キユーピー「HOBOTAMA」開発秘話、第一弾は汎用性が高いスクランブルエッグ状、139回の試作で最適な食感に

「HOBOTAMA」使用メニュー例
〈卵に関する技術や知見の集大成〉
キユーピーは6月30日に植物性の卵代替品「HOBOTAMA(ほぼたま)」を業務用で販売開始し、好評を博している。

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プラントベース(植物性)フードの第一弾となり、豆乳をベースに、味わいや風味は卵を日本一取り扱う食品メーカーとしての技術や知見を生かし、食感については139回の試作を通じ、求める半熟感へとたどり着いた。とりわけ卵アレルギーでも安心して食べられるところの評価が高く、開発陣や経営陣も社会的意義のある商品と認識したといい、家庭用の販売についても検討中だという。

開発メンバーのキユーピータマゴの開発本部新領域創造部の梶聡美氏に話を聞いた。

キユーピータマゴ開発本部新領域創造部 梶氏

キユーピータマゴ開発本部新領域創造部 梶氏

 
――開発の経緯と特に苦労した点は。
 
食の多様性や、世の中の潮流に乗るような商品を作りたいという想いがあり、「卵を使わないことに新しい価値を見出す」というコンセプトでスタートした。当社の卵加工品の技術を突き詰めれば、そのような商品を作ることができる見通しがあり、2年前から開発に着手した。139回の試作を行った中で、「卵らしさは何か」というところで悩んだ。
 
卵は加熱すると固まるが、同じような性質を持つ食品があまりなく、原料の選定にも苦労した。特に、スクランブルエッグの半熟感や食感を納得のいくレベルにするのに、かなりの工数をかけた。
 
食感については、ふわふわのものではなく、ホテルの朝食で使われているような、ヒダを作りながら調理するタイプを目指した。細かい温度などの製造条件を微調整していき、最適な製法を見つけた。
 
――豆乳をベースにした理由は。
 
他の素材も検討したが、豆乳が優れているとの考えに至った。日本人に食経験があり、添加物が少なく、味としても違和感がない。国内企業が製造技術を有しており、風味が出にくいという技術面の課題解決や供給の安定性を考慮しても、豆乳に落ち着いた。
 
試作段階では、豆乳の風味が強く出てしまうので、それを消せる味付けも検討した。社内ではバターやチーズの風味があった方がいいという意見もあり、その方向性も検討したが、どうしても洋風になってしまう。醤油に良く合う湯葉に近いものを目指し、どのようなソースでも合う主張の少ないプレーンの味に落ちついた。
 
――半熟のスクランブルエッグ状にした理由は。
 
料理としての汎用性が一番高いのがスクランブルエッグだと考えた。そのままでも食べることができ、バーガーやサンドイッチの具材にも使える。野菜と和えて炒め物のようなメニューを作ることも可能だ。メニューの種類や食べ方が一番豊富なのがスクランブルエッグ状であると考えた。
 
当初は海外の人にも食べてもらえるように、半熟感を出さないことも考えた。しかし、コロナ禍だったことや、われわれの考える卵のおいしさは半熟感で、フードサービスで培ってきた技術も半熟のおいしさを追求していたので、勝負しやすいのが半熟状だった。
 
海外では代替卵がすでに複数登場しているが、半熟状のものは珍しく、日本人においしいと言ってもらえる商品ということでも、半熟で開発を進めた。
 
――卵に関する知見はどう生かされていますか。
 
既存商品の卵不使用のマヨネーズタイプ調味料でも、どうやって卵のような風味を出すか研究していたので、風味の出し方はそちらを参考にした。これまでの経験から、おいしい卵の状態を再現する方法や、おいしそうに見える色味などの知見もあったので、これまでの集大成として、エッセンスを取り入れている。卵に限らず、さまざまな食品の加工が得意なグループ会社の協力も得た。
 
――ネーミングの決め手となったのは。
 
候補は30ほどあった。既存の卵加工品「きみぷち」のような、親しみやすく、キャッチーなネーミングに、という条件から「HOBOTAMA(ほぼたま)」に決まった。今までとは違うということを伝えたくて、初めて商品名を英語表記にした。
 
――まずは業務用でスタートされましたが、現時点での反応は。
 
卵を使わないこと、植物性という2つの軸があったが、大豆ミートを喫食している人に向けて、肉々しいメニューに彩りを添えたいというニーズに対し、「HOBOTAMA」と合わせてもらうことを狙っていた。実際には、卵を食べられない人、アレルギーのある人が身近にいる人からの反響が大きく、「このような商品を求めていた」という声が届いている。
 
〈大豆油糧日報2021年9月3日付〉