食用油市場が好調 オリーブ油・アマニ油など多様な油種がけん引、「調味料化」にも注目

左から「BOSCO プレミアム EVオリーブオイル」(日清オイリオグループ)、「から揚げの日の油」(Jオイルミルズ)、「かけ旨 ごま油」(竹本油脂)
〈18年度の家庭用油市場は前年度比7~8%増、1400億円を大きく突破へ 業務用油も堅調〉
食用油市場が好調だ。とりわけ2018年度の家庭用油市場は、食用油各社の販促施策が奏功したことや、植物油への健康評価のさらなる高まりなどにより、オリーブ油やアマニ油、えごま油、米油といった多様な油種がけん引する形で、金額規模で前年度比7~8%増と大幅に拡大し、1400億円を大きく突破する見通しとなっている。

業務用油市場も、日本油脂検査協会まとめの前年度の食用植物油JAS格付数量によれば、同4.7%増と伸ばしている。外食・中食市場で引き続き、から揚げやフライ・トンカツなど揚げ物需要が堅調なことに加えて、人手不足を背景とした省力化や作業効率化など現場ニーズに応えられる、加熱による劣化を抑える機能性フライ油を始め、炊飯油や炒め油・離型油、風味油・調味油といった付加価値商品の引き合いも強い。

食用油各社では前年度の成果にかなりの手応えを感じており、今年度上期は物流費や人件費、包装資材コストの上昇や油脂コストの上昇基調を理由に、5~6月にかけてキロ20円、業務用16.5kg斗缶で300円以上の価格改定を実施するほか、同様の施策を継続する方針を掲げている。

〈オリーブ油が大幅伸長、キャノーラ油を抜いてカテゴリートップへ〉
製油メーカー調べの、前年度の家庭用油市場におけるカテゴリー別の動向(金額規模)によれば、キャノーラ油は各社が販売量より価格維持を優先した販売施策を徹底した結果、3~5%程度縮小する見通しにある。一方で、オリーブ油はエキストラバージン中心に15%以上の大幅な伸びを示しており、初めて400億円台を突破することが確実視されているほか、キャノーラ油を抜いて同市場でカテゴリートップに立つ可能性が高い。

オリーブ油は長く健康性が訴求ポイントだったが、日本人の好むマイルドな風味の商品が近年充実していることや、各社がテレビCMもからめて、生食用途を多面的に訴求していることが奏功し、再加速している。

〈健康志向オイルが市場けん引、アマニ油は60%前後の大幅伸長〉
そして何よりも前年度のけん引役となったのが、アマニ油・えごま油・米油といった健康志向オイルのカテゴリーで、テレビの健康情報番組などで再三にわたり紹介されたことや、数年前のブームから徐々に定着化する中でヘビーユーザー層も拡大し、25%以上の急拡大をみせている。とりわけ大きな伸びを示しているのがアマニ油で、60%前後の拡大をみせ、一気に100億円台を射程圏に捉えているようだ。

また、健康情報番組で最も露出回数が多かったとされるえごま油、そして値ごろ感のあるプレミアムオイルという評価と、ヘビーユーザーの安定した需要を背景に伸びている米油は、共に60億円台に乗せるとみられている。

野菜の和え物など作り置き総菜の人気化に伴い、脚光を浴びているごま油は、さすがに近年の急拡大の反動か、1~2%台の伸びにとどまる見通しだが、それでも300億円に迫る市場規模を維持している。

さらに同市場では、業務用油市場のノウハウを生かした調味油やメニュー専用油が人気化の兆しをみせており、オリーブ油、ごま油も含めた食用油の「調味料化」の流れは、内外の注目を集めそうだ。

業務用油市場では、汎用油や付加価値商品の需要が堅調な一方で、家庭用油市場では数年にわたり市場が拡大しているオリーブ油、ごま油の勢いが、ほとんど波及していないことは、一つの課題となっている。また、インバウンド需要の拡大に伴い、食ニーズの多様化への対応も課題となっているが、裏を返せば、同市場ではまだまだ取り組みの余地があるということであり、食用油の果たす役割は、今後さらに拡大していくと予想される。