「今年のボジョレー・ヌーヴォーで、売場でワインとチーズが組んでいたのはイオンくらい。他は主にデリカテッセンと組んでいて、昔のように店先で垂れ幕を掲げ大々的に展開しているところはほぼ無かった。食べ切り惣菜が売れていることを考えれば、輸入チーズも個包装タイプの方の売れ行き好調に納得がいく」(専門商社)。

チーズの最需要期とされる11~12月、ボジョレーがその取っ掛かりともいえるイベントだが、今年は一部のネット販売を除いて相乗効果はいまひとつな結果。ワインの市場が成熟しボジョレーの関心が薄まる中、相性のよさで長年相棒だったチーズ(特に輸入テーブルチーズ)も、購買行動を後押しする方法を見つめ直す時代に来ている。

国産の家庭用チーズは、今年は5、6月に大手乳業メーカーが値上げしたことから、値上げしなかったメーカーへ需要が流れたが、この影響を差し引いても売れているのは、個包装されているベビーチーズ、ポーションタイプのクリームチーズ、切れてるカマンベールチーズ、さけるチーズなどで、輸入テーブルチーズについても、3個入りのミニカマンベールやミニブリーなどが売れ筋。つまんで食べやすい形態から、家飲みのおつまみ需要を取り込んだが、これも数年経っていることを考えると、包丁などで切ったり、残りをラップで包んだりする手間の要らない「簡便性」の方が、おつまみ需要以上に支持されているようだ。

国産品でこの動きが顕著なのがカマンベール。「ホールタイプと切れてるタイプで、希望小売価格に60円差があるにもかかわらず、切れてる方の伸び率が圧倒的に高い。チーズユーザーの購入経験率が16%、まだ買っていない人が84%と、この半年で間口はそれほど変わっていないが、奥行きはテレビで認知症予防効果が再び報道されて以降上がっている。買っている人が、より買うようになっている」(明治)。

ヘビーユーザーが個包装より割安なホールタイプやブロックタイプを選ぶという概念は、もはや過去のものになりつつあり(本場の高価格な輸入チーズ愛好者は除く)、「個食」「個包装化」が家庭用チーズに求められるトレンドのワードになりつつある。

「欧州などのチーズは、ホールや大きいカット品を削ったり切りながら食べた方が明らかに美味しいが、時代のニーズが個包装化ならやむを得ないので、年明け、一部の店舗へ欧州の熟成チーズのスティック、親指サイズ位の個包装タイプ、数個入りを導入する。欧州チーズ啓蒙の観点からは本来の順序と逆だが、個包装にすることで(輸入チーズのトライアル障壁を下げ)購入のきっかけにつながるのであれば挑戦して若い人を取り込みたい」(専門商社)。

国産の家庭用チーズにおいては、プロセスチーズが大半ということもあり、大手各社の主力品では既に個包装化が進んでいる。ただ、おつまみ用途や訴求がこれまでは多く、ワインやビールとの相性のよさで販売をこの先も大きく伸ばすのには限界があり、包装の銀紙やフィルムをむいてそのまま食べられる特性を活かしたプロモーション、1個包装当たりの栄養的価値を発信していくことが重要となる。惣菜が売れている背景には、家庭内で料理の機会が減っていることが大きく関係しており、レシピ訴求以上に個包装の簡便性にもっとスポットを当て、手軽で健康価値の高い食べ物として、消費者にアプローチすることが、購入頻度の増加につながりそうだ。

〈食品産業新聞 2018年12月17日付より〉