日本初の量産型充填豆腐を製造したアサヒコが充填豆腐のイメージを払拭、「クラフト豆腐プロジェクト」開始

(左から)アサヒコの齋藤工場長、池田社長、全国農業協同組合連合会の石澤麦類農産部部長

アサヒコは2月4日、「『豆腐業界改革』始動」と題して記者発表会を都内で開き、「クラフト豆腐プロジェクト」を立ち上げたことを発表した。安売りされがちな豆腐業界の復権に向けた業界改革の構想を池田未央社長が説明した。同プロジェクトでは、フラッグシップアイテムとして「職人(クラフト)豆腐」を新発売することに加え、「大山阿夫利」や「昔あげ」などの刷新も行い、「職人豆腐」ブランドを冠して発売する。生産者、メーカー、流通といったサプライチェーン全体を巻き込むプロジェクトだ。

近年の豆腐業界は、年率4~5%縮小を続けている。直近数年はわずかに上向いているものの、原料や燃料高騰に伴う値上げによるもので、販売個数は落ちているという。

元々、調理のマンネリ化や調理離れ、主要購買層のエイジング(高齢化)などを課題として抱えてきた業界であったが、さらに、値上げによる販売個数の低下や、価格転嫁ができなかった中小企業の倒産・廃業が加速するといった課題も浮上してきている。

これらに対し、値下げによって離反した顧客を呼び戻す働きかけがなされてきたが、アサヒコでは価格競争に終止符を打つべく、中~高価格帯(100円以上)の商品を購入する層に着目した。

市場では低価格帯の商品の構成比が65%と最も多いものの、購入規模は減少傾向にあり、中~高価格帯の購入は増加しているためだ。この「ポテンシャル層」を育成することで、豆腐を価格ではなく価値で選ぶような購入を促進し、伝統食の価値を取り戻す「豆腐復権」をめざす。

同社は1972年に、日本初の量産型充填豆腐を製造した会社でもある。「充填豆腐の安っぽいイメージを払拭するのもアサヒコの役割だと考えた」(池田社長)。

〈商品に職人名や産地、品種を打刻、消費者に対して原料大豆の関心につなげる〉

プロジェクトにあたり、生産部門で独自の「豆腐マイスター制度」を新たに導入した。認定された職人が管理して製造した全ての商品に職人名を打刻する。

加えて、原料大豆に対して消費者の関心を高めるために、使用する大豆の産地と品種も個々の製品に打刻する。齋藤直人行田工場工場長は、「商品によって個性が出るはず。今までは味が変わらないように作らないといけなかった。品種名など明記するのでお客様にご理解いただきたい」と話した。

使用する原料は、“里のほほえみ”、“おおすず”、“ミヤギシロメ”、“エンレイ”など、たん白質量が多い選りすぐりの国産品種を使用。豆乳濃度は通常より10%濃く、甘みも増した。

商品開発に関して、通常とは逆のプロセスを踏み、生産、R&D、マーケティングの順になったという。沖縄産海水にがりを自社で開発した(一部商品を除く)だけでなく、しぼりたての温かい豆乳を熱いまま凝固する「温凝固」という難易度が高い製法を採用した。大豆の風味やおいしさがそのまま豆腐に生かされる。

油揚げでは、「職人あげ」を新発売する。豆乳に気泡を含ませた、肉厚でありながら「業界初のふんわり手揚げ」と訴求する。低温&高温の温度差調節でカラッと揚げ、油抜き不要で生でもおいしい油揚げとなっている。

売り場づくりでは、他社の商品も含めた陳列を提案していく。サイドポップで、「豆腐好きのための本格豆腐」、「生食・食感重視の豆腐」、「料理好きのための豆腐」など用途に沿って豆腐を紹介する。

発表会では、全国農業協同組合連合会の石澤孝和麦類農産部部長と池田社長の対談も行われ、池田社長は以下のように述べた。「国産大豆は甘み、うまみが濃く、材料として優れている。ただ、おいしいだけではだめだ。原料の大豆にも興味を持ってもらわないと。大豆に関心がないことが、(価格での商品選択に)少なからず影響していると思う」。

また、石澤部長は次のように語った。「食用大豆のうち4~5割が豆腐用で、一番使われている。この取り組みは農家も喜びを感じるし、産地を謳えば消費者の関心につながり、国産大豆を知るモチベーションになる。農家が大豆を作り続けることにつながれば、大豆振興の好循環に向かう」。

〈大豆油糧日報 2月6日付〉

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