みそ業界も値上げに突入か、中小は静観し動向を注視、内食回帰・巣ごもり需要継続の見通し、小売り需要さらに高まる

味噌(写真はイメージ)
みそ業界もやむをえず製品の値上げに踏み切るメーカーが増えてきそうだ。大手みそメーカーのハナマルキが2008年3月以来の値上げに踏み切る。製品により約5~13%の出荷価格を4月1日から改定すると発表した。これに対して、最大手のマルコメの動向が気になるところだが、中小メーカーは静観しており、消費者の動向を注視していきたい構えを見せている。

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みそ出荷量(2015年~21年)

みそ出荷量(2015年~21年)

2021年度のみその出荷量は、引き続き、前年を下回っている。オミクロン株の蔓延で内食回帰、巣ごもり需要は今後も維持されていく傾向が強い。業務用みその売上比率が高いメーカーは、外食の落ち込みで厳しい状況が続くものと考えられる。まん延防止等重点措置の適用地域も拡大していく模様で、今後も業務用みその需要が上がるとは考えにくい。ただ、弁当や総菜といった加工食品向けの需要は高まる可能性もある。漬け込み用みそなど、調味料として使う業者がいれば、ある程度の需要は見込めるだろう。しかし、それも限定的で、大きな需要は見込めないと見る方が無難だ。
 
基本、国民は自宅での食事を強いられるため、家庭用みその販売は逆に売上が伸長するものと考えられる。新型コロナの感染収束が期待できない現在では、国民の生活防衛意識は高まるばかりだが、外食を控えた分、内食にお金を余計に投じる消費者も今後増えてくることが予想されることから、価格が少し高くても、消費者の胃袋を満足できる商品の方が、需要は高まると考えられる。
 
〈中堅みそメーカーの値上げは秋の棚替え時期が有力〉
つまり、小売商品にとっては追い風となっており、市販用商品の売上比率が高いメーカーにとっては、業績を伸ばしていくチャンスと言ってもいいだろう。
 
ただ、近年の原材料価格や包装資材、物流費などの高騰により、どの加工食品メーカーも収益が圧迫されており、これはみそ業界にとっても同じ状況で、特に中小みそメーカーにとっては死活問題にもなりかねない状況となっている。今回ハナマルキが値上げの先陣を切ってくれたおかげで、少しずつ、値上げを表明する中小みそメーカーが増えてくるだろう。ただ、中小みそメーカーの取り扱う商品は、高価格の商品が多いだけに、値上げをしたことで、顧客が他に移るといった危険性も秘めていることから、値上げに関しては、慎重にならざるを得ない。マルコメはみそ以外にも、「大豆のお肉」シリーズや甘酒といった大きな柱があるので、みその落ち込みをカバーできる体力は十分備えている。
 
ハナマルキでも塩こうじ関連商品が国内、海外で好調なことから、今回みその値上げを公にしたのも、余裕を持った対応とみていいだろう。小売流通の販売が強いひかり味噌に関しては、コロナ禍でも業績を伸ばし続けており、2月からは新工場が稼働する。2万tの生産能力があり、付加価値型の商品を主に生産する計画で、利益の取れる商品ラインアップの構築に力を注ぐ。値上げに関しては、一部の加工食品で実施する予定で、それ以外は値締(特売条件の引き締め)で対応していくとしている。
 
マルマンや竹屋などの中堅みそメーカーは、価格改定という手段にこだわらず、容量変更や値締などを強化することで、コスト増分を吸収していく考えだ。価格の高い商品を扱っているため、値上げによって、顧客が離れてしまう可能性があるため、慎重な判断が求められる。いずれにしても、中堅みそメーカーが値上げに動くのは、秋の棚替えの時期になるだろう。
 
〈大豆油糧日報2022年2月3日付〉