ、森の薫り、その前にはシャウエッセンが発売された。業容の拡大を遂げた75年間だった。

2017年は、これまでを踏まえ、今後をどう考えるかについて中期経営計画2020を策定した。創業100年の2042年を目指して、未来につなげていく仕組み作りとしたい。

私自身は、もともと経理財務部門、その後はIT戦略部門に10年ほどおり、事業を側面から支えてきた。社長就任までの6年間、グループ経営本部長、コーポレート本部長として、全体を俯瞰してみることができる仕事をさせてもらった。中計では、パートⅣ、パートⅤ、そして今回の2020の策定の責任者だった。自分で作ったものであり、しっかりこれをやり遂げたい。

お客様と接する機会はほとんどなかったが、今年2月以降積極的に回らせていただいている。ニッポンハムグループの事業領域の広さ、あるべき姿、存在意義、そしてお客様の期待をひしひしと感じる次第だ。社内も積極的に回り、中計2020、グループのこれからのあるべき姿について議論を重ね、ディスカッションの場を設けたりしながら対話を進めている。

――「中期経営計画2020」のポイントは

いろいろな外部環境の変化がある。世界人口の増加の一方で、日本は少子高齢化、生産労働人口が減少していく。昨今、自然災害など気候の変化は、これからももっと激しくなってくる。AI、IOTなど最先端技術が導入されて、生産性そのものも上がっていくとの予測がある。またお客様、消費者の皆さんの志向も多様化しており、これらに対しスピーディーに対応していかなければならない。私たちが扱うコンシューマ商品のユーザーはファミリー層を中心に少し高齢化しているのは事実。ユーザー層は、単身世帯、夫婦2人世帯、ファミリー世帯、シニア世帯に4分割でき、さらにそこに調理派と、簡便派がある。そうした領域に分けてニーズを捉え、商品開発、販売促進活動をやっていかなければならない。それを含めテーマを「未来につなげる仕組み作り」として掲げた。

さらにその基盤である「高次元の品質No.1経営」をゆるぎなく続けていく。品質は商品だけではなく、経営そのものの品質、人財の品質を高めていかないと基盤が揺るぎかねない。ここをしっかり土台として固めた上でやっていきたい。

方針は「未来につなげる仕組み作り」だが、その原資、基盤として、〈1〉既存事業を効率化して収益性を高める、〈2〉消費者の皆さんとの対話を通じた価値の創造――が挙げられる。〈2〉では、ともすればプロダクトアウト的な発想が強かった面があるが、消費者の視線に立って展開していく。そのために今期よりライフスタイル研究室をコミュニケーション戦略本部の中に設け、生活者の実態、ニーズ(困りごと)を調査しそれを商品開発に活かしていく。具体的には、毎月ライフスタイルレポートを作り社内に発信する。例えば、サラダが注目される中で、サラダを食べる世代はどうかを調べると、主食がサラダとの答えが多いのは20~30代、最も低いのが60代だった。サラダをどうして頻繁に使うのかを20~30代に聞くと、健康志向で体にいいが第1位、逆に求められるところ、不満に思うことは、食べ応えがない、サラダだけではおいしくないだった。では、どうしているか、肉、魚、フルーツをトッピングして食べている。ここに商品開発のヒントがあるのではないか。

また、食そのものに対し健康と結び付け、何を期待するかでは、健康志向という方が8割、全く気にしない方が2割だった。では、どんな面を期待しているのか、一番高いのは健康の維持・増進、2番目が疲労回復、3番目が血液サラサラだった。どんな栄養素を求めるかは、健康維持・増進、疲労回復では最初にタンパク質、次にカルシウムやアミノ酸が挙げられた。タンパク質は、我々の事業の根幹でもあり、もっと健康面で訴求する余地、拡大する部分は十分あると思う。魚は、骨を強くするイメージ、タンパク質は筋肉強化のイメージが強い。タンパク質は疲労回復に有効なことは科学的に研究されており、それをもっと打ち出せば、グループの事業拡大に繋がる。消費者との対話を通じたライフスタイル研究室の調査をしっかり商品開発に活かせるようにしたい。

〈続き〉マーケティング推進部を設けフラットに、意思決定迅速に/日本ハム・畑佳秀代表取締役社長インタビュー(中)

〈畜産日報 2018年10月17日付より〉