乳化剤フリーのにがり「JSにがり」や大豆クリームなど新商品を開発、泰喜物産が実験専用のデモ工場を立ち上げ

泰喜物産・金井健三社長
泰喜物産(東京都足立区)は豆腐づくりに必要な食品添加物、資材、用具などを販売する専門商社として、1969年に設立した。

1998年に販売開始した花王の凝固剤「マグネスファイン」は、当該製品分野でナンバーワンのシェアを獲得し、主力商品へと成長した。花王で同商品の開発に携わった金井健三社長は早期退職して泰喜物産に入社。社長に就任すると、07年に埼玉県八潮市に試作実験専用のデモ工場を立ち上げ、商品の研究や開発実験が可能な体制を整えた。そこから乳化剤フリーの乳化にがり「JSにがり」や大豆クリームなどの新商品が誕生している。

社長に就任後、「実験設備が必要と考えるとともに、お客に合わせた商品づくりを模索した。現在それらが商品として完成し、売り上げに貢献するようになってきた」と手応えを語る。同社が開発した「JSにがり」は、植物油と天然ワックスを組み合わせることで、分散性と遅効性を合わせた凝固剤製剤だ。粗製海水塩化マグネシウム製剤「JSにがり沖縄」と、塩化マグネシウム製剤「JSにがりN70」の2つをラインアップ。豆腐の風味に影響する素材がないことから、大豆が持つうま味や香りを自然のままに引き出すのが特徴である。

にがりを油中に分散してあるため、強せん断ミキサーは必要ない。同社が新開発した低せん断の豆腐用凝固機「サイレントコア」との組み合わせで、凝固時にダメージを与えず、ち密な凝固を実現する。それにより、味抜けがなく、美味しさを持続することができる。

昨年12月には豆乳と「JSにがり」を自動供給する「サイレントコアオート」が、今年2月には大ロット生産用の「NSミキサー」が完成し、大量生産にも対応できるようになった。金井社長は、「JapanStandardになろうと、『JSにがり』という大それたネーミングをつけて展開している」と自信をのぞかせる。

また、数年前からは大豆と植物性油脂を主原料とした植物性クリーム「大豆クリーム」を販売している。植物性の需要やビーガン向けの需要も期待できる素材だが、特に要望があったわけではなく、金井社長の興味だけで開発したのだという。

「青臭みをなくした大豆の粉を作る技術を持っている会社があり、その粉と出会ったことがきっかけで、これならばおいしいものができると思い開発した」。チーズケーキやロールケーキ、茶わん蒸しからグラタンまで、さまざまなものに活用できる可能性を秘めている。

〈開発品を販売すると同時に、世界レベルで豆腐業界の役に立つ〉
今後については、「開発品を販売していくと同時に海外にも目も向けないといけない」。海外では木綿豆腐が大半だが、「JSにがり」で作った絹豆腐は海外の人が食べてもおいしいと評判で、欧州と中国の豆腐メーカーに採用が決まっていることから、「絹豆腐も徐々に広がっていくと考えている」と期待を寄せる。

その上で、「豆腐業界に役に立つことを世界レベルで行い、凝固剤のことなら、泰喜物産に聞けと言われるレベルにしたい」と意気込みを述べる。

【泰喜物産・金井健三社長プロフィル】かない・けんぞう。1949年9月25日群馬県生まれ、2000年12月花王退職、01年12月泰喜物産入社、05年10月代表取締役社長。趣味は「運動のためのテニスとウォーキングのためのゴルフ」というようにスポーツマンである。仕事についての心構えについて聞くと、「新しいことへチャレンジし、出来るまでやり続けること、何事も責任感を持って行動すること」。画期的な新製品を生み出してきた原動力となっている。