日清オイリオG、パイロット設備導入した「インキュベーションスクエア」お披露目、油の加工のほぼ全プロセスをドラム缶スケールで製造可能に

日清オイリオグループ「インキュベーションスクエア」パイロット設備の一部
日清オイリオグループ「インキュベーションスクエア」パイロット設備の一部

日清オイリオグループは6月4日、横浜磯子事業場(横浜市磯子区)内で5月から稼働を開始した研究開発施設「インキュベーションスクエア」のお披露目会を開催した。

同研究施設は、新設したA棟と、従来の研究開発機能を担っていた旧技術開発センターのB棟で構成される。佐藤将祐常務執行役員が「パイロット設備が一番の見どころ」と強調するように、油を加工するほぼ全てのプロセスをドラム缶ほどのスケールで製造可能なパイロット設備を導入したのが特徴だ。

日清オイリオグループ・佐藤将祐常務執行役員
日清オイリオグループ・佐藤将祐常務執行役員

ほかにも、揚げ物の様子を360度から観察できるガラス製のスケルトンフライヤーを設置したフライ室や、味覚センサーなどを備え五感の見える化ができる分析評価室、テストキッチンや製菓製パン実験室、大手化粧品メーカー以外では珍しいという恒温恒湿室も有している。

360度から観察できるガラス製のスケルトンフライヤー
360度から観察できるガラス製のスケルトンフライヤー

B棟のパイロットエリアは、合成、反応、蒸留、分別、精製、調合、乳化、急冷混練の8つの工程があり、油脂の精製設備や分別・エステル交換などの油脂の加工設備、マーガリンやクリームなどの加工油脂のパイロット設備などを実装している。サンプル製造から小規模生産まで対応可能だ。

研究開発では通常、ビーカー(ラボ)スケールから始め、最終的に実機(プラント)スケールまで持っていくが、その中間の設備を充実させている企業は少ないという。

ただ、ビーカースケールでうまくいった温度条件や圧力条件はプラントスケールでは全く異なってしまうことも多く、佐藤常務執行役員は「その中間的なパイロットスケールを介すことで、プラントスケールに落とし込む時により短期間で精度良く条件の設定ができることになる」と利点を述べる。

〈研究開発から小規模生産まで一気通貫、一緒に技術・商品開発していく共創の場〉

同研究施設について佐藤常務執行役員は、「研究開発から小規模生産まで一気通貫で行う場、お客さまと一緒に技術、商品を開発していく共創の場だ。この機能を最大限に発揮させていくことにより、ソリューション提供を加速し、『日清オイリオグループビジョン2030』で掲げている目指す姿を達成していきたい」と意気込みを語った。

技術開発について、「研究を重ねてデータ試験を経て技術を確立し、それを知的財産として権利化していく。一方で、BtoBの商品開発からお客さまと一緒に作り、スケールアップして小規模生産までという流れがある」と説明した。その上で、同研究施設の機能の強化ポイントとして、「実現力」、「油脂試作スケールアップ力」、「油脂製造フレキシビリティ」、「お客さまと共創する力」の4つを挙げた。

「実現力」については、「ラボスケールで行う領域では、プロトタイプの作成をお客さまと一緒に手を動かしながら設計、試作、評価を繰り返して作り上げる段階だ。その共創の場となるのが、テストキッチンや製菓製パン室で、作り上げた試作品は、五感の官能評価を味覚センサーやサクミセンサーなどを使って測定データとして捉えることができるようになっている。設計から評価まで迅速かつ効率的に進めることができる」と説明した。

「油脂試作スケールアップ」だが、ビーカーサイズとなるラボスケールでの評価が終わると、製造ラインに必要な量のサンプルを提供するステップに移る。この際、ラボスケールの対応だと、小さなスケールで何回も繰り返す必要があり、時間がかかる。一方、実機スケールの大きな製造設備だとロットが大きくなり過ぎて、ロスの発生やその他の製造スケジュールに影響を与えてしまう。「パイロット設備を導入したことで、スピーディーで適切な規模での対応が可能になった」と述べる。

「油脂試作スケールアップ力」については、「新商品や新事業を立ち上げる時、生産は少量で行う。ここにドラム缶サイズのパイロットスケールの設備が貢献する」と強調する。

「お客さまと共創する力」については、「最初の取り掛かりの部分で、お客さまとコンセプトを共有することが非常に大事だ。お客さまと一緒に作業を進めながら十分なコミュニケーションを取ることで、お互いの思いを共有して、開発における共感の醸成が可能になると考えている」と述べた。

〈大豆油糧日報2024年6月6日付〉

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