【開発秘話を聞く】水産エキスのノウハウ生かし「大豆のかつお節」開発-池田糖化工業

「大豆のかつお節」
「大豆のかつお節」

池田糖化工業はプラントベースフード(PBF)向けの素材ブランド「プラントdeリッチ」から、5品目となる「大豆のかつお節」を新発売した。「本物の鰹節みたい」といった驚きの声も寄せられるなど好評で、2025年4月に発売し、すでに複数の採用が内定しているという。

さまざまな素材を試した結果、最も適していた大豆たん白を原料に選定した。従来の水産エキス開発のノウハウを生かし、鰹節様の風味も再現している。トッピングのみならず、味付け加工も可能なことから、ふりかけメーカーなどにも提案していく考えだ。同社が本社を構える福山市は削り節発祥の地だという。

「縁を感じる」と話す市場開発室の吉原ひろみ氏と、開発部門と兼務しながら、プロジェクトリーダーとしてさまざまな部署との調整役を担った鮫島博士氏に、2年半近く費やした開発までの道のりと、今後の展開について話を聞いた。

池田糖化工業は、中間素材メーカーとして、依頼を受けて製造する開発スタイルを得意としていた。市場開発室という新設部署が中心となり、2023年に自社ブランドとして「プラントdeリッチ」の展開をスタートした。既存4品をそろえる中、同社が鰹節エキスや昆布エキス、貝類エキスといった水産エキスに強みを持つ企業であること、国際的に和食文化のニーズが高まる一方、水産価格が高騰している現状を踏まえ、プラントベースの鰹節の開発を決定したという。

主に市場調査やターゲット選定を担った吉原氏は、「鰹節様の食感、見た目をつくるために、研究・開発のさまざまな部署に試行錯誤してもらい、磨き上げた上で現在の形に繋がった」と振り返る。同成形技術は特許も出願中だ。「鰹節様の風味も、動物性原料を使わずに作るのは難しかったが、研究・開発部隊に協力してもらうことで作り上げることができた」と説明する。

鮫島氏は、「開発の立場で苦労したのは、鰹節のような硬い食品をどうやって作るかだ。さまざまなことを試して現在の方法で光明が見えた。その後、テーブルレベルから現場レベルに落とし込むための設備選定にもかなり苦労した」と振り返る。

2023年12月に製品の開発に成功するまで約1年を要した。そこから1年かけて、ラボスケールを製造スケールに落とし込める製造設備を導入し、導入してから実際にうまく製造できるようになるまでさらに数カ月を費やしたという。

◆味付けなどの加工でき幅広い提案可能、削り節発祥の地で開発できたことに縁感じる

ターゲットについて吉原氏は、「ベジタリアン、ヴィーガンに向けた食をメインと考えているが、味付けなどの加工もできるため、ふりかけメーカーなどへの幅広い分野への提案も可能と考えている。

国内市場だけでなく、海外市場も視野に入れている。通常の鰹節に含まれるベンゾピレンという物質はEUでは有害物質として基準が設けられており、鰹節の輸出が規制されている。当該物質を含まない本商品にニーズがないかについても調査を進めている」と語る。すでに中食・外食系で数件の採用の内定があるといい、今後はSDGs視点での訴求ができないかも検討している。

今後の展開について吉原氏は、「福山市は削り節の発祥の地と言われている。その福山市に本社を構える当社が新しい削り節様商品を開発できたことに縁を感じている。PBFである本商品を通して、和食文化を世界の人に楽しんでもらいたい」と力を込める。

幅広い分野への提案も可能(写真は使用例)
幅広い分野への提案も可能(写真は使用例)

鮫島氏は、「当社のパーパスは『自然の恵みをより良いカタチに』だが、大豆のかつお節は、大豆という自然の恵みを鰹節様にしており、パーパスに沿った商品になっている」と強調する。

既存の「プラントdeリッチ」も好評だという。そのうち大豆臭をマスキングする「マスキングテイスト」は、例えばビタミンやミネラルなどの独特の苦みや臭いをマスキングする効果もある知見が得られ、PBF以外でも採用が増えている。代替肉に肉様の油脂感やコク・うま味を付与する「クックミートプラス」も好調だ。

〈大豆油糧日報 8月7日付〉

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