【役員に聞く】J-オイルミルズ、高付加価値品の拡販、オリーブ油シェア伸ばす、価格改定は引き続き理解求める/富澤亮常務執行役員営業統括インタビュー

富澤亮常務執行役員営業統括
富澤亮常務執行役員営業統括

――上期を振り返って

家庭用は物価高騰による節約志向の高まりや外食回帰の影響、オリーブ油の値上げによる需要減少などにより、販売量は前年をやや下回った。汎用油は、販売量は前年を上回るも、販売単価が下落したことから売上高は前年を大きく下回った。

業務用は、物価高騰による節約志向の高まりの影響はあったものの、インバウンド消費の回復・拡大により、外食を中心に市場は回復し、販売量は堅調に推移した。原料価格がやや軟調に推移する中、価値に見合った適正価格による販売に努めた。市場の回復により深刻化する人手不足の課題に対し、長く使える「SUSTEC(サステック)」シリーズや調理作業の時間や負荷を軽減する「調味油」や「調理油」など、機能性を強化した高付加価値商品の拡販に努めた。

――現在のコスト環境と10月からの価格改定について

家庭用では、オリーブ油は主原料のコスト上昇に伴い、昨年10月の価格改定に加え、5月から大幅な価格改定を行っている。需要は減少したが、金額市場は前年から拡大した。当社は重量、金額ともにシェアを伸ばし、売上高は前年を大きく上回った。

業務用では、7月末に価格改定を発表して以来、得意先に丁寧に状況を説明してきたが、原料において北米の大豆を中心に大豊作の見込みであること、発表直後に為替が大幅に円高に振れたことから、得意先への浸透は一部に留まっている。

今回の価格改定は原料相場、為替などに起因するものだけではなく、物流費やエネルギー費、資材費など、インフラコストの上昇を受けてのお願いであり、引き続き理解を求めていく。上期は少しずつ価格が下落していた斗缶価格も今夏以降は下げ止まり、加工用バラの10~12月期の価格も前期比数円アップで決着している。市場相場の底値感が醸成されてきている。

足元では再び円安に振れ出していることや、南米の降雨状況の懸念などから、原料も上昇基調にあり、まだまだ1~3月以降のコスト動向は不透明であるため、今後のコスト見通しを見極めつつ、状況をしっかりとご説明し、価格改定を進めていきたい。

〈即食業態でもコストダウンとおいしさ維持、「テクスデザインラボ」アクセス急上昇〉

――下期の重点施策を

家庭用では、環境負荷の低減や使いやすさが特長の「スマートグリーンパック」シリーズは、新製品を3品追加した。各種デジタル施策により認知獲得とトライアル促進を図っていく。

業務用では、調理油、調味油カテゴリーが大きく拡大している。中でも「JOYL PRO ごはんのための米油」と定番商品である「JOYL PRO バターフレーバーオイル」シリーズが大きく伸長している。

「JOYL PRO ごはんのための米油」は、コメの高騰と品薄を背景に、そもそもご飯をおいしく炊き上げることに加え、釜離れが良くなることによる炊飯時の廃棄ロスの軽減で7%のコスト削減を提案している。炊飯時に水を多く入れると柔らかくべちゃべちゃの炊き上がりになるところ、本製品を使用すると硬さや粒感を維持できることから、炊き増えによる8%のコストダウンが図れることなどにより、非常に注目されている。コメの値上げに伴い、卸店にも最終ユーザーへ本品をコメと同時に提案いただく取り組みを進めてもらっている。これまで炊飯油の販売先は中食が中心だったが、コスト抑制のニーズから、外食のお客様においても急速に検討が進んでいる。

また、節約とぜいたくで二極化する消費スタイルが広がる中、総菜類でもよりおいしく付加価値の高い、高品質で差別化した商品のニーズが高まっている。量販店の大量調理でも本格的な調理感を付与できる新商品の「JOYLPRO炭火焼風味オイル」などを積極的に提案しており、導入が進んでいる。

中食のみならず即食の業態でも、コストダウンとおいしさ維持の需要で採用が検討され始めており、大きな転換期だと感じている。

スターチは、競合メーカーにはない素材や油脂との組み合わせを活用した高度なアプリケーション提案により、動物性たん白質の一部代替、スターチ以外の機能性素材代替をご提案することで拡充を目指していく。

デジタル施策としては、スターチ製品による課題解決サイト「TXdeSIGNLab.(テクスデザインラボ)」を活用し、油脂と組み合わせたアプリケーション提案により潜在顧客の取り込みを目指している。アクセス数が急上昇しており、ぜひご覧になっていただきたい。スターチの提案のサイトだが、今後は油脂と組み合わせたコラボも考えている。

――下期以降の原料コストと市場環境の見通しについて

家庭用は、オリーブ油は下期以降も原料コストは高値で推移するため、需要の減退が継続する見込みだ。一方で店頭売価も高値で推移するため、金額市場は拡大する見込みだ。

業務用は、上期はインバウンド需要の大幅回復・拡大と物価上昇に伴う国内消費の不調が綱引きしている状況で、必ずしも好調とは言い辛い。外食を中心に売り上げは好調だと大きく報道されているが、メニュー価格も上昇しているため、食材を供給している各メーカーの販売量とは必ずしもリンクしていない。中食は、国内消費の不調の影響を受けて市場は少し厳しい形で推移しており、下期も上期同様の状況が続くと見ている。

〈大豆油糧日報2024年11月27日付〉

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昭和33年(1958年)1月
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