【注目の豆腐メーカー】規格外を活用した飲む豆腐開発、絹ごし豆腐発祥の田代食品

田代食品(熊本県阿蘇郡)は、創業75年の老舗豆腐メーカーで、絹ごし豆腐を発祥させたことでも知られる。ゆばをまとった「献上豆腐」をはじめ、阿蘇の伏流水で作った豆腐を九州中心に販売。豆腐メーカーの課題に収益力を挙げる。「同業のメーカーには思いつかない開発は得意」だという古藤靖憲社長。今年4月に就任後、規格外の豆腐を活用した飲む豆腐「Tofu Body(トーフボディ)」を開発した。輸出も年末にはスタートし、海外の工場設立も計画中だ。「2・5代目の中継ぎ」と謙遜する古藤社長に今後の展望を聞いた。
〈阿蘇の水が生む、他社に真似できない味づくり〉
絹ごし豆腐は1953年に田代食品が初めて開発した。「先々代が兄弟で開発し、全国の豆腐職人が作り方を習いにきた。豆腐は中国発祥だが、絹ごしは日本特有のもの」と語る。91年に本社を熊本市内から阿蘇郡に移転。以来、阿蘇の伏流水の恵みを生かして商品づくりに励んでいる。古藤社長は「豆腐は水で変わる。水に恵まれている分、他社には真似できない味になる」と強調する。
一方で、「豆腐は価格が安く、庶民の味方になっている。喜んでもらえるのはうれしいが、収益力が課題だ。スーパー向けのビジネスモデルだけでは限界がある」と話す。そこで近年、これまでにない市場や消費者のニーズに合わせた商品開発にも力を入れているという。「同業のメーカーには思いつかない開発は得意としている」と力を込める。

〈29年までに年商100億円へ、農業参入・海外工場設立構想も〉
古藤社長は税理士事務所の社員として田代食品を担当し、30歳から非常勤で総務・財務を担当する部長職を務めていた。42歳でCOOとなり、今年1月に社長に就任した。「豆腐職人ではなく、一般の食べる側の人だったので先入観や固定感もない。突拍子もないことを言える」と強みを語る。
そういった外部からの目線で生まれた商品が、規格外の豆腐を用いて開発した飲む豆腐「Tofu Body(トーフボディ)」だ。「製造工程ではひび割れ、片割れの商品が1日2tほど生じている。型崩れした豆腐から生まれた自然なプロテインとして注目されている。220gのワンパックで植物性たん白質が20g摂れる。豆乳も通常のプロテインも要冷蔵だが、常温で1年の長期保存できるのが特徴だ」とアピールする。大豆ミートが増えていることから、豆腐ミートも規格外の豆腐で開発中だという。
「2029年までに年商100億円を目指す。現在は20億円だが、従来の仕事プラス新しい分野を開拓していく」(古藤社長)。2026年からは農業にも参入し、「トーフボディ」に続く健康市場に向けた第2弾、第3弾のプロジェクトも練っている。輸出も年内に台湾と香港向けで開始し、「明確な理由がある」というベトナムとアフリカでの工場設立も構想中だ。
「私は中継ぎで2.5代目と思っている。現会長の息子の3代目がもっと優秀な社長になるようにサポートすることが課題だ」と話す。

〈大豆油糧日報 2025年8月6日付〉