進む水産代替品の開発「ソイウニ」「まるでマグロ」「まるでサーモン」「まるでイカ」、水産資源の減少・枯渇の問題解決に

あづまフーズ「まるでサーモン」「まるでイカ」「まるでマグロ」、グリーンカルチャー「グリーンミートモデルF」使用メニュー
大豆由来の畜肉代替品である大豆ミートが注目される中、新たな動きとして、水産代替品の開発が着々と進んでいる。中国や新興国の需要拡大から、水産資源の世界的な争奪戦が行われ、乱獲による枯渇も懸念される。将来的には魚を当たり前に食べられなくなる可能性もありうる。

国内では不二製油グループ本社が大豆由来の「ソイウニ」を開発しており、身近な鮭フレークなどの水産加工品にも粒状大豆たん白が配合されているなど、水産代替品と大豆との相性は悪くない。おからを用いた代替ウナギを開発中の企業もある。

もっとも、牛・豚・鶏がメインの畜肉と比べて水産品は実に多種多様だ。大豆以外の原料を使うことで、再現性の幅はさらに広がる。こんにゃく芋を使った本物にしか見えないマグロ、サーモン、イカの代替刺身も7月から販売開始され、話題を集めそうだ。

日本国内では魚介類の消費量は減少傾向となっているが、欧米先進国では健康志向の高まりを背景に魚食ブームが広がっている。また、新興国においても、経済発展による所得向上や社会インフラの充実で、高級食材だった魚介類の消費が急速に増加している。「令和2年度水産白書」によると、2018年時点の世界の1人当たりの食用魚介類の消費量は過去半世紀で約2倍に増加し、近年においてもそのペースは衰えていない。特に中国では過去半世紀で約9倍と急増している。

水産加工大手のマルハニチロによると、世界的な需要拡大にともない、水産物市場では価格の高騰とともに激しい資源争奪戦が繰り広げられており、その結果、魚介類の乱獲、水産資源そのものの減少、枯渇が国際的に重要な問題となっているという。

たとえば、ウナギは稚魚のシラスウナギの不漁による高騰で価格が上昇しているのは周知の通りだ。カラフトシシャモは2019年、2020年と不作で、寿司ネタにも使われるマサゴが5年前の倍の価格になっているという。

〈ウナギや刺身、ツナなど多種多様、代替肉の開発企業も展開する動き〉
それを受け、水産物の販売を行うあづまフーズ(三重県三重郡)は持続可能な開発を目指し、キクラゲを用いた代替マサゴを開発した。限りなく本物に近づけることを目指し、原料を見直した上で改良中だという。おからを使ってふわふわの食感を再現した代替ウナギも開発中で、ともに2021年中の発売を予定している。

また、あづまフーズは7月から、次世代シーフード「グリーンサーフブランド」として、刺身の代替品「まるでマグロ」「まるでサーモン」「まるでイカ」の3種を自社通販サイトで発売する。代替食品の先進国である台湾企業が開発したプロトタイプに対して同社が改良を求め、食感や色味のリアルさを追求したという。主原料はこんにゃく粉で、増粘剤などを独自の配合比で混ぜて着色している。本物の刺身の柵と値段の乖離が小さい方がいいと考え、調査の結果、冷凍230gで税別900円に決定した。ゆくゆくはBtoBの販売も視野に入れる。「一過性の商売は避けたい。日本では水産代替品はほとんどなく、水産代替品のパイオニアを目指す」と意気込む。

代替肉の開発企業が水産代替品を展開する動きはほかにも見られる。フードテックベンチャーのグリーンカルチャーは、植物性たん白などを主原料とした魚肉「グリーンミートモデルF」を開発した。同商品は4月に外食向けに販売開始した植物肉「グリーンミート」の応用研究から生まれたもので、魚特有の食感と味わいを再現したという。

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発芽大豆を使った代替肉「ミラクルミート」が好評のDAIZも、魚不使用でツナさながらの風味食感を大豆とエンドウ豆で再現した植物性ツナをラインアップしている。代替肉は、ビヨンドミートやインポッシブルフーズなど欧米企業が注目を集め、海外で先行して受け入れられてきた。水産代替品も海外ではすでに広がりつつある。だが、いまや国内の大豆ミートは日本企業の商品が大半を占めていることから、水産代替品についても、高品質な商品が登場してくることが期待できる。

〈大豆油糧日報2021年7月8日付〉