――事業年度が6-5月ですから、創立20周年が終わり、21年目に入る時期にあたります。この機会に、今後の方針を伺いたいのですが、まず「(一社)検査技能検定協会」を設立して本格化させた各種認定事業のその後は?御社が開発したキット「異物鑑定団」を用いる「異物検査技能検定」と、主に学生を対象とした「コシヒカリ鑑定団」を用いる「DNA鑑定能力検定」の2種類があると聞いていますが。

塚脇 新たな技術の資格や、技術はあっても認知してもらえない資格、そうしたものを取りあげて、個人資格の認定につなげていくことでスタートし、「異物検査技能検定」ではセミナーを開いているわけですが、反響は結構大きいですね。案内すると、かなりの確率で関心を持っていただいて、これまで数十社のメーカーの方々に参加いただいています。

これは大手・中小といった規模とは無関係に。始める前は、特に大手の場合、社内に品質管理部門があるでしょうから、ニーズの存在を疑問視していたんですが、意外と明確にノウハウを持っていない方々が相当数いて、しかも対外的にその能力を評価してもらう仕組みが世の中にないので、「資格を取る」ことに関心を持って戴けているなと感じました。

ただ、今のやり方には工夫が必要だということも実感しています。というのも、世の中の資格試験はペーパー試験が主体なので、差別化をはかる意味でも、例えば「異物検査技能検定」では「異物鑑定団」を使う、つまり実技試験を伴っている点が特徴なのです。ところがこの方法だと、例えばネット経由で大人数に一挙に受講してもらうことはできず、どうしてもセミナーを開催する方式をとらざるを得ません。すると1回あたりのキャパシティに限界が出てしまいます。実際に今のセミナーだと、10名が限度ですが、毎回満席の状態が続いています。市場としてニーズがあるのは間違いないので、より多くの方に来ていただく工夫が必要ですね。

その一環というわけではありませんが、当社が逆に顧客企業側を訪問させていただくパターンも模索しています。実際、ある水産関係の企業が、協力会社も含めた品質管理セミナーを毎年開催していて、今年は当社にお任せ戴けるそうで、来月開催する予定です。こうした取組みを重ねていけたらと思っています。

今後は、異物だけでなく付加価値につながるような分野、例えば「味覚」や「臭気」など分野の拡大も考えています。ここまでは「個人」の資格認証のお話ですが、協会を設立する前から当社で取り組んできた企業単位の認定事業もあります。例えば当社の安心・安全確認システムを導入していただいた製品を認定する「Safety Check マーク」認証、企業の検査体制を設備・技術面から審査・認定する「DNA検査システム導入認定」などです。これらを協会に引き継いでもらっているのですが、まだ告知が不十分なせいか、協会設立以降の実績はまだありません。しかし企業単位の認定には力を入れていきたいと考えているところです。

――米の判別の話のうち、まず産地判別は?

塚脇
残念ながら縮小していますね。TPPが大筋合意した際、相当数な問合せが舞い込み、依頼につながったケースも多かったんですが、アメリカが離脱した途端、問合せも依頼も縮小してしまいました。今になってアメリカが別途FTAを言い出していますから、これがどうなるかですね。国内の産地判別は、当社としてある程度の精度を確立していますが、正直なところ何かトラブルが起きた時しか依頼が来ません。そうしたときは数多くの依頼が舞い込みますが、継続性はない。こちらも今は様子見といったところです。

――同じく米のうち品種判別は? 農産物検査法の改正あるいは廃止の論議が浮上しているようですが。

塚脇
そのせいかどうかは分かりませんが、「お米鑑定団」や「コシヒカリ鑑定団」といったキットの問合せが増えつつあるのは事実ですね。問合せの主体は流通、特に卸さんです。農検法があろうがなかろうが、自社で低コストでDNA鑑定をやりたいというニーズもあるのでしょうが、仮に農検法がなくなった場合、産地からは検査(銘柄証明)ニーズがなくなるのではないかという声が聞かれる一方、確実に品種判別ニーズが高まると考えておられる方もいて、どちらに振れるかは微妙ですね。またそうなれば、規格をめぐって関係者の間で様々な議論を呼ぶことでもあるでしょうし、今は事態を静観するしかないといったところです。

――御社は様々な分野で多方面の事業に取り組まれていますが、今後の方針は?

塚脇
一言で言うと、受託分析部門よりも、プロダクト部門を優先する、注力することが大方針です。受託分析は労働集約型のビジネスですから、大手に太刀打ちできるわけがありません。強みのある分野に注力していくのは当然のことです。プロダクト部門というのは、キットの開発・販売を指します。品種判別だけでなく、いま取り組んでいるのはアレルギーですが、場合によっては遺伝子にこだわることすらなく、様々な手法を使って新規性のあるもの・ニーズのあるものを作る。あえて言えば他社がやりたくてもできなかったものを作ることになりますから、技術的なハードルは相当高いものになりますし、「やってもできなかった」では投資がフイになるリスクもあります。しかし「開発」とはそういうものですし、既存のもので食べていくより、新しい市場を開拓していくほうが当社には向いているのではないかと思っています。

――これから開発するキットはお話いただけないでしょうから、すでに開発したキットのうち、イチオシのキットは何でしょう?

塚脇
山ほどあるんですが、そうですね、いま広く色んな人に使っていただける製品でイチオシなのが「異物鑑定団」ですね。これを切り口に様々なものに広げていく、多様な顧客層にアプローチするためのツールとしても重要視しているので、食品以外のメーカーも含めて、様々な場面でご活用いただければと思っています。

――ありがとうございました。

〈つかわき・ひろお〉1963年(昭和38年)広島生まれ。1985年(昭和60年)東海大学海洋学部卒。環境調査会社勤務などを経て1997年(平成9年)、(有)ビジョン環境研究所を起業。自ら代表取締役社長に就く。2004年(平成16年)から改組したビジョンバイオ(株)代表取締役社長。同社は現在、福岡県久留米市に本社を置き、千葉県柏市に東日本オフィスと東京R&Dセンター、京都府京都市に関西オフィスを置く。2012年(平成24年)第42回食品産業技術功労賞「地方発」部門受賞。2015年(平成27年)から(一社)検査技能検定協会代表理事。55歳。

〈米麦日報 2018年5月23日付より〉

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