使った以上の水を自然に還すコカ・コーラシステム 水資源保全を続ける理由を田中副社長に聞く

日本コカ・コーラ 田中美代子広報・渉外&サステナビリティ推進本部副社長
日本コカ・コーラ 田中美代子広報・渉外&サステナビリティ推進本部副社長

〈新たに埼玉県飯能市で約300haの森林保全 年間貯水量は埼玉県民約732万人の1日分超〉

コカ・コーラシステム(※)は、製品に使った水量以上に相当する水を、森林保全などを通じて自然や地域社会へ還元する水源涵養活動を進めている。グローバルでは2024年、水源涵養率が157%以上となり、目標の100%を大きく上回った。日本でも具体的な数値は公表していないものの、グローバルの実績を支える高い水準にあるという。目標の100%を越えても、なぜ活動を続けるのか。

日本コカ・コーラとコカ・コーラ ボトラーズジャパンは7月28日、埼玉県飯能市と森林保全協定を結んだ。3者が連携し、コカ・コーラ ボトラーズジャパン多摩工場(東京都東久留米市)と同じ流域にある市有林約300haで、2027年から人工林の間伐やニホンジカの食害対策などに取り組む。

7月に飯能市と森林保全に関する協定を締結(左から)飯能市新井重治市長、田中副社長、コカ・コーラ ボトラーズジャパンSCM本部の小林克徳統括部長
7月に飯能市と森林保全に関する協定を締結(左から)飯能市新井重治市長、田中副社長、コカ・コーラ ボトラーズジャパンSCM本部の小林克徳統括部長

対象となる森林が1年間に蓄える水の量は約173万立方メートル。約17億3000万リットルに相当し、埼玉県民約732万人が1日に使う生活用水を上回る。

日本コカ・コーラの田中美代子広報・渉外&サステナビリティ推進本部副社長に、水源涵養活動を続ける理由と、日本で事業を行う企業としての責任を聞いた。

※コカ・コーラシステム=日本コカ・コーラと、製品の製造・販売を担うボトラー各社の総称。

〈水の問題は社会全体に関わる〉

――気候変動が進む中、水資源保全に対する考え方は、以前と比べてどう変わりましたか。

田中氏 以前は、水資源保全を環境保全やCSRの一環と考えることが多かったと思います。今は、気候変動を含む水の問題が、社会インフラ全体に大きな影響を与えるようになりました。

私たちは、水を使わせていただいている企業です。製品をつくるための水を確保できれば、それでよいわけではありません。水を使う以上、水に関わる問題を広く捉え、守っていく責任があります。

工場で使った水をきれいにして自然へ戻すことは基本です。製品の中身に使った水も、別の形で自然へ還元しなければなりません。

日本で使われる水は、主に河川や地下水から得ています。それらを健全に保つには、水が生まれ、流れていく流域全体を守る必要があります。それが水源涵養活動につながっています。

〈100%を超えても終わりではない〉

――製品に使った水量以上を、すでに自然や地域社会へ還元しています。それでも活動を続けるのはなぜですか。

田中氏 水源涵養活動は、その時に水が足りていれば終わり、というものではありません。

将来も人々が暮らし、経済活動を続けるには、水がある状態を保たなければなりません。今日の活動が未来の水につながると考えれば、途中で歩みを止めることは難しいと思います。

これからは、工場の周辺だけでなく、原材料を調達する地域の水も考える必要があります。自社の工場や原材料調達と直接関係がなくても、水リスクが高い地域であれば、何ができるかを考えていきます。

そこまで取り組むことが、これからのコカ・コーラの責任だと思います。

〈水にも「スコープ1、2、3」〉

工場における排水管理
工場における排水管理

――原材料の生産から物流まで、水の使われ方を見るということですか。

田中氏 二酸化炭素の排出量には、スコープ1、2、3という考え方があります。水も同じように考える必要があると思っています。

水に置き換えると、スコープ1は製品の中に使う水です。これは水源涵養活動を通じて自然へ還元しています。スコープ2は製造工程で使う水で、工場で適切に処理し、自然へ戻しています。

スコープ3は、原材料の生産や物流など、サプライチェーン全体で使う水です。農家の方々と連携して水の使い方を見直し、原材料を生産する地域の流域も守る。そうした活動が必要になります。

私たちも、まだ始めたばかりです。ただ、工場や製品の外にも目を向けなければならないと考えています。

(コカ・コーラシステムは、原材料の茶の生産地である静岡県御前崎市と掛川市でも水資源保全に取り組んでいる)

〈森を育て、地域ごとに水を守る〉

――森林の整備は、水を蓄えること以外にも地域の暮らしと関係するのでしょうか。

田中氏 健全な森林は雨を受け止め、水を一度に流さず、時間をかけて地下へ送る働きを持っています。土砂災害や河川の急激な増水のリスクを抑えるためにも、森林を健全な状態に保つことが大切です。

ただ、木を植えればよいという単純な話ではありません。地形や自然環境、そこで暮らす人の生活や仕事、地域が抱える課題はそれぞれ違います。

河川の上流では、森林保全が中心になります。日本には人工林が多く、放っておけば健全に育つわけではありません。木を間引く間伐など、人の手による管理が必要です。

一方、阿蘇のような地域では草原を守る方法が合っています。下流では、水田を活用したり、失われつつある湿地を復元したりする方法があります。

全国に一つの方法を当てはめるのではなく、それぞれの地域に合った方法を選び、活動を続けることが重要です。

〈「良いことをした」では足りない〉

――従来のCSRとは、どう違いますか。

田中氏 CSRの定義は企業によって違いますが、以前は社会貢献やボランティアに近い意味で受け止められることが多かったと思います。

ただ、「良いことをしているから、それでよい」では、自己満足になってしまいます。

実際に水を使っている以上、科学的な計算や根拠に基づき、自然へ還していく必要があります。そこまで取り組んで、初めて企業として責任を果たしたと言えるのではないでしょうか。

今回の飯能市との活動でも、対象となる森林がどれだけの水を蓄えられるかを試算しています。活動したという事実だけでなく、その成果を数字で確認することが重要だと考えています。

〈一社ではなく、仲間を増やす〉

20周年を迎えたコカ・コーラ「森に学ぼう」プロジェクト (コカ・コーラボトラーズジャパンが7月に山梨県白州で実施した様子)
20周年を迎えたコカ・コーラ「森に学ぼう」プロジェクト (コカ・コーラボトラーズジャパンが7月に山梨県白州で実施した様子)

――活動を発信する目的は何ですか。

田中氏 一番の目的は、仲間を増やすことです。

水資源保全は、コカ・コーラだけではできません。自治体、土地の所有者、森林組合、専門家、地域で活動する団体など、多くの方の協力が必要です。

私たちは森林保全の専門家ではありません。実際に活動する人や団体がいなければ、取り組みは進みません。情報を発信し、「一緒にやりたい」と思う人や企業を増やすことも、私たちの役割です。

――水資源保全は、企業同士が競う分野ですか。それとも協力する分野ですか。

田中氏 競合企業が入ってくることは歓迎しています。健全な競争はあってよいと思いますが、競争に勝つことが目的ではありません。

私はサステナビリティについて話す時、「NO SINGLE WINNER」と言っています。一つの企業だけが勝者になる世界ではないからです。

全員が勝つか、全員が負けるか。そのどちらかだと思います。まずは飲料業界で仲間を増やし、さらに業界を越えて広げていきたいと考えています。

〈日本に根差して事業を続ける〉

――コカ・コーラは世界的なブランドですが、日本での事業をどのように位置づけていますか。

田中氏 コカ・コーラという名前から、海外の会社、米国の会社という印象を持つ方もいます。ただ、日本のコカ・コーラシステムは、地域に密着した事業を大切にしています。

日本にはコカ・コーラシステムの工場が22カ所あります。地域の水を使い、地域で働く人が製品をつくり、地域の皆さまに届けています。

グローバル企業の知見や技術を取り入れる一方、日本で展開する製品の8割近くは、日本の市場に合わせたものです。製品の多くを国内で製造しています。

原材料を供給する農業、製品を運ぶ物流、販売する小売業ともつながっています。日本の地域に寄り添い、地域の発展にも貢献している会社であることを知っていただきたいと思います。

コカ・コーラシステムは、グローバルで製品に使った量以上の水を還元している。さらに、工場周辺に加え、原材料の生産地や水リスクを抱える地域にも活動の対象を広げている。

田中副社長は、地域ごとの自然環境や課題に合った方法を選ぶとともに、水資源保全を企業や自治体、専門家、地域の活動団体などが連携して進めることが重要だとの考えを示した。

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創刊:
昭和26年(1951年)3月1日
発行:
昭和26年(1951年)3月1日
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