〈新春インタビュー2018〉ロッテ商事代表取締役・牛膓栄一氏 創業70周年へ「ロッテノベーション」推進

今年、グループ創業70周年を迎える。ロッテのイノベーションを意味する「ロッテノベーション」を合言葉に全社一丸となって変革を進め、独自の技術力を生かした菓子や冷菓を提案し、ユーザーの心を豊かにするとともに、社会全体の課題解決を目指す。牛膓栄一代表に話を聞いた。

〈独自技術で菓子・冷菓提案〉
――最近の状況は

2017年度4月から11月までの実績は、菓子全体で前年比6%増でした。品目別ではガム1%減、チョコレート10%増、キャンデー2%増、ビスケット7%増です。ガムのブランド別の状況はキシリトール2%増、ACUO(アクオ)10%減、Fit’s(フィッツ)26%減、ブラックブラック前年並み、グリーンガム2%増で推移しました。

ガムにおいては昨年9月に発売した「歯につきにくいガム〈記憶力を維持するタイプ〉」が好調です。この商品は中高年の方の記憶を維持する機能があると報告されている「イチョウ葉抽出物」をロッテ独自の技術でおいしさと両立して商品化しました。研究・生産と営業の力を結集し、全国の店舗様で取り扱っていただいています。粒と板の2品を同時に発売しましたが、ターゲットとしていたお客様層を中心に、お陰様で強い関心とリピートをいただいています。

特に、これまでガムを噛んでいなかったお客様が、この商品の発売により新たなガムユーザーとなっているデータも取れており、この商品の需要と存在意義に確証を得ることができました。引き続き分析を行い、効果的な売り場提案を通して、より多くのお客様へアプローチしていきます。

こういった新たな機能価値を持つ新商品を提案するだけではなく、「噛むこと」自体の効能訴求や情報発信を続けることで、市場の拡大に貢献できるよう努めてまいります。

今年もキシリトールガムをはじめ、それぞれのブランドで魅力的な施策を用意しています。

――ガム以外については

チョコレートは、ガーナ11%増、トッポ6%増、コアラのマーチ11%増、アーモンド16%増、クランキー16%増、パイの実17%増の推移でした。昨年9月には9年ぶりにガーナ板タイプの新商品として「ガーナローストミルク」を発売しました。季節限定商品の好調も相まってガーナブランドがチョコの成長をけん引しています。また、昨年はシャルロッテを大きくリブランディングしました。世界観を一新し、細部まで丁寧に仕上げた専門店のような本格チョコレートとして、バレンタインや春季商戦へ向けて取り組みを強めていきます。

乳酸菌ショコラは発売から3年目を迎えました。昨年9月から「T001」という菌名を表示することで、より多くのお客様にアプローチできる形にしています。今年1月以降は、「腸内環境を整える」機能性表示食品として商品やブランド力に更なる厚みを持たせます。

キャンデーは、のど飴5%減、小梅8%増という推移です。キャンデーでは、昨年CVS・鉄道ルート先行で発売した「EAT MINT」を今年4月から全チャネルへ拡大します。この商品はガムでもタブレットでもない、噛んで味わうことができるミントという全く新しいタイプのキャンデーです。今後、力を入れて育成していきます。

ビスケットについてはチョコパイ11%増、カスタードケーキ1%増、チョココ1%増でした。チョコパイ季節商品の好調や、ハロウィン等の生活催事を強化した成果が出ています。今年はイースターでも施策の準備をしています。

〈世界視野での活動広げる〉
――今後の方針について

近年は衣食住と生活に密接に関係する分野においても絶え間なく進化が続いており、様々な面で未来技術が取り入れられています。人工知能に関するニュース等も増えており、私自身、技術の急激的な進化を肌で感じる機会が増えています。リアル店舗とオンラインの間にあった境界線が消えつつあることも、変化の代表例だと思います。それぞれの優位性・絶対性がなくなるということは、過去の経験則だけでは測れない、あらゆる変化への対応が求められるということです。

ロッテは1948年の創業時から、天然チクルを用いたガムベースへのこだわりや高性能包装機、ロッテ歌のアルバム、店頭ディスプレイ什器など商品・製造・宣伝・販売の各面において、独自の理念と行動を貫いてきました。創業の精神を受け継いだ上で、先ほど申し上げた変化に対応していくことが「ロッテノベーション」です。

「おいしいお菓子やアイスの提供を通じてお客様の心を豊かにし、社会の課題解決に貢献すること」こそ、我々の目指すべき姿と考えています。そのために、本社内に設けた「ロッテ・インサイト・センター」を活用したショッパー分析や研究をお得意先様と共同で進めていきます。

――新年の抱負を

今年4月から始まる2018年度は、ロッテ創業70周年を迎えることになります。「ロッテノベーション」を基盤とした商品開発・営業戦略を武器に全社が一丸となって歩み、成果を獲得するための努力を積み重ねていきます。

設備投資も積極的に行います。浦和に新たなチョコレート工場を建設するほかにも、従業員により安心して能力を発揮してもらうため、企業内託児所の新設や社員寮の改装等、社内環境を順次整えていきます。これら「ロッテノベーション」を推進し、企業価値の向上を常に促します。また、その先の2020年を見据え、グループシナジーを最大活用した世界視野での活動を広げます。

現在、海外事業については拠点を持つ国を中心に販売地域と規模を拡大しており、18年の海外事業は売り上げ・利益ともに前年から2ケタ成長を計画しています。特にアジアでは、タイ及び台湾(コアラのマーチ)、ベトナム(キシリトールガム)、インドネシア(チョコパイ)といった地域ごとに特定のブランドに集中してマーケティングを展開し、拡大を図ります。

〈食品産業新聞 2018年1月1日付より〉