〈令和元年11月の需給展望 牛肉〉季節需要でスライス品動く、増税が影響し外食は不振

畜産日報 2019年11月8日付
〈和去A5は2,800円前後、A3は2,250円前後〉
10月の牛枝肉相場は、季節的に気温低下でスライス系の引き合いが期待され、当初は小幅ながらも上昇が見込まれたが、消費税増税に関連した節約志向、10%に消費税が上がった外食の不振、首都圏をはじめ広範囲に被害をもたらした台風19号により、和牛、交雑牛の各等級で9月を下回る結果となった。高級部位の輸出の頭打ちと外食不振により、和去A5、A4の低下が目立った。また今年に入り上げ下げはあるものの、高水準で推移していた交雑牛は、今年の最安値を付けた。

11月は、さすがに季節的な需要で10月からは上昇するが、足元の需要の弱さ、外食の回復も時間がかかると見込まれ、この時期にしては小幅な上昇にとどまる見込み。昨年11月に比べると和去では50~100円安が見込まれる。このため11月の枝肉相場は、和去A5は2,800円前後、A3は2,250円前後、交雑B2は1,550円前後と見込まれる。

2019年10月の東京食肉市場の規格別の価格(生体、消費税込み)をみると、和去A5が前月比55円安の2,690円、A4は51円安の2,380円、A3は16円安の2,180円、交雑去勢B2は35円安の1,475円、乳去B2は4円高の1,044円となった。和牛各等級は、当初予想では年末に向けて上昇傾向をたどると見られていたが、逆に前月を下回り、特に外食不振の影響を受けたA5、A4の減少が目立った。また、量販店での販売不振から、ここまで堅調に推移してきた交雑種も下げた。乳用種は、スライス系の動きからわずかに上昇した。

前年比でみると、和去A5で199円安、A3が164円安とここに来て下げ幅が大きくなってきた。一方で交雑B2は、10月の下げでほぼ前年並みの水準となってきた。

11月の生産見通しは農畜産業振興機構の予測によると、成牛の出荷頭数で前年同月比4.4%減(1日当たりでは2.2%減)の10万3,300頭が見込まれる。品種別の出荷頭数は、和牛は4.3%減の4万9,100頭、交雑種は6.7%減の2万2,900頭、乳用種は2.9%減の2万9,800頭が見込まれる。和牛は前年を下回るものの、5万頭弱の出荷が見込まれる。

輸入牛肉(チルド)は同機構の予測では、10月の輸入量は3.6%減の2万2,800t、11月は7.5%減の2万3,000頭を見込む。前年の輸入量が台風21号に伴う通関遅延の反動で多かったことに加え、輸入業者の買い付け時の国内需要が低調だったため、それぞれ前年を下回る見通し。

10月の販売状況は、月初はスライス材が動き相場も上昇傾向にあったが、上位等級では消費税増税に伴う外食不振が徐々に効いてきた。もともと、和牛の上位等級は輸出需要が相場を押し上げてきた経緯があるが、現状ではこれが頭打ちとなり、上位等級のロースの荷余り感が出ており、これに外食不振が追い打ちをかけた形だ。この結果、10月の和去A5の価格は、今年最安値を付けた8月を僅かに上回る水準にとどまっている。

さらに首都圏を直撃し、被害が広範囲に及んだ台風19号により、被災地や首都圏の量販店では12日からの3連休の販売だけではなく、その後もハレのイメージのある牛肉販売に影響が残った。同時に、消費税増税に関連した節約志向も足を引っ張った形だ。一方で、日米貿易協定の正式署名で、現状の米国産バラの在庫消化が急がれるため、安価なフローズンのバラ、さらに夏場からの消費不振を受けて在庫が膨らんだチルドの消化により、安価な輸入牛肉が出回っていることで、輸入に比べ高値である国産の切り落としなどに影響した。

11月は、消費者の節約志向は根強いものの、平年並みに気温が下がってきたことで鍋需要が盛り上がり、ようやくスライス材の動きが出てくる見通し。その中で肩ロースの動きが出ている。その一方で、外食不振によりロースは上位等級から交雑まで、依然として荷余り感が続く。またモモは切り落としがやや回復したことで、10月に比べ若干動きがいい。

なお、10月後半から、一部の量販店で交雑種のランプステーキが比較的安価で販売されている。人気薄で安価なモモを使った商品だが、こうした商品が販売回復の一助になると期待される。また、焼き材中心のバラは、さすがに良くないが、来年4月からのGWに向けて冷凍する動きが目立つ。バラは比較的重量が小さく、短期的に集めることが難しい。今年のGWでは、チルドでは集めきれず、一番売れる時期に玉がなく苦労したことから、来年に向けて和牛の大衆規格や交雑種で凍結回しを行っているもの。その一方で、輸入牛肉の在庫消化が続いており、節約志向の中で輸入牛肉の販促も増える見通し。

これらを勘案すれば、季節需要で上昇し10月の相場を上回るものの、昨年のような盛り上がりは期待できず、和去では前年比で50~100円安が見込まれる。そのため相場は、和去A5で2,800円前後、同A3は2,250円前後、交雑B2で1,550円前後、乳去B2は1,080円前後とみられる。

〈畜産日報 2019年11月8日付〉