大豆たん白市場、上期の出荷・自社使用量プラスで折り返す明るい兆し

大豆(画像はイメージ:写真AC)
大豆(画像はイメージ:写真AC)

大豆たん白市場は21年までは大豆ミートをはじめとした植物性食品への注目もあり、市場は拡大していたが、ここ数年の生産量は水面下で推移し、踊り場ないしは停滞の雰囲気も漂っていた。原料高騰などを受けての数次にわたる価格改定の実施や食品全般での値上げによる消費者マインドの冷え込みなども影響しているとみられる。量目変更による供給減という側面もあった。25年上期(1~6月)の生産量はわずかに減少も、出荷・自社使用量はプラスで折り返すなど明るい兆しも見えてきた。尻上がりで盛り上がり、13日に大成功のうちに閉幕を迎えた大阪・関西万博の効果もあり、さらに拡大するインバウンドや、畜肉価格の上昇なども押し上げに繋がったと推定される。今年は、製油メーカー各社がそれぞれの強みを生かして、独自性の高い新商品を投入しているのも目立つ。

大豆たん白の生産量と出荷量
大豆たん白の生産量と出荷量

日本植物蛋白食品協会が発表した24年の大豆たん白の生産量は前年比1.5%減の4万1,873t、出荷・自社使用量も2.7%減でともに減少した。25年上期の生産量は0.5%減とわずかに水面下となったが、出荷・自社使用量は0.6%増とプラスで折り返した。

大豆たん白を供給する製油メーカー各社は原料高騰などの影響を受け、21年から23年にかけて数次の価格改定を行った。原料高騰や為替の円安、物流費やエネルギーコストなどの上昇を受け、引き続き食品全般で値上げが行われていることで、消費者の財布の紐が固くなっていることもマイナス要因となったもようだ。

生産量の8割ほどを占める粒状大豆たん白は、主に冷凍食品や加工食品メーカーに向けて出荷されており、畜肉代替素材としての需要が多い。例えばハンバーグのグラム数を減らすといった量目変更があった場合、使われる粒状大豆たん白も減ることになる。ここ数年のマイナスの一因として、そういった影響も受けていたと推察される。一方で、例えばハンバーグは4mmで挽くような粗挽きは、最近では見られなくなったという。軟骨が異物となるリスクがあり、2mmなど細かく挽く傾向がある。「細かく挽くと食感が十分に出ないため、大豆たん白が求められる」(製油メーカー)と、使用量の増加につながるケースもある。

〈たん白90%未満のインド産が前年同月2倍以上増、製油メーカーの新商品も目立つ〉

物流費や人件費などを含め、コスト増が続いている中、安価な輸入品も入ってきているという声が聞かれる。「輸入ものには苦戦している。対抗するために付加価値型の商品を提案していく」(製油メーカー)。

財務省がまとめた25年8月の貿易統計によれば、植物性たん白の輸入量のうち、たん白90%未満のものは、インド産が前年同月11.5%増の121tと急増している。1~8月累計では132.4%増の886tと2倍以上増えており、米国産(1,061t)にも迫る勢いだ。

インド産の大豆たん白の輸入が増えている背景には、大豆はすべてNon-GMO で、品質が徐々に向上していることもあるという。ただ、やはり国内製造の大豆たん白は安全・安心を訴求できる点や、食感や大豆臭の低減など細かなニーズに応えられる強みがある。

今年は新商品投入も目立つ。日清オイリオグループは価格高騰や供給不安が顕在化してきた鶏卵の代替や置き換えにも最適な、玉子加工製品に加えることでジューシーな食感を実現できる大豆粉末製剤を開発した。J-オイルミルズは今年40周年を迎える大豆たん白由来の「まめのりさん」に、海外で人気の高い抹茶で着色した新カラーを追加した。昭和産業は昨年から展開する新ブランド「SOIA SOIYA(ソイアソイヤ)」第2弾商品として、2月にプラントベースのチャーシュー「HMSP チャーシュー風醤油味」を投入。不二製油は大豆由来の食物繊維素材「ソヤセル」を9月から本格提案している。

〈大豆油糧日報2025年10月17日付〉

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