【春の味噌特集】

◎アイテムの「選択と集中」進む

みその生産数量は、確実に減少傾向にある。大手みそメーカーは、辛うじて前年を上回って推移している状態だ。そのため、みそ以外の戦略商品を持たない、中小メーカーは厳しい状況が続いており、商品アイテムの選択と集中に乗り出しているところもあるようだ。東京23区の単身世帯の割合が49%に達した。2軒に1軒が単身世帯。これに最近の食事形態の変化を加味すると、ひとりで食事する人数は膨大な数にのぼる。今後は質の高い個食タイプの商品開発が求められ、その時々の気分に合わせて、みそや具材が選べるような商品が求められるだろう。

全国味噌工業協同組合連合会がまとめたみその15年の出荷量は、前年比0・9%減の40万9,011tとなり、3,849tのマイナスとなった。1月~3月は前年を上回ったが、6月~8月はオフシーズンにも関わらず、前年を上回って推移した。年間で前年を上回ったのは5回となり、下げ幅が若干緩やかになってきた感じはある。

総務省の家計調査によると、みその購入数量が前年を下回ったが、平均単価が上昇傾向にあったことから、年間の支出金額は0・6%増となった。

みそのトレンドは、相変わらず、減塩、無添加で、マルコメの「丸の内 タニタ食堂の減塩みそ」が好調さをキープ。「料亭の味 無添加減塩」「同 減塩(だし入り)」も快調な売れ行きを示している。

ハナマルキの国立循環器研究センター認定のかるしおシリーズが、健康志向の高い中高年や高齢者からの引き合いが強く、店頭への配荷も順調で、今年後半戦の販売動向に期待を寄せる。

ひかり味噌では、女子栄養大学栄養クリニック監修の減塩みそを投入、今年の新商品では、だし入りの減塩みそも追加して、減塩みそにおけるバリエーションを増やし、他社との差別化を図った。

大手3社が、独自の減塩商品を投入したことで、売場も、減塩商品が明らかに増えている。

日本はこれまで経験したことのない高齢社会に突入し、消費者も自分の健康状態に敏感になっている。世の中には、健康食にまつわる情報が溢れ、特定保健用食品や機能性表示を記した食品が大量に市場へなだれ込んでいるが、消費者は、何がどういいのか分からないという不満もあるようだ。

みその塩分に過剰に世の中が敏感になっていることも、減塩・無添加みそのブームを加速させている要因のひとつと言っていい。

時代のトレンドとして、テレビなどのマスメディアにも、取り上げられる回数が増え、美味しさを優先させた減塩みそであることが広く伝えられている。一時的なブームで終わらせることなく、リピーターを生み、新たな市場の規模拡大にも期待を寄せたいところだ。

一方、中小のみそメーカーは、依然として、厳しい状況が続いている所が多い。無添加カテゴリーは、中小メーカーの切り札として、認知されてきたが、大手の参入で、価格的にはどうしても勝てない状況となっている。現在、大手が取り組んでいる、異業種とのコラボレーションによる減塩商品の開発やPRの勢いがすごすぎて、傍観している状態。これまで信じてやってきたやり方で、価格競争に巻き込まれることなく、みその美味しさ、味で、勝負せざるを得ない状況ではないだろうか。

即席カップみそ汁の需要が急拡大

国税調査の結果によると、東京23区のひとり世帯は49%に達した。2軒に1軒がひとり暮らしとなる。

東京23区で一番ひとり世帯が多いのは、渋谷区で38%、新宿区、豊島区、中野区も35%を超える。また、結婚適齢期を過ぎた35歳以上の未婚者は36%を占めており、東京にひとり暮らしが多い大きな要因となっている。

大手みそメーカーの業績動向では、共通して、カップの即席みそ汁の売り上げが好調だとしている。高齢者と単身世帯の急増で、より簡便な商品が売れており、この傾向は間違いなく今後も拡大の一途を辿っていくだろう。

一方、夫婦と子供2人の家族を指す「標準世帯」の割合は東京23区でわずか8・5%に留まっている。みそ汁を作って食べている食卓は非常に少ないことが予想される。みそ業界では、こうした状況を踏まえて、小容量タイプのみそを販売しているが、売れ行きは今ひとつのようだ。

単身世帯の割合が高く、標準世帯であっても、共働きで、ひとりで食事するケースが増えていることを考えると、できるだけ簡便な商品が求めらることが予測できる。しかし、今後は、即席みそ汁であっても、その時々の好みに応じて、みそ汁の種類が選べる方が、ニーズは高い。そのため、徳用タイプではなく、食べきりサイズの商品で、1食または3食タイプで、高級具材を使った美味しい即席みそ汁の需要が高まってくるのではないだろうか。

急拡大する即席みそ汁の個食化に向けた、ヒット商品の登場が待たれる。