「世界と日本のプロテイントレンド最新状況」「植物由来の代替肉と細胞培養肉の現状と将来展望」2講演を実施/日本植物蛋白食品協会セミナー

〈トレンドはアスリート向け市場から〉
日本植物蛋白食品協会は2月3日、技術セミナーをオンラインと都内で開催し、「世界と日本のプロテイントレンド最新状況」「植物由来の代替肉と細胞培養肉の現状と将来展望」の2講演を実施した。

冒頭あいさつで、中村靖会長(不二製油たん白素材開発室長)は、「2020年より続くコロナ問題は人々の生活に変化をもたらしている。特に外食産業では大きな経済ダメージが現在も続いている。このような状況下でも植物性たん白素材は品質向上の背景に人々の健康意識の高まりや地球問題への関心の高まりを受け、市場としては拡大傾向を続けている。マスメディアには代替肉として、大豆ミートというキーワードが大きく取り上げられた。まさしく国内における大豆ミート元年に値する年だった。本年もプラントベースをキーワードにした商品の開発がますます加速すると思われる。一方で、人口増加による将来的なたん白クライシスが叫ばれる中、スタートアップ企業を中心とした細胞培養による代替肉や昆虫由来のたん白素材の開発が話題に上がった年だった。技術セミナーでは、世界を含めた最新のトレンド情報について講演いただく。将来のたん白市場の予測や今後の商品開発へのヒントなど有益なお話が伺えると思う」と述べた。

InnovaMarketInsightsの田中良介氏は、「世界と日本のプロテイントレンド最新状況」について講演した。成長を続ける世界のプロテイン市場でその製品数は、過去5年間で2倍近くに伸長しているとし、この先も伸びていく市場であることを指摘した。日本でもプロテイン食品が急増しているとし、以前はアスリート向けの製品が多かったが、最近は健康志向の高まりから一般向けの商品も増加してきており、それらが市場を押し上げていると説明した。

「どの世代がプロテインに意識を持っているか」を調べたアンケート調査では、20代、30代のミレニアル世代だという。世界の3分の1を占めている世代で、今後の未来を作っていく世代でもあり無視できないと述べた。ミレニアル世代がどう考えているかが今後重要となってくると断言した。

また、田中氏は「スポーツニュートリションを押さえていてほしい。アスリートは栄養成分やクオリティ、バラエティーなどにとてもこだわるので、トレンドはスポーツニュートリションから生まれる」と強調した。

さらに、プロテイン×αによる差別化を提唱した。プロテイン×腸内環境、プロテイン×睡眠促進など、プロテインだけを多く含有しているだけでは差別化できないとし、別のトレンドと掛け合わせることで、新たな切り口からの製品開発を促した。

大豆プロテインに関しては、規模は大きいが世界的にみてダウントレンドに入ってきているとする。世界ではソイフリーが徐々に増えてきているという。その理由は、大豆はアレルゲンであり、遺伝子組換えの可能性もあり、森林伐採につながっているケースもあり、家畜飼料としてのイメージがあり、大豆プロテインを避ける人が存在することから、今後はこれらの課題を一つひとつ解決していく必要があるとした。

〈世界の代替肉市場は30年に約8倍、細胞培養肉の利点は動物保護、環境保全など〉
シードプランニングの長野光氏は「植物由来の代替肉と細胞培養肉の現状と将来展望」について講演した。世界の植物由来の代替肉市場は30年までにおよそ8倍に成長するとし、日本では2.2倍の780億円を予測しているとした。また、代替肉づくりには2つの方向性があり、かぎりなく天然の肉に近づけるか、天然の肉に近づけることを目標とせず、植物肉としての独自のおいしさを目指す方向性があるとした。

細胞培養肉の可能性では、肉だけではなく、あらゆる生物のあらゆるパーツを作ることができること。また利点としては、動物を殺さなくて済む、畜産をしなくて済むので環境を保全できる。また、国内製造できるので、輸入しなくて済む。安全保障の観点から重要な技術になってくるのではないかと指摘した。

さらに技術が確立してしまえば、手頃な価格で、どこでもいつでも好きなだけ作ることができるようになる時代が来るかもしれないと将来的な展望も予測した。

〈大豆油糧日報2021年2月8日付〉