(一社)日本飼料用米振興協会(海老澤惠子理事長)は9日、「飼料用米普及のためのシンポジウム2018」を開催した。関係者による講演の模様を前後編でお伝えする。

〈「水田フル活用と飼料用米の定着に向けて」農林水産省政策統括官穀物課・堺田輝也課長〉
国内の水稲作付面積は、20年産で主食用米が約160万ha、飼料用米は0.1万haだったが、29年産では約137万ha、9.2万haという状況だ。主食用米の消費が減少し、作付面積も減少しているなかで、主食用米の代わりに何を作っていくかを考えた際に、国内の有用な生産装置である水田をフル活用するためには、需要と結びつけながら飼料用米を推進していく必要がある。米の生産調整を1971(昭和41)年から本格実施し、様々な生産対策を講じてきたが、近年は交付金の仕組みを見直すことで超過作付が解消され、必要な水準の米生産になってきている。

飼料用米の取組を水田農業の構造改革に活かしていくため、多収・低コスト生産は重要だ。主食用米と同じ品種、すなわち単一品種での生産は作業負担・コストが増大する一因となる。主食用米とは異なる作期の飼料用米専用品種を導入することで、労働力を有効に活用することができ、コスト低減に繋がる。現在は主食用米の中でも、中食・外食向けと一般家庭向けの米との間でミスマッチが生じており、今申し上げた多収品種の組み合わせで主食用米も低コスト生産していけるような運動を我々も進めている。中食・外食の需要にしっかり対応していかないと、結局は国内全体の需要減少がさらに加速しかねない。

飼料用米の普及には、今日のコンテストで受賞された方々が取り組まれているような、付加価値を高めた畜産物のブランド化も重要だ。まずは生産面での多収品種の導入と低コスト化を実現し、畜産物のブランド化といった成果をしっかり発信しながら、飼料用米が水田農業の中にしっかり定着するよう、農水省としても邁進していきたい。

〈「飼料用米の低コスト生産の展望について」東京農業大学・信岡誠治教授〉
2015(平成27)年に改訂された「日本再興戦略」のなかでは、米の生産コストを半減させる目標が示されている(2013年度60kg 15,229円→2025年度60kg7,615円)が、東京農業大学ではそれに先立つ2003(平成15)年から飼料用米の低コスト生産に向けた栽培試験を進めてきた。結論から言えば、生産コスト半減は難しいことではない。これまでの研究成果をかいつまんで報告する。
東京農業大学・信岡誠治教授

東京農業大学・信岡誠治教授

栽培試験を始めた2003年当時はWCS用の水稲を使っていたが、収量もコストも主食用米と変わらない惨憺たる結果だった(平均収量450~550kg前後)。2004年以降は試験結果から品種を絞り、堆肥の多量施用を行った。時には密植にしたり疎植にしたりと試行錯誤を繰り返したが、最新の2017年では「オオナリ」と「関東飼271号」に絞って通常栽培に戻した。その結果、籾米重量でオオナリが10aあたり904kg、関東飼271号で1,015kgというところまで来た。条件は10aあたりの堆肥が3t、除草剤(ジャンボ剤)を投入し、栽培密度は坪あたり73株。この前年は坪あたり53株の疎植で3本植えだったが、特段の倒伏も無く、収量はオオナリで947kg、関東飼271号で978kgというものだった。大きな収量の減少は見られないため、疎植のほうが育苗箱を削減でき、労力も省け栽培しやすいと考えている。

最新の結果から見ると、農水省が公表している28年産主食用米の全国平均収量は籾米換算で666kg。それと比較して、オオナリ904kgは36%増、関東飼271号1,015kgは52%増となっている。飼料用米の全国平均収量708kgと比較しても、オオナリ28%増、関東飼271号43%増だ。

また、10aあたりの生産コスト(物財費+労働費、以下同)は2品種ともに8万704円(5万9,079円+2万1,625円)で、主食用米の生産コスト11万1,652円(7万7,127円+3万4,525円)と比べると3万948円(37%)低下した。飼料用米の生産コスト10万3,560円(7万2,690円+3万870円)と比べても、トータルで2万2,856円(22%)低下している。こうしたコスト低減は、ひとえにオオナリ、関東飼271号といった飼料用米専用品種が多収であったことが寄与している。今後、コスト半減を実現するためには、多収品種の利用と堆肥の多投入による単収の向上が必要不可欠だ。また、労働費、農機具費、農業資材費の削減も欠かせない。繰り返しになるが、結論として、生産コストを半減することは可能だ。

〈米麦日報 2018年3月13日付より〉

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