――2021年を振り返って

需要面は、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が9月まで続いた影響で盛り上がりに欠けた。また、2020年の巣ごもり特需が少し剥落した年でもあった。

一方、原材料価格が高騰し、原油も高騰、為替の円安も進んだ。当社は2月と8月に油脂加工製品を、5月に大豆たん白製品の値上げを発表し、値上げを進めてきたがコストアップに追いつかない状況で、収益性では厳しい推移となった。

――各事業の特記事項は

2021年度(2022年3月期)上期の販売実績では、植物性油脂事業は菓子向けの販売が堅調だった。業務用チョコレート事業はアイスクリーム向け、製パン向けが堅調に推移した。

乳化・発酵素材事業は、2020年同様に2021年もプチ贅沢需要が継続し、生ケーキなど洋菓子向けの販売が好調だった。大豆加工素材事業では、粉末大豆たん白はプロテイン飲料向けが堅調だった。

大豆ミート市場については、17年から成長し続けており、2021年もミートレスフード、PBF(プラントベースフード)の製品が増えた。当社では、大豆ミートなどの素材である粒状大豆たん白の需要増に対応するため、阪南工場(大阪府泉佐野市)に加えて、千葉工場(千葉市美浜区)内に新工場を2020年夏に稼働、生産能力を増強した。

――2022年の見通しを

原料高騰の影響は、2021年度上期に比べて下期は厳しい。2022年度(2023年3月期)の上期は、さらに原料高騰の影響が出るだろう。付加価値製品の展開に注力し、収益向上を図る。

付加価値製品の一つとして、DHA・EPAを毎日の食事でおいしく摂れる、藻類由来の安定化DHA・EPA油脂の販売を強化している。また、PBFの開発、販売に集中的に取り組む。

2022年度は、次期中期経営計画(2022~2024年度)初年度にあたり、計画を策定中だ。PBFで社会課題解決を目指すPBFS(プラントベースフードソリューションズ)を一層推進する。

〈食の選択肢を広げるためPBFの開発に集中、油脂・大豆たん白で高齢化社会に寄与〉
――PBFの開発および販売状況は

PBFの新製品では、ぐるなびと共同で開発した、豆乳を乳酸菌と麹菌で発酵させた豆乳チーズ「ソイデリス麹(こうじ)」を12月から発売した。当社と東京工業大学、ぐるなびの3者共同研究の成果で誕生した製品だ。うま味を引き出し、チーズらしい香りとフルーティーな発酵感を実現した。USS製法で作られた豆乳クリームを配合し、まろやかな乳感と甘さがあり調和のとれた風味に仕上げている。そのまま料理やスイーツに使えるのはもちろん、パンの生地への練り込み用途など、汎用性が高い。ぐるなびサイトの飲食店のメニューに使用される予定で、外食市場での拡販を狙いたい。

販売が好調な豆乳クリームバター「ソイレブール」にも力を入れている。豆乳クリームを使用し、当社の油脂技術により開発したもの。おいしさに加えて、サステナブルな素材としての関心が高まっている。ホテルニューオータニにソイレブールメニューを提供していただいたり、世界的に活躍する人気モデルに気に入っていただいたり、広がりが出ている。

一風堂は12月4日から、国内11店舗で動物性食材を使用せずにとんこつラーメンのようなコクやうま味を再現した「プラントベース赤丸Ver.2.0」を、期間・杯数限定で販売している。このスープは一風堂とプロジェクトを組み、共同で開発したもの。前回の好評を受け、第2弾として発売されたようだ。

当社は10月に東京・有楽町で期間限定ポップアップイベント「UPGRADE in micro FOOD&IDEA MARKET」を開催し、PBFメニューを提供し、好評だった。

PBFは間違いなく伸びており、今後も集中して取り組む。PBFを展開することで、食の選択肢を広げる役割を担いたい。

――PBFの今後の展開を

植物性素材は、大豆だけでなく、アーモンド、オーツなど多様化している。さまざまな植物性素材を取り入れながらPBFを展開したい。

大豆については、もっとおいしく食べられる次世代の大豆ミートの開発に集中している。大豆ミートは一般的に、脱脂大豆をベースにつくっている。しかし、肉のおいしさは脂が重要なポイントだ。「プラントベース赤丸」のスープで実現したように、当社には植物性油脂とたん白の風味技術を組み合わせることで濃厚さを出す技術がある。こういった技術を生かし、さらにおいしく食べられる大豆ミートを提供していく。阪南工場のパイロットプラント段階にあり、2022年にテスト販売し、市場の評価を見ながら、量産化を目指す。

大豆ミートのスタートアップの勢いは目覚ましく、当社もスピードアップしていく。

――サステナブルに向けた取り組みを

不二製油はグループで、基幹原料であるパーム油、カカオのサステナブル調達などに取り組んできた。日本においては、チョコレートの原料であるサステナブルカカオを訴求し、顧客、消費者に認知してもらう活動を2022年夏からスタートする。

――その他の取り組みは。

日本は最速で高齢化社会が進んでおり、PBFで健康寿命の延伸に貢献したい。フレイル対策には、適度な運動とたん白質摂取が必要であり、大豆たん白質などを食の選択肢として提案していく。

認知症予防には、安定化DHA・EPA油脂で貢献したい。酸化による魚臭を抑えているため、パンや乳製品などの一般食品に使いやすく、採用例が増えている。

日本の高齢化社会に寄与するビジネスモデルを、高齢化が進みつつあるアジアにも広げたい。アジアには大豆を食べる食文化があり、日本でつくったビジネスモデルを横展開しやすい。

また、少子高齢化に伴う人手不足に対応する機能性製品や、付加価値製品に力を入れる。

当社は食品素材メーカーだが、SNSを含め情報発信にも力を入れる。販促、ECなどでPBFの世界観を打ち出すとともに、広報活動にも活かしたい。

〈大豆油糧日報2022年1月13日付〉