昭和産業・新妻一彦社長「ソリューション営業部で外食深掘り、プレミアム油の拡販を強化」/新年製油メーカートップインタビュー

昭和産業・新妻一彦社長
――今期を振り返って

当社にとっては、2021年は原料穀物相場の高騰が一番大きい課題だった。歴史的にも食用油の年4回の価格改定はほとんど例がない。コロナ禍で経済活動が厳しい状況の中、値上げの交渉をしなければならない辛さはあった。加えて、為替は円安で推移しており、フレートも高止まりしている。海外物流問題や原油高も重荷になった。直近では、菜種の油分低下によるコスト増も重なっている。

コロナの影響も引き続き厳しい状況にあり、全体としてみれば、2021年は原料穀物高の影響も重なり、2020年よりもさらに厳しい1年だったと感じている。

油脂食品事業に関しては、業務用油脂・プレミックス共に2020年対比でプラスとなったが、家庭用食品は2020年に増加した巣ごもり需要の反動でマイナスとなった。2019年比では業務用製品はまだ戻っていないが、家庭用食品はプラスになっている。家庭用は、反動減はあったが、新しいライフスタイルとして内食が根付いてきたと言える。

価格改定については、2021年下期に入って成果が出始めている。まだまだ原料穀物は高止まりしているので予断は許さないが、ギャップは解消されつつある。

――「中期経営計画2020-2022」の進捗について

2022年は期間3年の最終年度になる。コロナ禍と原料穀物高の影響で当初計画に対しては約2年のビハインドとなっているが、グループ一丸となって目標達成に向けて取り組みを強化していく。その中で、2021年4月に「ソリューション営業部」を立ち上げた。当社は20年以上前から「広域営業部」を設け、CVS(コンビニエンスストア)に特化したソリューション事業を展開してきた。今回、外食産業にフォーカスして立ち上げたのが「ソリューション営業部」となる。

これまで外食産業は各部門が個別に営業をしており、部門横断型の同部を立ち上げ、コロナの消費回復を見据えた取り組みを強化した。従来は、お客様との付き合いのレベルがマーチャンダイジング中心だったが、商品開発や研究開発まで深化させ、担当者レベルの付き合いを超えた会社対会社の付き合いができ始めている。粉や油、糖質などの複合型シナジーが「ソリューション営業部」と「広域営業部」で実現しており、来期以降も更に推進を図っていく。

油脂食品事業は2021年にボーソー油脂グループを子会社化した。家庭用のこめ油は100億円規模のマーケットとなっており、健康志向から2021年度も伸びている。子会社化は良いタイミングだったと感じている。市場が大きいオリーブ油や、当社の特徴であるひまわり油「オレインリッチ」に加え、伸び率が高い「こめ油」を含めたプレミアム油の拡販を強化していく。

〈大豆たん白の利用の高度化を推進、価格改定の経験が若手のスキルアップに〉
――今後の原料事情の見通しを

2021年は、油脂製品は年4度の価格改定を実施したが、引き続き原料穀物相場は高い水準で推移している。大豆は引き続き高いレベルだが、少し落ちついてきた。菜種は需給そのものがひっ迫し、油分が低いという問題もある。市場の様子を見ながら、まずは11月の価格改定の浸透を最優先させ、搾油マージンだけでなく、人件費など含めたトータルでのコストを考えると、もう一段の値上げも検討が必要だ。

菜種の調達はこれまでカナダが主体であったが、多様化の観点から豪州にもシフトしている。調達先の拡大、多様化は必要だ。

――大豆たん白の今後の取り組みは

2021年度上期も順調に伸びており、今期目標の売上高20億円は間違いなく達成できる。来期も10%強の上積みを見込んでいる。プラントベースフードの需要は拡大しており、引き続き強化する。

オープンイノベーションの推進も強化しており、加工メーカーと共同で、大豆たん白の利用の高度化を推進していく。自社製品では、家庭用の新製品として、加工食品の発売を予定している。

また、新たに発売を開始した「大豆Hi!芽」は、米飯などに使われ始めた。今後は菓子やさまざまな分野で、イソフラボンの含有率が高い同製品を提案していくため、用途開発を急いでいる。健康志向の高まりの中で、機能や素材として、大豆そのもののニーズが高まっている。当社グループとしても、プラントベースフードの開発・販売を強化していく。

――収益力の強化について

課題は油脂食品事業だ。適正価格での販売が実現できないと、収益力アップにはつながらない。その一方で、長持ちする「キャノーラNEO」、「吸油が少ない天ぷら粉」などの商品の提案を進めており、お客様の収益改善に貢献する、より付加価値のある商品の提案を進めていくことも重要だ。

2020年に発売した「半流動性油脂」は、固形油脂と液体油脂の両方の課題を解決した商品で、製粉と一体となってインストアベーカリーなどに展開している。コロナ禍でパック販売が必要なフライものに、油染みが出てしまうという悩みを解決できると好評だ。引き続き、機能性油脂の拡販を進める。

――今後の環境対応、脱プラ化の対応は

コロナ禍で、若い人を中心に価値観が変化しており、SDGsをはじめ、環境、健康、人権など社会貢献に対する関心が高まっている。おいしさや価格という商品そのものの価値だけでなく、商品の開発背景や企業姿勢も含め「その商品を作っている企業が『共感』できる会社がどうか」が重視されるようになってきたと感じている。エシカル消費が増えつつあり、当社としても対応を進めている。

――改めて新年の抱負を

コロナ禍や原料穀物高の影響により、当初の計画に対して約2年のビハインドとなっている。2022年は遅れた分を取り戻すべく、グループ一丸となって取り組んでいく。

厳しい環境ではあるが、将来に繋がる萌芽も感じている。2021年は穀物原料高の影響により、全ての事業で価格改定を実施した。コロナ禍でお客様とは直接面談ができない中でも、資料の精度を高め、オンラインを活用し、何度となく交渉することを経験した。特に若手社員がその先頭に立って頑張ってくれた。若手にとっては貴重な経験であり、営業のスキルアップにつながったと思う。今後の大きな戦力になると期待している。

2021年は人材の活用、育成をさらに強化していくために人事制度改革も行い、取り組みを評価するシステムも導入した。社員の能力開発、スキルアップも強化していく。

〈大豆油糧日報2022年1月12日付〉