「納豆は世界から注目集める機能性食品」、第15回「納豆健康学セミナー」/納豆連

大豆油糧日報 2019年3月22日付
全国納豆協同組合連合会(納豆連)は3月18日、第15回納豆健康学セミナーを都内で開き、東京農業大学応用生物科学部醸造科学科の舘博教授が、納豆から発見した糖尿病予防の機能性成分のジペプチドについて、筑波大学人文社会系の石塚修教授が、「納豆汁」の起源などについて講演した。

納豆連の長谷川健太郎常務理事は冒頭あいさつで、「納豆の知られざる健康効果や魅力を、第一線の研究者の力を借り、学術的に解明することで、世界中の人々の健康、そして業界に寄与できると考えている」と述べ、さらに「『納豆どきの医者知らず』と言われるように、納豆が健康に良いことは昔から知られている。最近では、アンチエイジングが期待できる成分の研究が進み、大腸がんの予防機能も科学的に解明され始めている。納豆は世界的にも注目されている機能性食品だ」とアピールした。
 
〈納豆から糖尿病予防の機能性成分を発見、熟成期間長いと機能が増強/東京農大・舘博教授〉

セミナーでは、東京農大・舘教授が始めに糖尿病について、「通常、小腸に栄養素が入るとホルモンが出て、そのホルモンが膵臓に到達すると、インスリンを分泌する指令がでる。しかし、肥満の人などは、酵素である『DPP4』活性が高くなり、インスリンを出にくくしてしまい、2型糖尿病になってしまう可能性がある」と説明した。

その上で、DPP4阻害物質は、食品からの検出報告もあり、ゴーダチーズ、米たん白質の酵素分解物など、食品由来ペプチドだとした。そして、大豆が原料の納豆、しょうゆ、みそにもペプチドを含有するという仮説を立て研究を行ったところ、濃口しょうゆでは、DPP4阻害活性があったものの、食塩の影響も大きいとの見解を示した。しかし、「モノによってばらつきはあるが、DPP4阻害活性は見られた。特に、含有たん白質量が多い大豆ほど、DPP4阻害活性が高い値を示している」と述べた。

塩分を含まない納豆は、市販食品としては、DPP4阻害活性が比較的高いことが判明した。また、納豆の中のDPP4阻害物質は、ジペプチドであるリジンロイシン(Lys-Leu)とロイシンアルギニン(Leu-Arg)だと同定し、さらに消化耐性をもつことから、経口投与も有効だとした。加えて、複数社の商品を比較したところ、粒径、菌株の違いによる有意差はそれほどなかったが、熟成期間が長いほど、DPP4阻害活性が増強することが判明したとする。最後に舘教授は、「おいしさなど、脳への刺激はとても重要。これらの機能を持ちつつ、おいしく食べられることが一番だ」とし、おいしさとの両立の重要性を話した。

〈長寿を祈る納豆食文化、正月に納豆餅を食べる風習など紹介/筑波大・石塚修教授〉
続いて、筑波大・石塚教授が「長寿を祈った食文化としての納豆汁」と題し、講演を行った。それによれば、納豆とご飯の組み合わせは、比較的新しい食べ方で、米を満足に食べることができなかった時代は、納豆ご飯を食べられることは幸せなことだとした。

また、正月など正式な場で食べる「ハレ」の食と、日常食の「ケ」の食について触れ、納豆は価格が安く、毎日食卓にのぼることから「ケ」の食と思われがちだが、京都・京北町では正月に、納豆を餅で包んだ「納豆餅」が食べられていることを紹介した。

「納豆餅」の原型は雑煮だとし、雑煮については、関東風や関西風、愛媛県の山間部では、餅を入れない雑煮などさまざまだが、根菜類や肉といった体が温まる食材を入れ、体を保養する食品だとした。その上で、現在のように米がない時代は、納豆汁が1800年頃まで食べられていたと紹介した。納豆をすり潰して汁にするもので、雑煮と同様に、体を温めるための貴重な食品だったのでないかとの見解を示した。

〈大豆油糧日報 2019年3月22日付〉